FG Premium Report 4月13日号(新型コロナで変わるライフスタイル)

INDEX

所感/雑感

「緊急事態宣言」が発令されると聞いて、日本市場は反転した。米国株市場も、僅かな感染拡大減速の兆しで反転した。日米共に、感染者数も死亡者数も増加していることに変わりはない。やはり市場は先に最悪のシナリオを織り込みに行くということか。恐怖指数の動きなどを見ていても、お伝えしてきた通り、3月下旬の突っ込みでボトムは確認したという動きになっている。

日米各株式市場の先週の終値と週間騰落率

先週の金曜日はGood Fridayで米国を始め多くの国が休場となった。アジアでは豪州、香港が、欧米では欧州、英国、米国が休場。外国人投資家が休みになると途端に閑散となるのが最近の日本市場の特徴であり、SQであったにも関わらず売買代金は2月24日以降最低となる2兆1,945億円という少なさだった。要するに、日本市場を評価分析するには欧米市場をフォローしないと駄目だということだ。今週月曜日はイースターマンデーで引き続きアジアでは豪州と香港が、そして欧州と英国は休場となる。米国市場は通常通り取引がある。

日本の緊急事態宣言は本当に必要だったのか?

結局7日に正式に発令された「緊急事態宣言」だが、個人的には本当に必要な状況だったのか、今でも疑問に思っている。メディアの世論操作と一部政治家や連なる医師会のパフォーマンスに遂に政府も屈せずには居られなくなったと感じている。なぜか?

私は毎朝「新型コロナウイルスの感染者データ・アップデート」の更新データを作るために、ジョンズホプキンス大学が公表するデータを整理し、分析している。そしてFund GarageのFacebookの方に簡単な感想を日々記しているが、いつもお伝えしている通り、感染者数、死亡者数、回復者数などを人口比や前日比を含めてブレークダウンすればするほど、日本の感染者数の拡大はメディアや都知事が大騒ぎする状態にあるとは思えない。その一番の理由は「死亡者数」だ。まずは下記の表をじっくりと見て頂きたい。これは死亡者数で世界の状況をソーティングした表だ。日本は29番目で99人、東京都は38番目で40人だ。翻って、日本の人口の半分弱のイタリアは18,849人(+570人)、急激に感染が拡がっている米国は人口約2.5倍ながら18,316人(+2,049人)にも及ぶ。こうなる予兆でも見えれば話は分る。

(出所:ジョンズホプキンス大学)

ニューヨークやイタリアの医療現場の最悪な状態の写真や動画を垂れ流して「このまま行けば、日本もこうなる」とワイドショーやニュースで喧伝し、突然都知事が「ロックダウン(都市封鎖)」などと言い出せば緊張感も走るだろう。マンハッタンは全米でも極端に人口が密集した特殊な街だということを忘れてはならない。

そうした映像を垂れ流しながら、NHKの7時のニュースまでもが「東京都は一日の感染者数が過去最大の181人となりました」とか「遂に日本の感染者数も5,000人を超えました」とアナウンサーがこの世の終わりを告げるように眉間に皺を寄せてニュースを読み上げれば、比較尺度を持たない一般人は「大変なことになった」と思って当然だろう。

しかし現実には米国の感染者数は同じ日に+37,054人(181人の約205倍)も増えており、日本の感染者総数の約7倍近い数が一日で増えているのだ。また日本の亡くなった方の総数は99人だが、これはブラジルやオランダで僅か一日、そう毎日亡くなっている方の数よりも少ない。これこそ数字が教えてくれる事実だ。感情も先入観も何も無い冷静な数字だ。

都知事が「ロックダウン(都市封鎖)」などと言い出した頃からになる、この2週間に日本で新型コロナウイルスによって亡くなった人の推移を見てみよう。それ以前から「今に幾何級数的に爆発する」と声高に喧伝する人も居たが、その気配は下記の表からは全く感じられない。

 

医療現場の現実は数字が示すものとは違うと想定してみる

「医療現場の実状を見ていないから、そんな暢気なことが言えるんだ!」との叱責を受けるかも知れないが、私の友人・知人の医療関係者に聞いてみて、どう拡大解釈してみたところで「医療崩壊」の足音は聞こえて来ない。大変だとは聞く。そして確かに台東区の永寿総合病院のケースは酷いと思う。だが、だがあれは規模的に一般病床400床の中規模の病院の特殊な例と見ることも出来る。屋形船の患者に繋がると聞くが、そもそもの個人タクシー連盟の方では拡大していない。また一部を引き受けた慶応義塾大学病院から更なる拡大は聞こえて来ない。逆に言えば、例外的なケースと見ることが出来ると思う。

