FG Report Premiun 1月27日号

INDEX

所感/雑感

米国主力企業の四半期決算発表が加速するのをよそに、市場の話題をさらったのは中国で拡がり始めたコロナウイルスによる肺炎だ。一義的にはパンデミック化によって中国経済や世界経済にどれだけ負の引力が働くかということが懸念材料だが、私が注目しているのは寧ろ今後の中国の体制そのものだ。春節に伴う中国人の海外渡航により世界中にコロナウイルスが拡散することで、当初の情報隠ぺいに対する中国政府への国際世論がどう反応するかを注目したい。そして当然出国した人達が何を思って帰国するかも興味深い。

日米各株式市場の先週の終値と週間騰落率

香港のデモ、台湾の選挙、そしてコロナウイルスの蔓延

中国本土の知人に確認すると、昨年からの中国に絡む大きな動きは情報統制によって中国国内の人には殆ど知らされていない。SNSへの投稿は中国国内では削除されているし、当然中国国内のインターネットは完全にコントロールされている。ニュースは香港の民主化デモや台湾総統選挙で現職の与党・民主進歩党(民進党)の蔡英文氏(63)が再選したことの意味などは伝える筈もない。

要するに、中国の共産党一党支配による社会主義体制に反対・抵抗する動きである民主化闘争が、中国本土の外、でもお膝元で起こっていること、つまり共産党にとって都合の悪い真実は本土内へ情報伝達されるルートが隔絶されているということだ。

今回のコロナウイルスによる肺炎についても、当初12月の段階では完全に情報は隠蔽されていたが、伝染拡大がいよいよ抑えきれないと判断された先週になって、漸く国民に伝えられた。それでも春節の初日24日頃は「政府がちゃんと対応してくれるから大丈夫」と北京辺りの住民はインタビューに答えていたが、その後あっと言う間に武漢の閉鎖、そして27日からは団体旅行による海外渡航が禁止される。果たしてこうした(中央政府による情報統制による)事態を中国人民はどのように受け止めるのだろうか?

春節で出国した中国人が嫌でも目にするであろうニュース報道

中国出入国管理局のレポートによると、2019年春節期間における海外旅行人数は前年比12.48%増の631.1万人、一番の人気旅行先は日本である。27日からは団体旅行による出国は制限されるが、中国人の海外旅行の個人旅行とツアーの比率は6:4から7:3と言われている。つまり昨年で言えば、少なく見積もっても200万人近い中国人が個人旅行で出国している。彼らは27日以降の出国可能だ。更に団体旅行も26日出国分までは既に中国を離れていることになる。

出国した彼らが西側諸国に入国して当然見るのは「今何が中国本土内で起こっているのか?」というニュースであろう。多くの中国人にとって、それらは彼らの既存の認識とは違う内容の筈だ。勿論、中国語以外は通じない人も多いであろうから、全ての人が正確な情報に触れるとは言えない。しかし、逆に言えば英語や日本語を解する知的階層がそうした情報に接することになる。そして日に日に感染者数は増え、死亡者数も増加する。

人の口には戸が立てられない

彼らは何れ帰国する。帰国してから海外で見聞してきたことを黙っていられるだろうか?

NHKのニュースが羽田空港で中国人を取材していた。「マスクを外していますが大丈夫ですか?」とレポーターが問うと、「日本は安心だからマスクを取っても大丈夫」とホッとしたように語っていた。

しかし、彼らがその先向かう繁華街にあるデパートなどでは、従業員がマスクをしている筈だ。何故、従業員がマスク姿でお客様対応をするのか、その真意を問わずとも彼らにも当然分かるだろう。中国からの旅行者への“おもてなし”だと。それを帰国後「日本人ってとても神経質だったわ」などと言えるのだろうか?当然、香港や台湾のニュースも耳にしてから帰国するのだろうから。

もし彼らの口が見聞してきた真実を帰国後に語り始めたら何が起こるだろうか?ましてやその頃、まだきっとコロナウイルスの肺炎はまだ制圧出来ていないだろう。寧ろ今よりもアンコントロールかも知れない。

中国共産党一党支配の危機が来るかもしれない

武漢市の人口は1,108万人と言われている。東京都の人口は昨年1月1日時点で約1,386万人だが、ほぼこれに匹敵する都市がひとつあっと言う間に封鎖された。鉄道も、空路も、道路も全ての交通網が遮断されたのだ。それも突然の発表で。そして同様な処置が次々と拡がっている。

