FG Premium Report 8月24日号(最新のゲームが示す未来)

INDEX

所感・雑感

NASDAQの上昇を馬鹿の一つ覚えのように「ハイテク株の上昇」と単純にコメントする人があまりに多いので、最近はやや呆れてしまっている。指数の内容変化を何も分かっていないからだ。勉強不足過ぎる。それはS&P500についても同じだ。一方、日本市場は流石お盆休みで閑散だ。リアル帰省かオンライン帰省か、はたまたGO-TOか、色々な議論はあるにせよ、夏休みの典型らしく、先週の日本市場で売買代金が1兆8千億円をこえる日は無かった。結果的に日本では新規口座開設した個人が大量参入したであろうマザーズが一番気を吐いた。ただこの騰落率のバラツキを見ると、如何に市場が今現在「悩んでいる」のかを垣間見ることが出来る。

日米各株式市場の先週の終値と週間騰落率

 

約2か月半後に迫ってきた米国大統領選挙の影響

新型コロナウィルスCOVID-19のパンデミックについては、毎日の集計データの方でもコメントしているのように、変な言い方だが「落ち着いている」状態が続いている。新たに急加速している国も無ければ、「もう大丈夫」と嬉しい話題を提供出来る国も無い。可もなく不可もなくという感じだ。

日本の状況に目をやれば熱中症の方が余程シリアスな問題であり、東京都内だけで8月21日までの3週間に亡くなった人は148人と過去最高を更新する状態。一方、新型コロナで亡くなった人の数は僅かに20人だ。日本全国でやっと168人という状況。実は当Webページの日々のPV(ページビュー)数を観察しても、このところ新型コロナの話への関心が薄れているのが明らかだ。

米国メディアの取扱いを見ていても、流石にCOVID-19のパンデミックについては割かれる時間も紙面も若干減った印象がある。一方、急増しているのがやはり約2か月半後に迫ってきた米国大統領選挙だ。

ビジネス・マインド溢れる実業界出身の現職トランプ大統領(共和党)の劣勢が喧伝され、民主党候補のバイデン元副大統領の候補者指名受諾演説などが話題をさらっている。また民主党バイデン候補は副大統領候補にジャマイカ人の父とインド人の母を持つカマラ・ハリスカリフォルニア州上院議員(55歳)を指名した。これもやはり先頃の黒人差別問題に対応した作戦で、これも上手くフォローの風を吹かせていると言える。

だがこれで米国大統領が現職トランプ氏から民主党バイデン候補に変わるとみるのは、やや早計だろう。もし、トランプ大統領が既に2期目の終わりならば政権交代も大いにあり得る。だがトランプ大統領はまだ一期目だ。まずこの二人の年齢が問題になる。徹底した論戦などは正にこれから始まる。トランプ大統領は現在6月に74歳になったばかりであり、あと一期を終えても78歳だ。一方のバイデン候補は現時点で11月生まれの77歳、つまり当選したとして就任時で既に78歳、一期目の終わりで82歳、二期目で86歳になっている計算になる。第一継承者となる副大統領候補のハリス氏は10月生まれの現在55歳。就任時は56歳になるが、まあこれは問題ないだろう。参考までに、トランプ大統領の第一継承者となるマイク・ペンス副大統領は6月生まれの現在61歳だ。

米国大統領選挙に関する日本の報道は意図的なのか、単なる失態なのかは別にして、実によく間違ったことを伝える。それは「日本と全く構造が違う国」なのに、日本人の感覚で全てをはかるからだというのが一番簡単な答えだが、時事状況に関しては、東西コーストサイドをメインとした取材が中心だからだろう予てから思っている。

そもそも大統領制度という全く日本とは違った制度であること。時々「米国の大統領は直接選挙で決まるから」と言う人がいるので仰け反ってします。確かにそれに近い制度ではあるが、大統領に投票するのではなく、選挙人という有権者の声を代弁する人に投票して決める。その意味においては「間接選挙」ではあるが、「大統領を決めるため」だけに行われる選挙として行われるので、時の政権与党の党首が自動的に首相に収まる日本とは違う。

また基本的に日本では都道府県によって法律が違う事は無い。細かな条例に違いはあるが、法律は同じだ。それは中央集権の地方自治だからだが、米国は合衆国で、合衆国憲法は統一されているが、基本的に州ごとにかなり独立している。その端的な例が銃規制だ。これは合衆国憲法修正第2条「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有しまた携帯する権利は、これを侵してはならない。」という条文をどう解釈するかで異なる結果となるからだ。