一般病床数ということで言えば、東京都には106,790床の一般病床があり、他に結核病床412床、感染症病床124床がある。個別に最大規模は新宿区の東京女子医科大学で1,314病床、永寿総合病院と連携した慶應義塾大学病院も1,013病床もある。「医療崩壊の危機」と東京都医師会までが喧伝するが、4月11日現在の東京都の感染者数全てで1,902人に過ぎない。その内訳は入院中が1,810人(軽症・中等症1,776人、重症34人)であり、当然全員が発症し、重篤化してICUを必要としているわけでは無い。重症数は10日から3人しか増えていない

下記に東京都にある大型病院ベスト10を一覧に纏めたのでご覧頂きたい。これら10の病院のベッド数だけでも合計すると10,537床にもなる。東京都の病床総数は107,326床なので、数の上では更に96,789床もあることになる。既に満床で余裕が無いと言う専門家という人も居る。東京都医師会も会長自らFacebookに投稿する位だ。ならば何故「東京都保健医療計画(平成31年4月1日現在)」で一般病床数が10,299床も余剰だと計算されているのだろうか?余剰だからこそ、補助金までつけて削減しようとしているのは見込み違いなのか?

医療現場の意見や考え方と医師会のそれとは一致していないとは以前からよく聞いた。正に前述の状況こそがその一旦ではないだろうか?

日本市場は緊急事態宣言の発令に光明を見出した

皮肉なことに、数字を冷静に追い駆けて「大騒ぎするレベルではない」と思っていた私と違って、日本の市場はやはり相当に怯えていたからこそ緊急事態宣言を喜んだ。緊急事態宣言が発令されると聞いてから、安堵し、急速に戻り歩調を早めた。つまり、悪材料出尽くしと思ったのだと思う。或いは、「野放しに社会的な距離も取らない日本は危険だ」と刷り込まれてきた社会心理が「これで漸く日本も状況をシリアスに考えるようになった」と安堵したからなのかも知れない。先週の上昇率は日経平均株価が+9.42%、TOPIXが+7.92%にも及んだ。正直、この部分の上昇は腑に落ちていない。

更に日本市場に安心感を与えたのは、米国株式市場の戻りが強かったことだ。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)に対応した経済支援策として、米連邦準備制度理事会(FRB)は新たに最大2兆3,000億ドル(約250兆円)を供給する措置を発表した。欧州連合(EU)のユーロ圏財務相会合も5,400億ユーロ(約64兆円)の対策で合意した。更に米国の感染拡大の勢いにやや落ち着きが見られるようになってきたことや、ジョンズホプキンス大学が「当初想定よりも早く終息するかも知れない」というような発表をしたことなどが、売り方の買い戻しを巻き込んで良い戻しを演じてくれた。

いつものS&P500とVIX指数のチャートはほぼ完ぺきに底打ちから反転の形状となっている。そもそも再三お伝えしてきたように、売られ過ぎだと考えていたので、日本市場の戻りのきっかけはともあれ、正常な動きだと考えている。

 

この先の動向のまとめ

底打ちはしたと言っても、実際にはまだまだ感染自体は拡がっており、何らかのきっかけで揺り返しが起こらないとは思い難い。例えば、中国だ。武漢がロックダウンを解いたら、途端に人々が各地へ繰り出したようである。或いは、中国はそもそも本当に事態を終息させたのだろうかという疑問がある。米国の4倍を超える人口を抱える中国が、早々に終息に向かっているとは俄かに信じ難い。

「新型コロナウイルスの感染者データ・アップデート」に11日から「ACTIVE感染者数=感染者数累計-死亡者数-回復者数」の表を加えたが、これで見ると中国にはACTIVEな感染者は既に1,794人しか居ないことになる。これは東京都よりも少ない。亡くなった方の数も3,343人しか居ない。もしこれらに何らかの反動(第2波の感染再拡大など)が起きれば、市場は再び動揺するかも知れない。ただ、何といっても共産党一党支配の中国の事である。私たちの想像が決して及ばない何かがあっても不思議はなく、このまま終息するのかも知れない。与えられた数字以外のことは何も分からない。

何れにしても、緊急事態宣言下の日本も含めて、市場の行方を左右するのは新型コロナウイルスの状況如何という流れは暫く継続するだろう。ただ一旦は底値は固まったと思われる。そしてリモートワークや巣篭もりという流れも含めて、従来から注目してきたビジネス・トレンドは間違いなく右肩上がりだ。ただ残念なのは、日本でこの流れを享受出来る企業はそう多くない。ZOOMもMicrosoft TeamもGoogle Suiteも皆米国発だ。つまりこれらに連なるビジネスの会社ということにしかならない。ただ今のような病み上がりの時は、なるたけど真ん中を狙った方が安心だ。

 

