サンクスギビングの後、米国の消費や小売りの状況が見えて来る
米国ではサンクスギビングからホリデーシーズンの売上が年間の2/3を占めるとも言われている
今週の株式市場は随分ともたついた感じがする。実際、下表が示す通り、6つのインデックスの半分が騰落率がマイナスだ。面白いのは、日経平均株価が+0.56%のところ、TOPIXが3倍とは言わないまでも+1.42%も上昇している。後述するが、これが多少NT倍率の歪みを訂正してくれた。バリュー株にシフトしていると聞くこともあるが(私は同意しない)、何故バリュー株ではないNASDAQだけが米国では上昇しているのか、その辺りもきちんと確認しておこう。米国大統領選の結果混迷は、やはり米国を二分する危険をかなり孕み始めたと言える。あれだけトランプ大統領も結果に文句を言うのはそれなりな何かがあるのだろう。また、歴代現職大統領としては最多の得票というのもこの選挙が今後の米国に影を落とす。そしてバイデン候補は78歳の最高齢米国大統領候補となった。
日米各株式市場の先週の終値と週間騰落率

その一方で、相変わらず元気が良いのが技術開発の世界だ。誤解無きよう、株価の話とは別に、技術開発自体のことだ。これは必ず、株価に今後好材料として取り込まれていく筈だ。
NASDAQ市場で起きているのはバリュー株シフトではなく、半導体が出遅れていることへの気づき
直近までの市場を支えてきたのGAFAなどと十把一絡げに呼ばれる、米国株式市場の時価総額トップ4社の動きだ。でも考えてみて欲しい。Google(本来はAlphabet)、Amazon.com、Facebook、Appleという4社のビジネスモデルの違い、やっていることの違いをだ。確かに、GoogleはGoogle Cloud、Amazon.comはAWS、AppleはiCloudとクラウドサービスを展開しているが、Amazon.comのAWSとそれ以外とは真正面から比較するのはあまりに気の毒だ。規模が違い過ぎる。各社、伝統的な本業の他にあれこれと手を出してはいるが、基本的にはGoogleは検索エンジンの会社、Amazon.comは言うまでもなくe-commerceの会社、FacebookはSNS、AppleはiPhone/iPadの会社だ。これらがいつまでも同じように居られるわけがない。
だがら「GAFA」などと十把一絡げにメディアや、一部の何でも語れるコメンテーターは話をするが、全くの別物と是非再認識して欲しい。株価のパフォーマンスも全然違うのだから。下にその証拠をお見せする。これはGAFA+マイクロソフト、その5銘柄の対ナスダックの相対パフォーマンス比較をしているものだ。

ご覧頂けるように、8月末ぐらいまでは赤のAmazon.comと青のAppleがNASDAQを牽引している。Facebookは多少頑張ろうという姿勢は見えるが、実質役に立たず、足許では足を引っ張っている。そしてGoogleは何の役にも立っていないか、寧ろ足を引っ張っている。だから少なくとも9月以降の相場の主役にGAFAはなっていない。ならば何が頑張ったのだろうか?

このチャートは、ナスダック総合指数とフィラデルフィア半導体指数を比較したものだ。ずっと対タイナスダックでだらしない展開となっていたフィラデルフィア半導体指数だが、7-9月期の決算発表が始まると、徐々に息を吹き返し、ついにはナスダック総合指数を上回る勢いとなった。その中身を示す一つのチャートをお見せする。