民兵と言えば、米国には所謂「米軍」と呼ばれる大統領を総司令官とする世界最強軍隊がある一方で、州ごとに「州兵」という制度がある。そして当然「人種のるつぼ」と呼ばれるだけあって、ありとあらゆる人種がいる。その背景は「移民」こそが建国のもとであり、もともと「米国人」と呼ばれた筈であろう人は「インディアン」と呼ばれる人達の方だからだ。だが、これも東西コーストサイドと中西部ではだいぶ状況が異なって来る。こうした様々な違いが原因していると思うが、日本で報道される米国大統領選挙事情は誤報、誤認が極めて多いので、この先投資判断の参考にするには非常に注意を要する。特に優勢なのはどちらかという報道に関しては、私の記憶している限りにおいてはこの30年以上の間は概ね外れていた印象がある。

もし米国大統領選挙の仕組みなどに興味があれば、是非、米テレビ番組「The West Wing(邦題:ザ・ホワイトハウス)」を視聴されることをお薦めする。

既にDVDでも、AMAZON PRIME VIDEOなどで視聴することが出来るが全7シーズンで、この間に大統領選挙が3回行われる。主演のマーティン・シーンが初めて州知事から大統領に当選する選挙から、2期目も続投する為の大統領選挙(正に今回のトランプ大統領の立場)、そしてその後継者が決まる3回目の大統領選挙と続き、選挙活動の仕方、副大統領候補の決まり方、ホワイトハウス対与党、或いは野党など見どころは多い。現政権とは反対の民主党政権の話だが、米国の政治制度を知る上でも、是非とも一度視聴されることを強くお薦めしたい。市場関係者にとって、4年毎に行われる米国大統領選挙は非常に重要なイベントであるにも関わらず、その実態を理解している人は金融機関側の人間でも本当に少ないのには驚くこと仕切りだ。だからこそ、その米国の政治システムを知っておくことはかなり有意義だと思う。

 

8月のベスト・パフォーマーがマザーズというのは実は危うさの証明

いつものように各市場の騰落率をみてみよう。一目瞭然なのが8月のベスト・パフォーマーはマザースだ。第2位のNYダウの3倍以上の上昇だ。いろいろな要因が考えらえるが、ひとつ明らかな事実は売買代金が非常に細っている中での上昇だということ。つまり、外国人投資家や機関投資家の買いではない可能性が高いということ。元々売買代金が大きくなく、流動性が乏しい市場だと、株価は跳ねやすい。私はその影響だろうと思っている。機関投資家のように億円単位の買い入れをすることなく、1単元分数十万円で良いのであれば、最低単位の100株が売り物にあれば取引は成立する。例の買うから上がる、上がるから買うの好循環だ。ファンダメンタルズを追うというよりは、動くものを追う猫のような感じか。

また21日金曜日にロイター日本の面白い記事を見つけてしまった。それは「焦点:コロナで崩れる東京オフィス需要、淘汰選別が静かに進行」というタイトルの記事だったが、その中にこんな記述があった。本文中の小見出しが<渋谷オフィス街に異変、スタートアップが解約>というもので、曰く「長らく若者の遊び場だった渋谷は、2010年代前半から東急 <9005.T>が中心となって再開発に着手。昨年には米グーグルの日本法人が複合施設「渋谷ストリーム」に入居するなど、IT企業が集積する「日本のシリコンバレー」に生まれ変わりつつあった。」とあった。

もしこの記者が実際にサンフランシスコ・ベイエリアからサンノゼに拡がる本物のシリコンバレーに一度でも行ったことがあるならば、如何に「キャッチーなフレーズを使いたい」と考えるメディアでも、渋谷を「シリコンバレーに生まれ変わりつつある」などとは、努々思いもしなかっただろう。ただこれは2000年のITバブルの頃にもよく似たフレーズを使う人が居た。港北ニュータウン辺りをそう呼ぶ人も居た。もし機会があれば、サンフランシスコからサンノゼに向かうフリーウェイ101号線の走ってみて欲しい(ワインの里であるソノマやナパバレーは反対側なので、観光地は無い)。正にその両サイドの広大なエリアがシリコンバレーだ。前述した部分とも多少かぶるが、逆に言えばこれが日本のメディアの取材能力の限界のなのかも知れない。ただそれに踊らされる投資家に読者の皆さんには絶対になって欲しくないのだ。

