欧州の再感染拡大、近づく米大統領選挙
スペイン、フランス、英国辺りの新規感染者数増加の兆候を毎朝のレポート(世界の新型コロナウイルス感染動向・国別データの分析)のショートコメント、或いは公式Facebookでお伝えするようになって3週間以上も経ってから世の中は騒ぎ始めた。これこそが地道に数字を記録し続けることのメリットだと私は確信している。以前にもお伝えしたが、「人間の脳」というAIは、スーパーコンピューターの「富岳」よりも私は凄いと思っている。勿論単純な作業の継続には「飽きる」というコマンドが働いてしまうという欠点はあるが、基本の演算能力は圧倒的にコンピューターの比ではない。
毎日、データを眺めて、それを手入力していると微妙な変化の兆しに不思議と気が付けるものだ。何もこれはCOVID-19の感染者データに関してのみではない。市場のデータなども同様に「なんか嫌な予感」がするとか、「なんかきな臭いなぁ」とか、刑事の勘みたいなものが不思議と身に着くから不思議だ。是非、皆さんもマーケット・データの手入力管理を毎朝のルーティンなどに取り入れられることをお薦めする。
日米各株式市場の先週の終値と週間騰落率

先週は兎に角復帰したトランプ大統領と民主党バイデン候補の話が市場を動かしたひとつの要因だ。当然その裏には共和党と民主党の景気対策協議がくっついている。また更に、テクノロジーの世界も話題が多かった。AMDがザイリンクスを買収するかも知れないというWSJ誌のスクープは「今現在、どれだけの技術革新が半導体業界で起きているのか」ということの、極めて端的な証拠だ。最近、最先端技術の話では、インテルの「イ」の字も聞かなくなった。一方で、嘗ては単なる半導体製造請負業のファンダリーなどと軽んじられていたTSMCなどが急激に話題を集めるようになってきた。その背景にあることこそ、半導体の世界の技術革新だ。これは何もパソコンや通信関係だけの話では無く、ロームなどが注力しているクルマの「パワー半導体」などの話も含んでいる。
忘れてならないのは遂に登場したiPhone12に搭載されたCPU、A14 Bionicが業界初の5nmの微細化技術で作られているということ。この水準の話を聞くと、前述のインテルの現状が寧ろ痛々しい感じもする。
この世界はちょっと勉強をさぼると直ぐに置いてきぼりになり易いが、今は正にその極致に近いのではないか。それでも久しくNASDAQに負けていたSOX(フィラデルフィア半導体指数)がナスダックに追いついた。それもナスダックが下落して降りてきたのではなく、共に上昇しながらもSOXが追いついたインプリケーションは大きい。下のチャートがそれを端的に表している。

欧州の再感染程度では急落の引き金にはならない
ただ上記先週の騰落率の表を見ると、先週が非常に面白いものでは無かったことが良く分かる。この状態を見ながら欧州の再感染拡大の話を聞くと再び弱気の虫が元気づくというのは理の当然だが、残念だがそんな単純に市場は下落するほど分かり易くはない。その最大の理由はボラティリティだ。日経平均のインプライド・ボラティリティも、米国S&P500のインプライド・ボラティリティであるVIX指数(恐怖指数)も、まだまだ30近い高値にある。株価が急落する時には、これらも急激に跳ねあがるものだが、現状水準から簡単にこれらを跳ね上げさせてまで株価を急落するほどにはエネルギーは無い。
ボラティリティ(予想変動率)とは、オプション価格の重要な決定要因であり、インプライド・ボラティリティは取引されているオプションの価格から逆算される。一方で、オプションの価格の歴史的な推移から計算して求める(変化率の標準偏差)ボラティリティをヒストリカル・ボラティリティと呼び、アプローチと利用目的が若干違ってくる。市場で強弱感が対立し、急落に備えようとオプションによるヘッジ需要(投機的なスペキュレーションではなく、ヘッジニーズ)が伸びて来ると、当然需給で価格が決まるオプションは値上がりしてくる。