既に出国していた人達も沢山の「旅の思い出」と共に帰国する。常識的に考えれば、彼らは言うだろう。「北京の中央政府が伝えてきたことは事実では無かった」と。

私はベルリンの壁崩壊からソビエト連邦が崩壊し、大きな社会主義国家が民主化する歴史を見ながらファンドマネージャーを続けてきた。今のこの流れ、形はやや違うかも知れないが、私がまず閃いたのはこの歴史の流れだ。或いは「アラブの春」のような話かもしれない。もしかすると、またひとつ大きな歴史の幕が開くさまを目撃出来るのかも知れないと思う。

注目の右肩上がりのビジネス・トレンドとトピックス

今週から注目企業の決算発表が始まった。トップバッターはIBM、そして週末のとりはインテルだった。

2020 is expected to be another record year for the company.

昨年もこの時期に始まった米国企業の四半期決算発表から、米中貿易摩擦問題を気にしたあまりの悲観的ムードは行き過ぎでは無いかというトーンに市場は変わった。

今年、まだそのムードに乗るには前述のコロナウイルス肺炎の話題の方が市場の関心を集めているが、この時期はしっかりと四半期決算発表の内容を押さえておきたい。先週注目していたのは次の4社だ。

  • 1月21日 IBM(IBM)
  • 1月22日 テラダイン(TER)
  • 1月22日 テキサスインスツルメンツ(TXN)
  • 1月23日 インテル(INTC)

22日のテラダイン以外は皆さんご存知の会社であろう。テラダインとは半導体製造装置の会社で、日本で言うならアドバンテストなどと競合する後工程の半導体テスト、或いは検査機器の会社だ。この会社の決算内容からは5Gの足元の状況などが見えて来る。

IBMのコメントからはハイブリッド・クラウドやデータセンターなどの全般的な流れやAIビジネスの状況などを知ることが出来、テキサスインスツルメンツからは半導体産業の全体観を俯瞰することが出来る(最近は、やや古めかしくなってきたが・・・)

そしてインテルのコメントからはパソコンやサーバーなどのハイテク全般の流れを見極めることが出来る。何故なら、アドバンスドマイクロデバイス(AMD)がシェアを奪還して勢いが増しているとはいえ、絶対的なボリュームでは、未だインテルがCPUでは世界の巨人だからだ。

そのインテルの決算発表で一番注目したいのは

“2020 is expected to be another record year for the company.”:「 2020年は会社にとって記録的な年になると予想されています。」 By George Davis – Intel’s Executive Vice President, Chief Financial Officer

というコメント部分だ。インテルは2019年第4四半期に前年比8%増の202億ドルの収益を記録し、ガイダンスを10億ドル上回り、過去最高の業績を達成した。にもかかわらず、更に2020年は更に良くなるだろうとかなりポジティブなコメントをCEOのBob Swanと共にCFOのGeorge Davisも話していた。

ただ表現が難しいのだが、インテルが頑張ったからというよりは、大きなビジネス・トレンドの流れに自然と押し上げられているという感じは否めない。パソコンでも、サーバーでもCPUの市場シャアは最大であり、この分野が右肩上がりならば、余程のことが無い限りは収益も右肩上がりになる。

勿論、インテルも新製品開発や新技術への対応に努力をしていないとは言わない。ただ微細加工などの肝心な部分ではアドバンスドマイクロデバイス(AMD)に追い越されたギャップを中々取り戻すことは出来ず、実はまだ2世代前の技術がインテルではメインストリームのままだ。

その事実は「今年は、次世代モバイルCPU、5GベースステーションSOC、AI推論アクセラレーター、サーバー、ストレージ、ネットワーク向けの最初のディスクリートGPUとXeonなど、10㎚で9つの新しい製品リリースを計画しています。」というインテルのコメントでも検証出来る。AMDはとっくに7nmで製造しており、既にその次の5nmのローンチを睨んでいる。インテルが7nmでの製品を投入するのは2021年末だという。今年の後半に最初の10ナノメートルベースのXeonスケーラブル製品であるIce Lakeの初期生産出荷も行うというのだから、インテルの技術的なビハインドはどうにも否めない。だが市場全体は上向いているので皆押し上げられる。

来週の注目決算

1月の最終週ともなると流石に注目決算が増えて来る。正直、この四半期決算の発表を追い駆けるだけでも相当な手間暇となるが、逆に言えば、投資活動をしていて一番楽しい時でもある。何故なら、想定していた「右肩上がりのビジネス・トレンド」が正しく動いていることを確認していく作業だからだ。間違っていなければ、着実に投資収益も上がっていく。