話を元に戻すが、前回予想PERの上昇が不安定要因になるという話をしたが、それが現実に株価に反映されてきた。赤線が予想PERで、青線が日経平均株価である。実はそれでも日経平均株価の予想PERはTOPIXよりも低く、JASDAQのそれよりもかなり低い。日経平均の前週末予想PERが21.79倍なのに対し、前者が23.74倍、後者が27.29倍にもなる。PBRで見ると、日経平均が1.09倍、TOPIXが1.20倍、JASDAQが1.36倍だ。これが先週、マザースは上昇する中で、日経平均もTOPIXもすべからく下落した理由だろう。下のチャートを見て貰えば一目瞭然だ。ただ調整が充分だとは残念ながら日本株についてはまだ言えないかも知れない。

 

最低限の流動性が必要な機関投資家や外国人が参戦し易い(中小型株を専門とする投資信託は別)東証一部の大型株のパフォーマンスが悪いことは、下のチャートを見ても良くわかる。流石に日経平均もTOPIXも共に同じように下げている。NT倍率も低下しているので、共倒れになっていることが良くわかる。前年の同じ頃でも、やはり「夏枯れ」という状況は見て取れる。マザースの上昇にはあまり調子づかない方が無難だと言えるだろう。「渋谷をシリコンバレーと喩える」ことが「湘南・江の島をハワイと喩える」のと同程度以上の誤認や錯覚があるのと同じと思われるからだ。

 

NASDAQの上昇を馬鹿の一つ覚えのように「ハイテク株の上昇」と単純にコメントする危うさ

年初来の騰落率を比較すると、やはりNASDAQの上昇は際立っているし、先週に関しても他市場に比べるとNASDAQは指数自体は堅調だ。だがここ何度もお伝えしている通り、これは時価総額加重平均の株価指数であるため、基本的に時価総額の大きい銘柄の動きを色濃く反映する。個人の感覚でもあるが「ハイテク株」と言われるとどんな銘柄やイメージを思い浮かばれるだろう。恐らくトヨタやGMをそう思う人もいないし、三井住友FGやモルガンスタンレーをそう思う人も居ないだろう。やはり電機・電子機器に関わる技術系企業が「ハイテク企業」ではないかと私は理解している。

因みに、AMAZON.COM(AMZN)の業種分類は「Information Technology」ではなく「Consumer Discretionary(一般消費財)」だ。それはさておき、下にNASDAQとフィラデルフィア半導体指数の年初来のパフォーマンス比較のチャートをお示しする。フィラデルフィア半導体指数とは、半導体メーカー、半導体製造装置メーカー、半導体製造請負会社などが含まれる、これこそ私の感覚的にはハイテク株なのだが、ご覧頂ける通り、足許は完全に反対の動きをしている。理由も明らかなのだが・・・。

にも拘わらず、なぜNASDAQがこうも上昇しているのか分かり易くするため、対象銘柄のシェアとウェイトの変化率を纏めた。ご覧頂ける通り、上位5銘柄で50.75%にもなるので、NASDAQの動きそのものは、この上位銘柄の動きと言い換えることも出来る。約15.36%のウェイトを占めるアップル1銘柄で8.23%も上昇している。逆に言えばNASDAQを1銘柄で1.26%も引き上げているということだ。

上位5銘柄の値動きをNASDAQと比較したのが下記のチャートだ。間違いなく、時価総額ウェイトが15%も指数に占めるアップル一社の値上がりでしか無いという事をこのチャートが最も端的に示している。確かにApple(AAPL)はハイテク株と言って差し支えないが、フィラデルフィア半導体指数を構成するような銘柄は上昇していない。念のため同じく時価総額加重平均の株価指数であり、米国市場全体の動きを現すと言われて機関投資家のベンチマークにもよく使われるS&P500種も、Information Technologyが27.5%、アマゾンが含まれて殆どを占めるConsumer Discretionaryが11.2% そしてCommunication Services が 10.9%となり、これらを合計すると49.6%となる。

