FG Premium Report 4月6日号(悲観論を唱える方が容易な時は?)

INDEX

所感/雑感

「ロックダウン(都市封鎖)」が来るぞとビビる日本市場。既に「ロックダウン(都市封鎖)」したニューヨークを抱える米国市場。それでも日本株の方が不甲斐無いのは何故だ?その差はどこにあるのか?先週は売買代金も急減し、先が見えない恐怖にただただ怯えているだけにしか見えない。だが間違いなく、動きだしている変化があり、これらを捉えられなければ生涯投資で勝つことは無理だろう。こんな時こそ、頼りになるのが自分自身。井戸端会議レベルの相場談義や、当り障りのないことしか言わないコメンテーターの話を聞いていても絶対に勝てはしない。無理にでも目線を変えることが大切だ。マジョリティは負け、マイノリティが勝つ、それが資本市場だ。

日米各株式市場の先週の終値と週間騰落率

日本株市場は参加者が急減がひとつの敗因

4月1日になった途端に売買代金が2兆円台に戻ってしまった。まだボラティリティ・インデックスは高い水準にあるにもかかわらずだ。下記のチャートで青の日経平均株価のラインが下がっているにも拘らず、赤のNT倍率が上がっているという事は、TOPIXの方がより低下している、すなわち相場の中身は見た目以上に悪い。

4月1日になり、多くの国内証券会社でもリモートワークが始まった。例えば、SMBC日興証券では営業マンの外訪活動は禁止となり、出社も隔日制でリモートワーク。

運用会社でもリモートワークが可能な人は積極的に出社を見合わす様にと指示が出ているようである。

常識的に考えて、それでもいつもと変わらず顧客とコンタクトを取って売買発注を取ったりする証券営業マンも少なければ、自宅から積極的にリスクを取りに行くファンドマネージャーも少なかろう。何故なら、彼らには給料がきちんと払われるからだ。同じように、外国人投資家も相当数が母国に一旦引き上げたと聞く。売買代金が証明しているものは、そうした市場の実態であろう。

米国株市場は3月23日で底を打っている

週末のVIX指数は46.80まで低下した。理想的にはもう少し株価が上昇してくれれば嬉しいのだが、米国株市場はだいぶ落ち着いてきたように思われる。現状言えるのは、恐らく3月23日につけたS&P500の2,237.40ptsが底値となったであろうという事だ。

恐怖指数と呼ばれるVIX指数が、ここから再度高値を抜けながら株価が下落するには、リーマン・ショック以上の恐ろしさと、欧米の諸都市がどんどんロックアウトを始めるようになった時以上の恐怖感を市場が感じないとならない。

今月半ばから1-3月期決算の決算発表が始まる。誰も良いものが出るとは思っていまい。週末の雇用統計の底抜け方を見ても、大して反応しなかったところが、このあたりに期待は全く無いことを証明している。ならば、どんなことがこの先のネガティブ・サプライズとなって、株価を再度急落させることが出来るのか?現状、私の脳みそではその状況を想像することが出来ない。

ただ債券市場はだいぶ落ち着きを取り戻しているように思われる。下の図は先々週末(黒線)から先週末(赤線)までの日々のイールドカーブの変化を示している。


ご覧頂けるように、少なくとも順イールドを保ちながら、大きな金利変動は各期間ゾーン共にしていない。10年債は概ね0.6%前後が現状は居心地が良いようだ。

それでも再度、急落を始めるリスクとは何か?

是非、毎日データを更新している別記事の「新型コロナウイルスの感染者データ・アップデート」 を、これから毎日見て頂きたい。宜しければ、このURLを友人・知人の方などにも広めて頂きたい。そこにはメディアやしたり顔の専門家が語る絵面とは異なる世界が展開しているから。だが、それはただただ公表されているデータを、その数字の意味が分かり易い様に並べ替えたり、比較データを挿入したりしただけだ。何も言葉での脅迫や煽りは入れていない。

その上で、もし再度急落するリスクがあるとすれば、それは米国の感染者拡大が全く終息の気配を見せずに続くことだ。残念ながら、現状、米国の感染拡大状況は「どうしたの?」と聞きたくなるぐらい日々悪化している。あれほどの英知と資金力とパワーのある米国の今回の状態は、正直言って驚きを隠せない。また欧州も衰える気配がしない。でも、これは欧米の話で日本の話では無い。

日本の話と欧米の話は分けて考えるべきだろう

これら欧米の状況をそのまま日本に当て嵌めて、欧米の痛ましい情景を映し出して、「ロックダウン(都市封鎖)」だ「医療崩壊だ」と騒ぎ立て、徒に危機感を煽るメディアや政治家に乗せられてはいけない。