真中の黒線が現すナスダック総合の下に久しく右肩下がりでぶら下がっているのが、ザリンクス、インテル、マイクロンテクノロジー そしてウェスタンデジタルだ。AMDは一時火を噴く勢いで上昇したが、その後は横並び一線である。その前者4銘柄が8月31日以降程度から、徐々に右肩上がりになっている。ただし決算発表後のインテルは再度奈落に向かっている感じがしなくもない。
フィラデルフィア半導体指数は純粋に「半導体株」だけではなく、半導体製造装置メーカーであるアプライド・マテリアルズなども含まれている。それら半導体製造装置メーカーの決算発表もあり、そもそも半導体こそが重要だと思っていた考えを肯定する7-9月期決算発表などを受けて、現在非常に調子が良い。そしてこれらは決してバリュー株では無い。若しくは、バリュー株の定義を知らずに使われていることばだ。
Amazonが始めた調剤・薬ビジネスのインパクト
米国に行くと必ず立ち寄るのがWalgreenなどのドラッグストア。その品数の多さと言ったら日本の同業の比では無い。ブラブラ見ているだけでも楽しめるのだが、必ず店の奥に調剤薬局のコーナーがある。だが遂にAmazonがこの分野にも切り込んだ。これはリアルなドラッグストアにとってはかなりな脅威に違いない。同時にAmazonはPrime会員には値下げを含めてデリバリーを開始する。コロナ禍で外出がままならず、持病の薬や日常薬の入手に困っていた人にとっては極めて朗報であり、同時にドラッグストアで購入していたような生活必需品の類も購入するようになると見る。新型コロナウイルス・COVID-19の感染拡大が続く限り、Amazon.comにとっては風がフォローに吹くことはあっても、ネガティブな風にはならないだろう。
SoftBank World 2020は必見
今月初めから行われた「SoftBank World 2020」のアーカイブ視聴が可能になった。今後の投資を上手にする上では、皆さんにも是非見て頂きたい。私もまだ沢山ある動画を全部は見切れていないのだが、孫会長とエヌビディアのJansen CEOの対談だけでも300%見る価値がある。エヌビディアも独自にGTOを開催したが、それとは別に二人が夢と達成してきたこと、そしてこれからの世界について語っている。正直、私でも目から鱗が何枚か落ちた。ひとつはAIの現状と近未来だ。二人の対談は英語だが、ちゃんと字幕も入っているので問題ない。下の図をクリックして貰えば、参加ページへとジャンプするので、登録してお楽しみいただきたい。
何が分かるかと言えば、「AIの今と、これからの正しい認識」。エヌビディアは言わずと知れたGPUの会社だが、今やエヌビディアのGPUを抜きにしてAIは語れない。自動運転もそう。更にそこにソフトバンクグループのARMが加わる。これは世界で最多のCPUを配布している企業でもある。それがエッジAIを支えて、クラウドAIのエヌビディアのGPUを連携する。その辺りの話が非常に分り易く解説されている。それも実業の最先端にいる張本人の口からだ。どんな優秀なアナリストのコメントよりも、これが真実だから。
為替の見立て方って、こんな適当な方法で良いの?でも、ある意味業界実態なんだけど。
話は変わるが、某大手証券会社のチーフ為替ストラテジストが従来の2021年末までの予想レンジは1ドル=102円台─112円台から100円台─110円台に引き下げた、らしい。なぜ「らしい」とつけたかというと、正直、いつも為替屋さんの言う事は気にかけていないからだ。だから「らしい」とつけた。たまたま「大島さん、これどう思う?」と聞かれる機会があって、このコメントを知った次第。ただ、正直このレベルの分析(これを分析というかも疑わしい)で為替屋さんは良いのかぁ、と正直困惑すること仕切り。テレビでコメントしている為替関係の人達のコメントも、いつも順張りで方向感が一定しないから、気にしたことがない。
今回、何故この人を柄にもなく取り上げたかと言えば、その変更理由をふたつを聞いて、「ほんまかいな」と思ったからだ。その二つをご紹介しよう。
「第1に、10月21日に現われた日足の大陰線を境に、チャートの見た目が悪くなった。」からという。
見た目が悪いというのは、恐らく親しみ易いようにテクニカル分析の能書きを省いたものとは思うが、それにしても、過去何度かあった105円割れはそれらとは違うと言い、これといった背景が見当たらないのに、「ドル人民元の下落」、「ポンドドルの急騰」などをにらみながら突然1円以上も急落したのは「見た目が悪い」のが最大の理由だという。長年の経験から言えば、為替市場の人は「具体的な理由が無い」と思い込むと、チャートに逃げる。一目均衡表の雲の説明などを延々をする時があるが、それで市場が読めるのならば、○○でも出来るだろう。そして多くの場合、その後にきちんと理由が明らかになるから不思議だ。
「第2に、そのような状況だったにも関わらず、政府の対応が後手に回った。」からという。
日本の政権交代がこの後手に回る結果を招いたとしているが、為替は財務省マター、若しくは日銀の仕事であって、官邸の仕事ではない。勿論、意見の擦り合わせとかあるだろうが・・・・・。それが官邸が携帯料金の値下げ、役所のハンコ廃止、日本学術会議の人事などにかまけていたせいで「円高アラート」の空白地帯が出来てしまったというのは、かなり論理の飛躍を見た感じだ。
ただ確かに対ドルで円高になっているのは確かだ。対ポンドは円安で9月10月は135-136円程度だったが、11月11日は140円台を付けている。その答えは寧ろ、米国金利の動向に求める方が妥当だ。従来、3か月金利と6か月金利は概ねいつも一緒だったが、足許でやや低下し、先週からだけで3カ月物が0.09%から0.06%へ、6カ月物が0.10%から0.08%に低下している。長期金利もそれにつれて動いているが、FFレートに近い短い期間の期間の低下は債券市場が何かのシグナルを発しているのかも知れない。下記のイールドカーブチャートは11月10日と11月20日の比較である。