  • 1月28日 アップル(AAPL)
  • 1月28日 アドバンスドマイクロデバイス(AMD)
  • 1月28日 ジャニパーネットワークス(JNPR)
  • 1月28日 ザイリンクス(XLNX)
  • 1月29日 マイクロソフト(MSFT)
  • 1月29日 ラムリサーチ(LRCX)
  • 1月29日 クォルボ(QRVO)
  • 1月30日 アマゾンドットコム(AMZN)

株主となってその企業と一緒に夢を見たいと思う会社10選


*上記表について:日本株、米国株からそれぞれ上限を5銘柄として絞り込み、ひと銘柄当たりの投資余力を10百万円として、株数を計算。売買手数料は証券会社によって違うので考慮していない。ビジネス・トレンドや各企業の状況により適宜入れ替える。ロスカット、益出しルール等の設定はしない。

個別の企業に関わるニュース・コメント

上記チャートを見れば一目瞭然(配当は含まれていない)だが、10銘柄を昨年のこの時期に選択して、「Buy & Hold」を約一年間続けた結果、そのパフォーマンスは概ね3チームに分かれたことが見て取れる。騰落率でみて+40%~+60%超にあるトップグループ(AMAT、WDC、NVDA)と、+0%~+20%程度に収まる中位グループ(ローム、村田製作所、住友電工、デンソー)と、△20%~+0%程度に収まる下位グループ(CHKP、ソフトバンク・グループ、XLNX)だ。因みに赤の点線が日経平均株価、水色がNYダウということになる。

総合収益は約20%、日経平均株価が約14%、NYダウが約12%なので、銘柄の選定さえ誤らなければ「買っとく、積どく」だけでもインデックスをアウトパフォーム出来ることがお分かり頂けるだろうか。Premium会員の皆様がある意味証人だと思っているが、これは過去を見て決めたシミュレーションではなく、リアルにこの一年間を「Buy & Hold」で過ごした結果だ。

日々の動きを追う事も勿論大事だが、ビジネス・トレンドの検証、決算状況の確認などをして大きな間違いがなければ、そのまま「買っとく、積どく」でもこれだけのパフォーマンスは上がる。

実際にファンドマネージャーがファンド運用する場合は、当初は仮に等金額投資でスタートしたとしても、途中でウェイト付けを変えて行くのが通常だ。それは「これは行ける」と思えばアクセルを踏み込む(ウェイトを引き上げる)、或いは「暫く様子見だな」と思えばアクセルを緩めてウェイトを引き下げる。中には、下げたところでアクセルを全開にするとか、周りがアクセルを踏んだところで、こちらは先にブレーキを踏む(一部利食ってウェイトを落とす)と言った作業だ。

恐らくこれだけのポテンシャルのあったポートフォリオなので、感覚的にはウェイト操作をすることで、銘柄を変えずとも2倍以上のパフォーマンスを挙げることは出来ただろうなと思う。ただそこまでせずともMF10Cのパフォーマンスが現状の結果になっていることが、銘柄選定の重要さを示していると思われる。

①  住友電工

2019年度第3四半期の決算発表は2月5日の15:00から行われる。

同社1月23日付のプレスリリースに「切削工具事業 航空機産業分野へ本格参入」というのがある。本文には「2019年12月、航空機関連の産学官連携機関OMIC R&D(アメリカ・オレゴン州)へ参画いたしました。当社グループとしては2017年のイギリス、2018年のドイツに続く3つ目の航空機関連のコンソーシアムへの参画となります。当社はこうした欧米の航空機関連研究機関への参画を通じ、切削工具事業において航空機産業分野向けの製品開発を加速いたします。」とあるが、正直なところポジティブなのか、ネガティブなのか悩むところだ。「選択と集中」ということを考えた時、これが同社のコアビジネスのどこにシナジーを発揮するのか分からない。

時々デンソーが同じようなことをするが、のちに「なるほど、この為だったのね」とデンソーの場合はなっている。「欧米各市場における航空機エンジンや機体構造部品の最新・最高レベルの切削加工ニーズを把握し、それに対応した高能率で長寿命な工具の開発を加速させる」ことが既存ビジネスにどう活かされるのかはじっくりと確認していきたい。

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②  デンソー

2019年度第3四半期の決算発表は1月31日に行われる。

1月22日、三菱自動車が排ガス検査で基準を超えないようにする不正装置が取り付けられていた疑いでドイツ検察当局の捜査を受けた問題を巡り、同社も当局から参考人として捜査を受けたことを明らかにした。