それだけの値段を払ってでも市場下落に対するヘッジを付けたいと思う投資家沢山居るという事だ。そして同時にインプライド・ボラティリティの上昇と言う数値を伴って市場が織り込んでいる予想変動率を教えてくれる。そのインプライド・ボラティリティの急騰は、市場の大きな変動を予想していることは経験則としても、理論的も、どちらでも証明されているが、果たしてその具体的な数値(VIX指数がどのように変動したら、その後の市場にどういった変化が起きたかと言う定量的な相関関係)についてを検証したことは無い。感覚として、その数値自体にはあまり意味が見いだせないので、無駄かなと判断しているからだ。
ただインプライド・ボラティリティが高まる程にオプションの取引が行われているという事は、それだけ強弱感が拮抗しているということだ。だから「上がったらもう売ろう」と思っている人も多ければ、逆に「下がったら買おう」と思っている人も多い。売り買いの相場観の強弱が高いレベルで拮抗している。だからここから再び大きな急落は急には多分起こり難い。再びVIX指数が10の前半代まで低下したら、やや注意を要するが。
まず下が米国市場S&P500とVIX指数のチャート。ここから3月下旬に向かっての様に、株価が急落して再びVIX指数が80を超えるようなことになるには、随分と市場は既に身構えているから、そうはならないだろうという読みだ。現時点では27.41だ。

それでも米国市場がクシャミをすると日本市場は風邪をひくと言われるが、前回不意を突かれて飛び跳ねた時の様の水準に比べるとやはり10は高いままにある。ボケっと突っ立っている人の背後にそーっと近づいて「ワッ!」と脅かすと飛びあがるが、驚かされると身構えている人にその手は通じない。正にその状態が今だと言える。

ただ日経平均株価はNT倍率が上昇しているので、その程度の調整は入ってもおかしくない。ただ、日経平均株価は値嵩株の影響力が高く、重厚長大産業の3桁銘柄の動きは殆ど指数を動かさない。値嵩株ほど正に今の旬どころが多いこともあり、NT倍率が居所を変えたというのは充分に考えられる。NT倍率が仮に14倍程度まで低下すれば、日経平均株価は軽く1,000円程度は居場所を変えることだけは気に留めておいて損はないと思う。

日本市場の売買代金が減少しているのは、不透明要因が多いと捉えて動けないこと。そして・・・・・。
先週の日本市場の売買代金は一度も2兆円台に載せることなく。1兆7,500億円程度から1兆9,500億円程度の間を推移した。2兆円割れが続いたのは久し振りである。一般論としてよく言われる閑散商いの理由は、不透明要因が多くて、市場参加者も動くに動けないという理由だ。だが実際には10月第2週辺りだともうひとつ大きな理由がある。それは機関投資家は年金基金への運用報告の準備等で忙しく、市場で売買している手間が無いということ。笑い話に思われるかも知れないが、事実、4半期決算報告と上期の総括、そして下期の見通しと運用方針をそれらしく作り上げるのは、かなり手間暇の掛かる作業だと言える。仲間内で「今マーケットなんて見ている余裕ないよ」という会話はよく聞かれるものだ。
どうやらトランプ大統領は本当に回復出来たようだ。民主党バイデン候補危うし。
民主党バイデン候補が次期大統領に当選したら、一旦は株価は嫌気するだろう。何せ、かなりな増税をしないとならない政策を提唱しているからだ。企業からも絞り上げるようだから、株価は黙ってはいられないだろう。また米国の財政状態は更に厳しいものになる。経済対策の規模を増やすだろうし、その為の財源確保として増税も全く辞さない方針であり、金利上昇は否めない。その場合、どうやってFRBの政策と辻褄を合わせるのかは見てみないと分からない。