この先のまとめ

ある意味、アップル(AAPL)一社の動きに支えられている感じが強いNASDAQの今後の動きには懸念を抱かなくもない。ただ世界最大のETFである「iシェアーズ・コア S&P 500 ETF」の時価総額は2000億ドルを超えており、これはS&P500にパッシブ運用なので、この銘柄に資金が集まる限り、その約7%は自動的にAAPLを買いに行く。因みに先週末の比率で言えばMSFTを約6%、AMZNを約5%、GOOGL+GOOGを約3.4%、FBを約2.3%買いに行く。この危うさだけは投資家は理解しておくべきだろう。

何故なら、日本株も結局は米国市場の動きにつられる展開は今も昔も続いているからだ。NASDAQの上昇を馬鹿の一つ覚えのように「ハイテク株の上昇」と思って、日本のシリコンバレーの紛い物を買いに行けば、どこかで痛い目にあう可能性が高い。流動性が無いからホイホイ上昇するという事は、下げ局面においては逆も真なりである。いったん逆転し出したら、スカスカの板の中を売り叩かないとロットはさばけない。その時のトレードは地獄だ。

 

注目の右肩上がりのビジネス・トレンドとトピックス

8月21日付のThe Wall Street Jounalに下記のようなタイトルの記事を見つけた。画像をクリックして貰えば本文に飛べるが、有料契約が無いと全文は読めないので、掻い摘んで紹介すると「米中間の問題が厳しくなる中で中国は自国製半導体政策に拘り、資金調達もし、何とかしようとしている。Huaweiがもし行き詰まれば、より真剣に本腰を入れて来る筈だ。そうした場合、Non-US企業である東京エレクトロン(8031)などは狙い目だろう。」というもの。一理はあるがこうも続けている。「米中間の貿易摩擦が激化している現状で、中国の買い手は可能ならば東京エレクトロンなど、米国以外の国のサプライヤーを採用するかもしれない。だが、東京エレクトロンも米中対立の影響を受けないわけではない。その一例は、米国の制裁の影響を回避できない恐れがあることだ。また、米国が中国の半導体メーカーすべてに米国製装置の禁輸措置を決定した場合、中国の半導体メーカーがフル生産ラインを構築するのはほとんど不可能になる。」というもの。前半は兎も角、後半の青い文字の部分には極めて激しく同意する。

恐らく、東京エレクトロンを含む日本の半導体製造装置メーカーも、米国の姿勢を無視して中国に抜け駆けするわけにはいかないだろう。台湾のTSMCがそうであったように、米国よりの舵を取る筈だ。またポイントとなるのは、青い太文字にした部分だ。今や半導体は設計開発から出口まで、米国を絡めないわけには行かない。日本の半導体製造装置メーカーが束になっても、米国抜きでは今までの考えの延長線上にある半導体は製造できない。

傍ら進む、半導体の技術進歩と世代交代

インテルが半導体の製造工程で技術的に躓いている話は何回か前にお伝えしたが、今の半導体業界は物凄い勢いで技術革新を続けており、その結果として世代交代が起ころうとしている。物凄く平たく言えば、シリコンウェハ―の上に作り込む電子回路を、今でも電子顕微鏡で見ないと分からない程に細く加工しているものを、更にさらにより細くしようという挑戦と、細くするだけでは足りないから、回路そのものを超高層タワーのように縦に積み上げていこうという流れだ。例えばNANDフラッシュメモリーは今現在は96層を積み重ねているが、これをウェスタン・デジタル社などは112層の積み重ねに変え始めた。同社のプレゼンスライドにちょうどいい絵があったので下記でお見せする。要するに高層タワーマンションをより高層化して作る技術をどんどん深めているということだ。高層ビルの歴史説明でこんな図を見たことがある人も多いと思う。その技術的困難さを考えてみれば、今行われていることが分かるだろう。

またマイクロンテクノロジーなどが得意とするDRAMメモリーの方では、データセンタのニーズなどがより高速なメモリへと移り変わっていることから、現行のDRAM規格をひと世代前に進めようとしている。具体的にはDDR4からDDR5だ。なぜ高速化が必要かは後述する。