注目の右肩上がりのビジネス・トレンドとトピックス

リモートワーク・テレワーク関連のPCアクセサリーが手に入らない

私事ながら、娘の大学がオンラインで授業をするので、担当教授からハウリングを起こさないように「マイク付きヘッドセット」を用意するようにと指示が出た。当然私がAmazonで簡単に発注を試みた訳だが、どれもこれも在庫切れ。中国製の妙に派手なゲーミング用のものならあるが、サンワサプライ、buffalo、ロジテックなどという普通のパソコン・アクセサリーの日本企業のものはPrimeと表示されていても「一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定です。」若しくは「2020年5月3日に入荷予定です。」などとなっている。

ノートパソコンの中古市場までもが大賑わいだというのは、業界誌で知っていたが、考えてみれば自宅で籠れる仕事部屋を持っていないリモートワーカーにとっては、パソコン本体付属のスピーカーとマイクでは外部音を拾い過ぎるのかも知れない。ただ流石にこれで投資出来る銘柄を見つけるには、物の単価が安過ぎる。ただ間違いなく、リモートワーク・テレワークの流れは加速して当面続く。

拙宅のネットワーク環境は非常に良いように作ってある。光ファイバーは一本専用で目の前の電柱から直に引き込んであるし、buffaloのルーターも新しい。無線LANも飛ばしているが、各部屋に直接有線LANが通してあり、昔から会社で作業するよりも環境は良い。ただ最近、ネットワーク全体が遅くなったと感じる時がある。家の中は再チェックしたので、やはりインターネット側に原因があるようだ。身近なところでは、Facebookが時々思い。

Facebookのネット広告が明らかに変化している

先月ぐらいから、すなわち「在宅勤務」が世の中で推奨され始めた頃から徐々に変化してきたが、明らかにこのところ、リモートワーク・テレワークに関わるネット広告が増えている。端的な例がセキュリティ対策関係だ。

何とかノートパソコンを手配出来た会社が社員にリモートワーク・テレワークをさせようと考えた時、最初に頭を悩ますのがセキュリティ対策だ。VPN(Virtual Private Network)を予め準備している企業ならば問題ないが、多くの企業はその前提にない。しかし一般のインターネットを使って会社のファイルサーバーに社員をアクセスさせるわけには行かない。個人情報など大事な情報がダラ漏れになってしまうからだ。

こうしたことを回避するために、以前にもご紹介したがチェックポイント・セキュリティーズ・ソフトウェア(CHKP)などが90日間無料のサービスを宣伝していたりする。他にもVMware(VMW)が下記のようにテレワーク支援製品(VMware Horizon)の90日間お試しキャンペーンなどを行っている。需要が無いところに広告は打たれない。

 

大学や予備校の授業がどんどんオンライン化される影響

緊急事態宣言発令を受ける前から、徐々に発表され始めてきたが、多くの大学や予備校で授業のオンライン化が進むようだ。親しい教授がいる芝浦工業大学などでは、学生がキャンパスに行くのは後期授業からということで、彼は急遽自宅に仕事環境を構築している。従来は勤労者が自宅で仕事というのがリモートワーク・テレワークの流れだったが、恐らくこの騒ぎが長引けば長引くほど、学校や予備校での授業オンライン化の流れは加速するだろう。

ライブ配信するだけならばデータはその場限りだが、授業をアーカイブするようになるならば、当然データストレージの容量が膨大に必要になる。90分の授業を高画質で動画とするなら約1GBはYouTubeでも必要だ。全国の大学や予備校が全授業を毎日動画で撮り始め、録画し始めたら、これは膨大な需要を生み出すことになる。

旺文社の調べによると、2019年度に学生募集を行った大学は774校に上る。仮に各大学が平均で10講座を6時限まで行ったとすると合計46,440時間となり、各授業のアーカイブが仮に1Gだとしても、毎日これだけで約45テラバイト、20日間で900テラバイトだ。

大した数字ではないと思われるかも知れないが、家庭用テレビの録画システムのレベルで事が足りる訳ではない。当然バックアップが必要となるし、ストレージ自体もRAID構造と呼ばれる同じデータを複数のHDDに多重録画するようなシステムが必要になる。「先週の全授業のデータが壊れて消えました」などというのは笑い話にもならないからだ。必要なストレージ容量はこの数倍になる。それでも約ひと月分だ。

昔と違うのは、これらを各学校や予備校が独自にデータセンタに設置することは無いという事。当然AmazonのAWSやマイクロソフトのAzureなどのクラウドサービスを使うことになる。だからこそ、データセンタの設備投資需要は世界的なこの騒ぎの中でも加速しているのがお分かり頂けよう。

My favorite Companies List(株主となって所有したい企業のリスト)

下記のリンクよりMFCLのページを開いてください。「アップデート」の日付が更新されている銘柄については、個別銘柄コメントにお伝えしたい重要なニュースを書き加えております。

MFCLのページを別仕立てとしたことで、週に一度ではなく、随時アップデートがあればページを更新しています。トップページで更新状況は確認出来ます。

今週は、デンソー、村田製作所、ウェスタンデジタル、ザイリンクスにコメントの更新があります。