もうひとつ気になる点は、民主党バイデン候補が当選した場合の対中政策だ。「バイデン候補も中々厳しく中国には接するだろう」と言われてもいるが、今ここで民主党が政権を取れば、当然オバマ政権時代同様に国防予算の引下げが始まる筈だ。米軍の圧倒的なプレゼンスが低下したのは、その国防予算の削減、軍人の削減、新造船や新規兵力の拡充を中止したことによるのは有名な話。軍人も空母も足りなければ、ローテーションも効かなくなり、兵員のやり繰りに相当米軍幹部は苦労した。その証左が過労から注意力散漫を起こし、相次いで軍艦が衝突事故を起こしたことは記憶に新しい。
一方の中国は、習近平国家主席は何とか権力維持をしようとしていることから、東シナ海を中心に軍拡には余念がない。弱くなる米軍と強くなる中国軍、そのハザマで一番苦労するのは日本だろう。
ただ私はCOVID-19から生還した現職のトランプ大統領が結局は最後に巻き返して当選するだろうと思っている。生きて帰ってきたことのインプリケーションは大きい。また私は報道されている多くの世論調査やニュースを信じていない。
注目の右肩上がりのビジネス・トレンドとトピックス
クルマのCASE、取り分け「C」のConective(繋がる)は消費者の更なる離反を招くかも知れない
トヨタ自動車のG-BOOKというサービスをご存知だろうか?ご存知ない方も多いと思うので、説明のためのWebページをまず下記にご案内する。
要するに、クルマに乗るとスマホがBluetoothで自動的にハンズフリーシステムに繋がり、或いはクルマ自体に搭載してあるDCM(DATA Communication Module)がクルマをオペレーターやインターネットに繋げる(Conective)サービスのこと。便利なのは走行中の目的地の設定。通常は運転している時にカーナビに目的地の設定は出来ない。だがG-BOOKのオペレーターにワンタッチで電話が出来て、行きたい場所を伝えるとセンターから自車のカーナビに目的地を設定してくれる。具体的にピンポイントの住所などを指定しないでも、例えば「東京スカイツリー」などでも良いし、もっと曖昧に「この辺りで美味しいイタリアン料理のレストラン、もちろん駐車場のあるお店を探して目的地設定してください」と伝えれば、幾つか候補を調べてくれて、選択肢をまず教えてくれる。そして興味のあるところをチョイスしたら目的地に設定してくれる。以前、家内と日光からの帰りに宇都宮の表示を見た途端、どうしても宇都宮餃子が食べたくなり、「餃子の美味しいお店でクルマを止められるところをお願いします」と頼んで、とても満足して帰ってきたこともある。今にこれは音声認識機能を持ったAIに代わると思うけれど・・・・。
また、カーナビの地図も新しい地図データがZENRINなどで更新されるとアイコンが表示され、自動でアップデートしながら常に最新の地図にすることが出来る。圏央道や伊豆縦貫道などの開通に追いついていないと、やたら遠回りをさせられたりするが、そんな不便さは全く無くなった。
更に加えて安心機能として「ヘルプネット」というサービスがある。もしエアバッグ連動タイプのDCM装着車の場合ならば、通報ボタンによる手動通報に加えて、エアバッグが作動した時、すなわちそれなりな事故を起こした時、自動的に緊急信号がセンターに通報される。緊急通報機能が起動すると、車載システムはヘルプネットセンターに、車両位置、直前までの状況など「緊急情報」を瞬時に送信する。つまりドライバーが事故を起こして意識不明になった場合に、クルマが自動的に「HELP」という通報を、意識を失っているドライバーに代わって位置情報と共に通報してくれるというシステムだ。
実は当初これらのシステムはメルセデスベンツ・ベンツ・ジャパンが2000年前後から導入してSクラスやSLクラスに提供していたサービスだったが、恐らく採算の問題から、その全事業をトヨタ自動車が買い取った。メルセデスの場合は登録時に掛かり付けの主治医の連絡先や血液型、既往歴や薬のアレルギーまで登録させられたことを覚えているが、トヨタになってからはサービス内容が膨らんだ代わりに、そこまでは不要になった。ただ非常に便利なものであり、これがクルマのCASEの「C」に大きな期待を掛けている理由のひとつだ。量産されるようになれば、低価格車でも標準装備化されるだろうから。