今現在、私のようなエンジニアでも何でもない単なる秋葉系オタクの門外漢でも、この程度のことを知っているとすると、優秀なエンジニアをたくさん抱えるクラウド・データセンタの人達が知らない訳がなく、世代交代若しくはより性能が優れたものが間も無く大量に生産出来るようになることを知りながら、現行品をバンバン買うだろうか?モデルチェンジ前の車を買うなら、大幅値引きを要求したりしないだろうか?今、データセンタの強い設備投資意欲とは別に、同時並行的に流れている引力はこうしたものだ。そしてこの部分の理解の違いが、米国のアナリスト達のあいだでのレーティングやターゲット・プライスの違いに出ているように思われる。だから前述の通り、フィラデルフィア半導体指数はNASDAQとは違う方向に動いてしまう。仮に「東京エレクトロンはチャンス!」みたいな考え方をするWSJ誌などがあってもだ。ただ設備投資意欲が高いのは確かだ。

ゲームが凄いことになってきた(マイクロソフト Flight Simulator)

今年の年末商戦にはPlaystation5とXboxと新しいゲームコンソールが市場に投入される。巣篭もり消費、Stay Homeの中で、間違いなく勝ち組に名を連ねたのがゲーム産業であろう。そのXboxを作るマイクロソフト(MSFT)が前作から何と14年振りに最新作の『Microsoft Flight Simulator 2020』を8月18日に市場投入した。Xbox向けより先行してWindows10仕様のパソコンで遊ぶものだ。

まずは下の動画を是非見て欲しい。同ゲームの歴史を振り返りながら、後半に最新版のデモ映像が提供されている。テクノロジーの進歩とはこういうことだよなということを思い出しながら見ていると、とてつも無く美しい画像の最新版デモ画像を見ることが出来る。

前作までとどこが一番違うかと言えば、マイクロソフトが『Microsoft Flight Simulator 2020』に自社のCloudシステムであるAzureを絡めたことである。従来、この手のゲームのデータはインストール時に必要なだけだった。仮にDVD数枚分、或いはCDR数十枚分になろうともだ。逆に言えばインストールしたデータだけで遊ぶことが前提だった。確かにネットワーク対戦ゲームや、同じ画面に他のプレイヤーのアバターが出るレベルまではまではある。ただ映像が精緻になって来ると、時々「ローディング中」という表示と共に、HDDやDVDから続きのデータが読み込まれ、そしてゲームが再開された。だが、今回のそれは常時インターネット経由でデータを受け取りようになった。ある意味ではクラウド・コンピューティングとエッジ・コンピューティングの組合せの良い参考事例と言える。

なぜ自社のCloudシステムであるAzureをこれに絡めたかと言えば、それこそがあり得ないぐらい綺麗な画像の中をフライトする為なのだが、2PB(ペタバイト)クラスのデータをAzureに導入して、フライト中に眼下に拡がる各地の風景は、マイクロソフトのBingがもつ衛星画像をもとに自動生成されるようになっている。代表的なランドマークとなるようなものについては、更に細かく予め作り込まれているものもあるが、基本的には眼下に広がる街並みをリアルタイムでAIが自動生成し、ネットワークを経由してパソコン若しくはXboxに飛んでくるシステムを構築する為だ。現地のリアルタイムの気象情報なども読み込んだり、フライト情報を読み込んでよりリアリティのあるレベルにすることも出来るらしい。

因みに、クラウドに導入された2PB(ペタバイト)とはどの程度の規模感かを考えてみよう。普通、手許にあるUSBメモリやSDカードの容量は128GBとか256GBだろう。大まかに計算すると256GB(ギガバイト)が4個で1TB(テラバイト)であり、その1TB(テラバイト)を1,000倍にして漸く1PB(ペタバイト)になる。なので2PB(ペタバイト)ということは、さらにその2倍ということになるので、256GB(ギガバイト)のUSBメモリを約8000個集めた分に相当するデータということになる。どれだけ莫大な規模か想像がつくだろうか?

簡単に256GBのUSBメモリと言ったが、iPhoneXの最大容量が256GBだ。たぶん多くの人が利用しているノートパソコンのSSDの容量がたぶん256GBだろう。デジカメが出始めの頃、SDカードの容量は4GBとか8GBで、徐々に16GBや32GBへと進化した。なので256GBでも相当量なのだが、その256GBのUSBメモリを8,000個必要な量だと言えばもう少しイメージしやすくなるだろうか。これこそが、今のゲームだということを感じて欲しい。