毎日ジョンズホプキンス大学のデータを取り込んで手作業で加工しているからこそ言えるのだが、欧米の状況と日本のそれとは全く異なる。ウィルスが2種類あるという説が出たかと思ったら、最近は3番目が出たとも言う。要するに、専門家と呼ばれる学者達でも、日本が現状を維持していることを誰も説明し切らないのだろう。そもそも、自国の頭の上のハエを追い切れないのだから。

感染者数の拡大はPCR検査の量に比例する。日本でも押し切られるように徐々に検査数は増えてきているから感染者数は増えるだろう。

だが欧米の状況に比べて全く違う動き方をしているのが死亡者数だ。下の表を見て頂きたい。プレミアムレポート用に、新たに死亡者数で降順にソーティングした表だが、4桁、5桁の死亡者数が当たり前の中で、日本のそれは未だに2桁だ。そして人口比を考えてみて欲しい。このレベルの増加値をずっと日本はキープしている。

小池都知事が殊更に今現在の状態を「感染爆発 重大局面(オーバーシュート 重大局面)」と騒ぎ立てるのは、次期都知事選挙へのアピール(「首都東京の危機を救ったのは私です」と言う為)か、若しくは現状の失政に対する責任逃れではないかと思っている。

共同通信の4日の報道によれば「これまでの感染者数から死者や既に退院した人を除き、入院が必要な人数は4日時点で817人となり、都が3日までに確保した病床数の約750を上回った。」という。この数字を見て、驚きを禁じ得なかった。もし、これが首都直下型地震であったり、南海トラフ巨大地震であったりしたら、どうなっていたのだろうか?あれだけ災害対策を叫びながら、国民、都民の危機意識を煽り立てながら、準備されている病床はこの規模のものなのかということ。暢気にオリンピック2020と予算をバンバン使う前に、すべきことがあったのではないだろうか?だが、そんなことは、どこのメディアも突っ込まない。彼らもオリンピックの片棒を担いでいるからだ。

トランプ大統領が原油を救った

単純に消費者の感覚だけで考えたら、原油価格は安いに越したことはない。ガソリン代が安くなり、電気代が安くなり、航空機に乗る時のサーチャージも安くなるからだ。だが18年振りとも言われる原油価格の下落は決して良いことばかりではない。その代表的な例がアメリカのシェールオイル関連企業の経営破綻だ。実際、その第一号となる案件が「ホワイティング・ペトロリアム」の連邦破産法第11条の適用申請という形で表れてしまった。こうなるとMLP価格などにも影響するので、穴が開く投資家も出て来る筈だ。

その原油価格、トランプ大統領がサウジアラビアとロシアの仲介役を演じ、火曜日に20.02ドルで終わったのを底値に、21.46ドル、25.32ドル、そして29ドルなって一週間を終えた。

当然、以前からお伝えしている原油銘柄、シェブロンやエクソンモービルにとっては朗報であり、これらが上昇することでNYダウにはポジティブな影響があった。

この先の動向のまとめ

前述した通り、「新型コロナウイルスの感染者データ・アップデート」のコーナーを設けて毎日データをアップデートして分析している。併せて土曜日には「『緊急事態宣言』から『首都封鎖』待望論が突き進む方向が正しいのか?」という記事も掲載した。こうして毎日感染者数の動向を数値分析している限り、私にはどうしても「ロックダウン(都市封鎖)」などという事態を招かないとならない状況だとは思えない。ならばどこかで風向きが変わる筈だ。

先週末には米国の雇用統計が発表された。勿論数字は悪い。3月の非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比70万1000人減となり、ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は10万人減に比べると遥かに悪い。失業率も2017年以来の高水準となる4.4%なのだが、これについての市場反応はたいしたものでは無かった。既にこの統計そのものが3月中旬で締め切ったものであり、今はもっと悪いという評価が出ているが、それでも概ね織り込み済みという反応だった。

既にS&P500とVIX指数のチャートで確認したように、VIX指数、すなわち「恐怖指数」は低下プロセスに入っているかに見える。また逆に先日のリーマン・ショック時を上回る水準を超えて市場が動揺してVIX指数の上昇を伴いながら下落する要素には何があるだろうか?原油価格もOPECと非OPECの間で減産合意となりそうであり落ち着いてきた。マクロのとんでもない数値が出ることか?いや、それらも相当程度織り込み済みだと、雇用統計への反応を見れば感じられる。

今週後半、8日のデルタ航空(DAX)の決算を見て腰を抜かす?いや、既に空港などに並ぶ待機飛行機の駐機風景で誰も碌な決算が出るとは考えていまい。

そうなるとやはり米国内や欧州などの感染拡大状況だけが材料か?よもや東京が「ロックダウン(都市封鎖)」したから下落するなどということにはなるまい。寧ろ、何か好材料が出れば、そちらを取上げる環境になるのではないだろうか?