更にこれからのクルマの「C」の意味には、自動運転時代を見据えて、車車間通信や路車間通信などV2X通信に大きな意味がある。だがこうしたユーザーフレンドリーなドライバー・アシスト機能も非常にユーザーとしては便利だ。
自動車のモデルチェンジサイクルやライフサイクルと、ITの技術革新サイクルのミスマッチで数年で使えなくなる
実はこの便利なG-BOOKサービスだが、2022年3月31日で利用出来なくなる。その案内はDMでも来たが、Web上でも確認することが出来る。内容を見て、ご迷惑をお掛けしますというニュアンスを感じられないのが何とも釈然としないのだが、出来ればWebサイトを開いて、どんなサービスかを確認して貰えると、今後の話も進め易くなる。
感情的には物凄い驚きをもって確認したのだが、上記の図にあるように、前述した便利で安全な機能が全て使えなくなる。その理由は「G-BOOKのシステム老朽化に伴い、サービスの維持管理が困難となったため」だそうだ。もうクルマが事故を起こして横転しても、クルマは何もしてくれない。勿論、クルマ自体が相当クラッシックな場合にはこうした対応もあり得るとも思われるが、驚いた(トヨタ自動車に確認しました)のは、2018年まで生産されていた先代のクラウンでさえも、その装備が一切使えなくなるという。2018年と言えば、2年前だ。恐らく消費者の側から見たら、このG-BOOKに関わる部品代すら償却出来ていないタイミングで、ただの文鎮となってしまう。
もうひとつ同様なサービスで「T-Connect DCMパッケージ」というのがあるだが、こちらが廃止になる理由は「KDDI社の3G通信の終了に伴い、お客様がご利用中のT-Connectサービスにつきましては、2022年3月31日をもちまして終了となります。」だそうだ。KDDIにトヨタは13%近く出資しており、また関連会社のデンソーが携帯電話を作っていた歴史もあることを踏まえれば、当然にしてKDDIがいつのタイミングで3G通信を終了するかは知っていた筈。新車販売時に営業マンは「この便利機能は22年3月いっぱいで使えなくなります」と説明したのだろうか?また、どうしてその後の4Gに対応出来るようにする設計をしていなかったのか、実に不思議な話である。
後者3Gについてはインフラである通信技術の進歩は止められないので、DCMの取り換えが可能に出来るように設計しておくなどの方法が考えられる。前者は単純にトヨタが責任を持ってシステムの更新をすれば良い筈だ。平均使用年数が13年もあるのがクルマなのだから。原価管理に厳しいトヨタは顧客を切り捨てる判断をした以外の説明はつかない。
ただ今回のこの事例は、これからの自動運転に使われるV2X(車車間通信や路車間通信)通信の将来を考えた時、大きな問題になる可能性を孕んでいる気がする。それも、世界一(株価の時価総額ではない)の自動車メーカーであるトヨタの経営判断という前例になるのだから。
クルマのライフサイクルと、IT技術のライフサイクルの食い違いが進歩を遅らすかもしれない
前回、半導体FPGAの説明記事(「FPGA(ザイリンクスなど)がこの先こそ必要な簡単な理由」)でクルマの平均使用年数の話をさせて頂いた。引用すると「平成30年3月末の乗用車(軽自動車を除く)の平均使用年数は13.24年」という「一般財団法人 自動車検査登録情報協会」が発表した数字だ。だからADASの頭脳として使われる半導体は、新車が工場をラインアウトした後でもプログラムを書き換えることが出来るFPGAが重用されるようになるという内容をお伝えした。
だが上記の例を見ると、もしかすると通信機能がこの条件を満たさない可能性が高いかも知れない。最近の別の調査では、、新車でクルマを買った当初ユーザーが次のクルマに買い替えるまでの平均使用年数は6年超だという。丁度3度目の車検が意識され始める頃に考えるようだ。だがその初代オーナーに手放された6年や7年目のクルマも、まだまだ中古車として現役として当然再販されて路上に出て来る。もっと言ってしまえば、恐らく日本での平均使用年数の13.24年が経って、仮に日本で廃車になったとしても、かなりの比率の中古車がまだ発展途上国などへ輸出されて現役で走り回り続ける。ロシアのシベリアなどでは、日本の4輪駆動車の中古車は飛ぶように売れるという。