因みに、下記の図にあるのはこのゲームを遊ぶために必要なパソコンのスペック表で、左からミニマム・スペック、通常推奨、そして理想的な環境となる。私の書斎のパソコンだと、残念ながら理想的な環境に到達するには、GPUが貧弱だった。ただ、良く見て頂きたいのは、CPUやGPUは当然として、メモリの量が32GBとあり、たぶんこの水準の量を搭載しているパソコンを日常的に使っている人はかなり少ない筈だ。8GBの人が標準的ではないだろうか。そしてHDDの欄、150GBの容量とある。流石にパソコンのHDDならば150GBは搭載されているだろうが、1TBぐらいの容量のパソコンだと、他に動画などを持っていると150GBの空き容量が余裕で残っているかというと、案外厳しいかも知れない。そして理想的なスペックだと、SSDが要求されて150GBとある。これは多分相当ハードルが上がるだろう。通常のノートPCだと512GBのSSDが多いと思う。仮にその2倍の1TBのSSDだとしても前述の通りだ。

そして最後についにインターネットのスピード要求が示されるようになった。50MBは欲しいとする理想的な環境は、賃貸マンションなどの一本の光ファイバーを全戸でシェアするタイプのインターネットだと、WI-FIでなく有線接続で利用したとしても、居住者の利用が集中する時間帯の夜間などだと、やや物足りなくなるかも知れない。

 

クラウドを利用するゲームが示唆するもの

ゲームがプレイ中にクラウドのデータをリアルタイムで利用するといってもピンと来ない方は多いかも知れない。

少々想像のお手伝いをさせて頂く。このフライトシミュレーターの場合、実際に飛行機を操縦している感覚を味わえるため、飛行機のライセンスをもっているような本物のパイロットまでが嵌まってしまうゲームシリーズだったようだが、最新版は更なるリアリティを追究した結果、リアルタイムで変化して画面に映し出される空港、街並み、自然の風景などは予めパソコンの中にあるものではなくなった。都度つどマイクロソフトのクラウドサービスであるAzureからデータを引っ張り出している。Azureの方の作業は、今どの状態でフライトしているかの情報をリアルタイムで入手して、AzureのAIがBingのデータなどを元に自動育成した画像を送り返している。

考えてみて欲しいのはAzureがクラウドサービスである以上、物理的に何処にそのデータセンターがあるかは分からない。少なくとも自分の家ではない。そこにインターネットを介して現在のゲームの進行状況を報告し、その報告に従ってAzureのAIが、クラウドの中のデータストレージ(パソコンで言うならHDDやSSDに相当する場所)から必要なデータを取得して、加工して、そしてゲームユーザーに送り返す。それがリアルタイムで行われないと、飛行機を操縦している感覚などとてもリアルには味わえないというリクワイヤメントだということだ。つまり遅延があったら駄目だということだ。

まだブロードバンドという単語が日常的に聞かれた頃、動画サイトを観ると、登場人物の口元の動きと音声にずれが生じていることなどよくあったと思う。もし今でもそのネットワークなどの状態ならば、このゲームは成り立たないということだ。それだけのスペックの機器を取り揃えていないと、最新のクラウドサービスとしては話にならないということでもある。だからこそ、逆に言えばデータセンタ側も必死で設備投資を続けて、スペックを引き上げ続けているということだ。

一方で、パソコンにも相当負荷が掛かるということも見逃せない。「いや、私はメールと、アマゾンでのお買い物ぐらいしかしないから」と言われる人の現状にはもしかするとそれでも充分かも知れないが、少なくともこのゲームは遊べない。そして今後登場する医療関係のサービスや、或いはテレワークやオンライン講義などは、よりこちらの世界に入っていく為、徐々に高いスペックが要求されるようになるということだ。「部長の会議中の説明、プレゼン資料も野暮ったいし、音声が途切れる」などということになり兼ねない。

間違いなく、ハイスペックへの要求は高まるばかりだろう。

今週以降の注目の主要米国企業の決算

先週から米国企業の4-6月期の決算発表が本格化した。山のような数の企業が決算発表を行うが、インテルやマイクロソフトのように、中でも内容を知っておいて損はないと思われる企業と日程を下記にお知らせする。

※23日と思われたアマゾンドットコムが30日に変わったように、決算発表日は現時点で把握している予定であり、変更になる場合がある。

  • 8月24日 パロ アルト ネットワークス(PANW)
  • 8月25日 ベストバイ(BBY)
  • 8月27日 オクタ(OKTA)
  • 8月27日 VMウェア(VMW)

 

My favorite Companies List(株主となって所有したい企業のリスト)

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