注目の右肩上がりのビジネス・トレンドとトピックス

漸く日本でも表面化したデータ通信量の爆発

土曜日(4日)の日経新聞朝刊トップの記事は「データ通信量、4割増加 在宅勤務・休校が影響 3月、前月比 回線増・画質制限が急務」

とあるが、もう既にプレミアム会員の皆様には何度かお伝えしてきたことが漸く経済新聞のトップを飾るようになった。「FG Premium Report 3月23日号(パンデミックの中の光明)」の「2.注目の右肩上がりのビジネス・トレンドとトピックス」を見て頂ければ、記事で紹介されているMicrosoft Teamの事などもより詳細に書いてあるのでご参照頂きたい。

記事には「回線増強」についてだけ触れられているが、インターネットは電話回線のようにデータセンターと発着信場所が点と点で結ばれるものではない。インターネットの仕組みが事細かに説明されたのは随分と昔の事なので記憶が薄れている方も多いかと思うが、インターネットの強みはメッシュ状に張り巡らされた通信網を、パケット単位に分けられたデータが色んなルートを通って、最後にまた一塊に戻されるというのが強みだ。たとえ途中の何処かの回線が切断したとしても、どこかの回線が繋がっている限り、迂回してパケットは届く。だからこそ、そもそも軍事用途で開発されたものが民生転用された。

インターネット通信の仕組みをもう一度思い出す時

ただ、逆に言えばこれは一か所だけを補強すれば通信キャパシティが上がるわけではないという弱点にもなる。細分化されたパケットには、先頭にIPアドレスがついていて目的地が示されている。これが多くの中継点となるサーバーを通る。以前、私も自宅にサーバーを設置していたが、当然のことながら誰か知らない人のパケットが通過していた。

Napstar、Winny、WinMXなどP2P技術を用いたファイル共有サービスを以前利用されたことがあれば理解し易いと思うが、途中に回線の帯域幅が狭いサーバーや、処理能力が遅いサーバーが入ると、途端にファイル交換に時間が掛かるようになったこと。当然、そういうサーバーは徐々に外されていく。それの大規模なことが起きようとしていると想像して頂けば、もう少しデータ通信量が4割増になると何が起こるか、想像も膨らむのではないだろうか?

その大前提には、既にAIだの、IoTだの、5Gだのでデータセンターのキャパシティはかなりタイトな状況になっていた上に、処理速度向上、データの貯蔵容量の増大、通信速度の高速化と超低遅延化が求められていたのだから。

もうひとつ今回の新型コロナウイルス騒動が、過去の金融危機や災害、或いは戦争などと大きく異なる点は、インフラはどこも傷んでいないという点。これからある程度は覚悟しないとならない企業倒産も、金融機関同士の何処と何処の間に爆弾となるデリバティブ契約があって、どうやってそれを解けば良いか分からないと言ったこともない。新型コロナウイルスという敵は確かに見えない敵だが、見えない損失は起こらないし、起こっていないということが重要だと思う。どこかで克服出来そうだと市場が見極めた時、恐らく株価は素早く反転するものと考える。

恐らく、来年はベビー・ブームになる

1965年のニューヨーク大停電の出生率が上がったという話は聞かれたことがある人も多いだろう。また昔から株式不況が起こると、その後に証券業界関係者にベビー・ブームが起きるというのもある。実際私の周りでも、90年にバブルが崩壊したあと、接待などが激減した為か、私の周りの既婚者たちの間でベビー・ブームが起きた。冗談と思われるかも知れないが事実だ。

今年、世界中で外出規制やロックダウンが行われている。勿論、感染者からは離れていなければならないが、健常者が閉じ込められていたら、或いはレストランやナイトクラブ(キャバクラの話では無い)、或いはビーチサイドでのデートが禁じられている健康な若者達が閉じ込められたら、映画を観て、音楽聞いて、ゲームをしてというだけでは済まないであろう。

従来、人口増加は発展途上国や貧困国に多く見られたが、今回の新型コロナウイルス騒動はもろに欧米の先進国を直撃している。人口動態としては歪になるとは思うが、この「ロックダウン(都市封鎖)」が長引けば長引くほど、来年2月頃から各国の出生率は間違いなく上昇するものと思われる。出生率が先進各国で上昇するとどんな産業が勢いづくか、そんな事に想像を巡らすのも悪くないと私は考える。

My favorite Companies List(株主となって所有したい企業のリスト)

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