ご記憶にあるだろうか?2008年にiPhoneが初めて日本にお目見えした時、その名前は「iPhone 3G」と呼ばれたことを。だから2010年頃のクルマのDCMなどは普通に3G対応で、この通信サービスは間も無くなくなる。だとすると、2020年現在、5Gに対応していないDCMを搭載したクルマを新車で買っても安全・便利機能の永続性は大丈夫なのかというシンプルな疑問が湧いてくる。なにせiPhoneの5Gも発表になり、そう遠からずメインは5Gになるだろう。また仮に、5Gに対応したクルマと装備だったとして、ならば6G、7Gの時代にはどうなるのかという疑問も湧いてくる。2018年に新車だったクラウンの装備が使えなくなることを考えると、安易に初代ユーザーがクルマを買い替えるまでは大丈夫だろうとは言い切れない。更に、Huaweiの特許の問題で、米国を中心に6Gの開発を急ぐ気配も濃厚だが、既にNTTドコモは2030年頃の6G提供開始を公言している。その時、Huaweiの特許技術で固められた5GのDCMは対応出来るのだろうか。寧ろHuaweiの特許から離れたいが故の6G開発の焦りなので、互換性はかなり落ちるような気がしなくもない。
今現在の「Conectiveサービス」ならば、目的地の設定はクルマを左に寄せて止めてから、自分でやれば良い。仮に瀕死の重傷になる事故を起こしたとしても、何とかポケットからスマホを取り出して119番に助けを求めれば良い(悪い冗談)。だが自動運転に関わる通信機能については、そうはいかない。路車間通信や車車間通信が出来なくなったら自動運転そのものが機能しなくなる。当然、今後はその為にも次世代DCMModuleに本体自体を取り換えるなどの対応が出来るようにするのだと思うが、今後はクルマを買い替える時、新車へのモデルチェンジ・サイクルのみならず、この先もIT技術の革新にそのモデルがついて行けるように、どこまでを見越してシステムが設計開発・作り込みがなされているのか、そのサイクルの方も重要な検討ポイントになってきたという事かも知れない。
トヨタ自動車は新車を長く乗り続けるユーザーを切り捨てる経営判断を行った
トヨタ自動車のG-BOOK廃止は苦渋の経営判断だったと言うのかも知れないが、消費者側の目線で見ると、単純に「消費者・ユーザーを切り捨てた」としか見えない。本当はモリカケ問題の蒸し返しなどより、こういうことを消費者保護の観点から国会などでも取上げて欲しいものだが、期待するのは無理であろう。私は正直なところ、かなりトヨタ自動車の考え方に失望した。あれだけ派手に社長の豊田章男氏が自らCASEについて宣伝しているにもかかわらず、これはどう弁解しても消費者を蔑ろにしたビジネス判断と言わざるを得ないだろう。何らかの救済策が出ないのであれば、トヨタの本音が現れたということなのかも知れない。だから私はトヨタはMF10Cにも採用しなかったし、現在のMFCLにも含めていない。
余談:日本の自動車メーカーとESG投資。実は環境負荷に関しては国を挙げて不合格かも知れない。
ご承知の通り、最近はESG投資というのが一種の流行り言葉になっているが、私はESG投資のスコアラーや、担当のファンドマネージャーに日本の自動車メーカーはESGの観点、取り分けEの観点で合格なのか、不合格なのか聞いてみたいと思っている。
確かに日産はEVを作っているし、トヨタはHVやPHVで先駆したが、そもそも火力発電のウェイトを掛けているこの国で、生産段階からクルマのライスサイクル終了の13.24年を本当にゼロエミッションに出来るのかという点がひとつ。もうひとつは、前述の例も含めて、古いものを大切に長く使うという文化が乏しいこの国で、本当に環境負荷についてESGの観点でOKが出せるのかということだ。