また同社は2018年12月に中国におけるメーター事業の競争力を強化するため、自動車向けソフトウェアの設計・開発を行う光庭(本社:湖北省武漢市、以下、光庭)と、合弁会社「電装光庭汽車電子有限公司」を設立している。
31日の四半期決算発表後に何らかの形で影響度合いが示されると思われ注目したい。

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③  ローム

2019年度第3四半期の決算発表は2月5日の15:00から行われる。

創業者の佐藤研一郎氏が逝去された。報道にもあるが、佐藤氏は人前に出ることが大変お嫌いだった。一方で、ロームは投資家向けIR活動という点では、早くからIR室という専門部署を日本企業の中では先陣切って発足していた稀有な企業でもある。そんな中、丁度2000年前後、ファンドマネージャーが直接企業訪問をすることが業界の流行の様に言われた時がある。佐藤氏の思い出話としては、決して投資家の前には現れることが無い社長として有名だったにもかかわらず、「投資先は必ず社長と面談をしてから決めます」と高らかに宣言した投資信託があり、その投資信託に何故かロームが組み込まれていたことだ。どちらが虚言かは明らかなのだが、案外その投資信託もファンドマネージャーも人気だった。いい加減な業界だなと思ったものだ。当然それは私ではないし、佐藤氏にお目に掛ったことは無い。

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④  村田製作所

2019年度第3四半期の決算発表は2月3日の15:00から行われる。

12月9日号でほぼ同じに見える写真で世界最小の0.1μFの静電容量の積層セラミックコンデンサを開発したとお伝えしたが、これは違う部品。スマートフォンをはじめとしたモバイル機器の高機能化・小型化に伴い、電子回路の安定性を確保する小型の回路保護部品のニーズは高まっている。PTCサーミスタは、ある一定の温度を超えると抵抗値が急激に上昇する特性を有しているため、モバイル機器の組み立てや落下時に起こる回路の過電流を検知することで、モバイル機器の異常や故障を防ぐ。積層セラミックコンデンサなどのプロセス技術があるからこそ出来た世界最小化だ。

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⑤  ソフトバンク・グループ

2019年度第3四半期の決算発表は2月12日から行われる。午後4時からは決算説明会の模様をインターネットでライブ中継する。

日経新聞が「シェアオフィス大手のウィーカンパニーは22日、子会社のソフトウェア会社「チーム」と、女性向けコワーキングスペースを手がける「ザ・ウイング」の保有株式をそれぞれ売却したと発表したが、SBGのもとで経営再建を進めるウィーカンパニーの経営再建が順調に進むかどうか不透明感が強く、利益確定売りにつながっている。」と報じている。

これが市場の見方なのかも知れないが、SBGの株主価値にどれだけ影響があるかの分析が無い極めて定性的な見方だと思わずにはいられない。

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⑥  Nvidia

2019年度第4四半期の決算発表は2月12日のNY市場引け後から行われる。

UBSのアナリストのTimothy Arcuri氏が市場コンセンサスは控えめだとして、レーティングはBuyを維持しながら目標株価を240ドルから300ドルに引き上げた。同氏によればデータセンターおよびゲームの新しい7nm製品によって更なる収益改善が期待出来るという。

この辺りの内容はTSMCの決算発表内容と一致する。

今週はカバーしているアナリストが1人減った。

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⑦  Western Digital

2020年度第2四半期の決算発表は1月30日のNY市場引け後から行われる。

モルガンスタンレーのアナリストJoseph Moore氏がウェスタン・デジタルと併せてマイクロンテクノロジー(MU)の格付けをEqual-WeightからOverweightに引き上げた。既にメモリーのシクリカルサイクルは底を打っているという判断だ。WDCの目標株価は64ドルから88ドルへ、MUは56ドルから73ドルへ引き上げている。

アナリストの格付けはHoldからBuyに2人移っている。

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⑧  Xlinx

2020年度第3四半期の決算発表は1月28日に行われる。

今週はHoldからUnderweightにひとり移った。

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⑨  Applied Materials

2020年度第1四半期の決算発表は2月12日に行われる。

今週はBuyから1人Overweightに変えたようだ。

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⑩  Check Point Software Technologies Ltd

2019年度第4四半期及び通期の決算発表は2月3日に行われる。

Webcastingは下記のURLから入ることが出来る。
https://edge.media-server.com/mmc/p/np2arnom

今週もアナリストレーティングの変化は無い。

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