ひとつには日本の税制が挙げられる。ご存知かも知れないが、自動車の平均使用年数(新規登録から廃車まで)が13.24年のこの国で、自動車税が13年目から15%引き上げられる。その意図は「13年も経ったら、早く最新のエコカー減税対象車に買い替えろ」ということらしい。だが日本における電力発電の中で、石油、石炭、天然ガスによる火力発電が8割以上を占めている。電気自動車(EV)は単体で見れば確かに温暖化ガスは発生させないが、そもそも発電所の段階でバンバンCO2を排出している。だから電気を上流まで考えた時、EVを作っているからということでESGのEが単純に◎ということにはならないだろう。逆に言えば、そこまで考えずに◎をつけているESG投資が多いのが現実なのだが。
当然のことながら、クルマは生産する時にも相当に電力を消費する。また最終的には燃やすしかない素材(リサイクル不能)で作られている部品もかなりな数に及ぶ。クルマの「CASE」が進めば進む程、電気・電子部品の利用は増え、その為に必要なレアメタルの量もうなぎ登りになる。一般的に、レアメタルは露天掘りをされることが多く、所謂環境破壊への貢献大だ。地球温暖化だけを考えたとしても、年々厳しくしてきた排出ガス規制を考えると、13年前のクルマを現状で単純にHV(ハイブリッド車)に買い替えることが本当にエコなのかどうか、その辺りは誰も証明していない。
もうひとつ小ネタを紹介しておこう。
これは全くの私事なのだが、私がスキューバダイビングに行く為に利用しているトヨタ・アルファードは既に新車で購入してから14年目に入った高齢車だ。濡れたままの器材を積まないとならない時もあるし、海にいる間は潮風に当てたままだ。また2人の子供がクルマを運転するようになり、ぶつけても安全なクルマという意味で、どこも故障が無いので今でも愛用している。流石トヨタの当時の最高級ワンボックスカーだけあって、フル装備で、何一つ故障もなく、オマケに四輪駆動。なかなか手放す気にはならない。
それが先日些細なことで、ドアミラーについているウインカーランプのクリスタル部分のプラスティックが破損した。長ーい付き合いのトヨタのディーラーに相談すると、なんと部品がもう手に入らないという。しかもヒビが入ったままだと「重要保安部品」に該当するので車検が取れなくなるとも言う。製造物責任法では引き渡し後10年間までは製造物の責任を負うことになっているが、その期間は過ぎている。しかし、日本における自動車の平均使用年数ドンピシャリのクルマの部品、重要保安部品が手に入らないとはどういうことなのだろうかと訝しんでしまう。ちょうどそんな時、G-BOOKの話にも出くわした。
アルファードのドアミラーみついては、Yahooオークションで買って、自分でDIYで交換作業を行った。そうしたルートで購入した部品をディーラーは作業だけでも受け付けてくれないからだ。下の写真が、損傷部分と交換作業風景。この程度の作業ならば、実はものの15分もあれば終わる簡単な作業なので、ディーラーにそもそも頼む必要もないのだが・・・・。

トヨタ自動車(7203)は好きな会社だ。だが最近、段々と愛情が薄れていくのを感じている。それは同社社員から聞く話もアクセラレーターになっている。それは豊田章男社長が言う「トヨタは潰れない」とぬるま湯に浸かった気分でいる社員の危機感の無さの表れかもしれない。消費者の好みは移ろい易いということを同社は忘れてしまったのかも知れない。
My favorite Companies List(株主となって所有したい企業のリスト)
下記のリンクよりMFCLのページを開いてください。「アップデート」の日付が更新されている銘柄については、個別銘柄コメントにお伝えしたい重要なニュースを書き加えております。
MFCLのページを別仕立てとしたことで、週に一度ではなく、随時アップデートがあればページを更新しています。トップページで更新状況は確認出来ます。