答えは米国経済の再失速を抑止しようというFRBの次のアクションだ。その流れならば、今の円高の流れは説明し得る。確かに大統領選挙の結果が未だに不透明であり、政権移行がスムーズに出来る感じがなくなり、その間に米国メディアのトーンにも若干の変化(バイデン新大統領が最高!というレベルから、過去の粗探しがはじまってきた)がある。そしてホワイトハウスは半ばレイムダックになっている。にもかかわらず、新型コロナウイルス・COVID-19の感染者は死亡者と共に増え続けている。冷静に見れば欧米よりも日本は安全な国。金利水準から言っても、そうした目線で見ても、円が多少買われてもおかしくはない。
暴落を気にされる向きもあるが、まず可能性は低い
先週、「暴落はしないですよね?」と何人かの人に聞かれた。当然水晶玉も持っていないし、神様でも無いので断定的なことは言えないが、今の状況は暴落を示唆するような兆候はない。例えば、先週もチャートお見せしたNT倍率だが、歪みは多少なりとも修正された。日経平均株価とTOPIXの騰落率にこれほど乖離があるのはその修正が行われたからだ。恐らく多くの投資家が「日経平均の動きとポートフォリオの損益が重ならないね。下げても実感が無い」となっているであろう理由は、これだ。赤いラインのNT倍率が下がって、日経平均も下がっているのに、緑のTOPIXは上昇している。

もうひとつの根拠はいつものボラティリティと株価との負の相関関係を示すチャート。今週は日経平均のそれを掲示する。日経平均株価が急騰した時にボラティリティが大きくは低下せず、22程度で留まった。これが15を割れるところまで下がっていたとしたら、警戒感をもつ必要もあったかも知れないが、ヒストリカルボラティリティの方もまだ充分に高い。

メディアの論調は当てにしては駄目。米国は今完全に二分されている。
日本のみならず、米国のメディアもどうも今回の大統領選挙ではおかしな動きをしている。日本ほどでは無いにしろ、偏向報道の指摘をされても仕方が無いだろう。事実、民主党のバイデン前副大統領の得票数は史上最多の7500万票台に達し、一方で共和党のトランプ大統領も7100万票台を獲得している。これは2008年のオバマ前大統領(6949万票)を上回った数字だ。また地図的にも見て、明確に2分されている。結果は覆らないかも知れないが、徐々にではあるがバイデン候補の粗探しも始まりつつある。それは、下図でも明らかな通り、真中と両サイドで青と赤が分かれているからだ。日本のメディアで聞こえてくるのは民主党寄りの報道ばかり。つまり青い地域の状態のみで、赤い地域の話は殆ど報じられない。皆無に近い。だが、バイデン候補が大統領候補として適切なほどにクリーンな政治家であったかは疑わし部分が沢山あり、事実徐々に露見しつつある。またウォールストリートジャーナル誌なども、社説で認知症に関しての検査結果を公表すべきだと訴えている。まだまだこの続きはあると見る方が賢明だと思われる。

注目の右肩上がりのビジネス・トレンドとトピックス
AIは遂にコンピュータ・プログラムを書けるようになった
私も「SoftBank World 2020」を見て、自分の現状のAIに対する認識を更に進めないとならないと実感したひとり。そのひとつが下記の画面。特に字幕スーパーに注目して欲しい。これは孫さんがエヌビディアのJansen CEOに向かってコメントしているシーンだが、字幕には「しかし今コンピュータ自身がソフトウェアを書けるのです」とコメントしている。英語では「CODING」と言っているので、一般の人が考える「ソフトウェアを描ける」、つまり「プログラムが書ける」というのとは少々ニュアンスが違うのだが、その後のJansen CEOのフォローで、もう少しいろいろなことが見えて来る。

Jansen CEOは「人間の創造性とは未だに比類のないもので、独自のアイデアを思いつく能力に掛けては人間に並ぶものはありません。機械は全く真似できません」とフォローしていえる。ただ、人間には出来ない、限りなく膨大なデータのを瞬時に読み取り、それを解析処理して次の推論を立てることが、AIには出来る。
これは実に面白い。恐らく言いたい事は、「無から有」をつくることは人間にしか出来ないが、それを膨大な量のデータで、それも音声認識や画像認識も伴って収集した膨大なデータを瞬時に処理する、或いは処理出来るようにCODINGを行うことが可能で、だからAIは日々進化することが出来るというこだろう。
ここで思いつくのがよく言われている「データ量の爆発的膨張」だ。二人のトークの中でも、インターネットは世界中の英知をため込んで、それを検索するという流れで発展してきたが、既にネット上の全てのデータを検索することは不可能になっている。つまりそれだけデータ量が爆発しているという事。さて、そのデータは、何処で、何に、どのようにストレージされているのだろうか?
それについては、ウェスタンデジタルについて調べていて、ある答えをみつけた。
DNA データ・ストレージ
Twist Bioscience(TWST)、Illumina (ILMN) and Western Digital (WDC) は Microsoft (MSFT)と組んで、新しくDNAデータ・ストレージという世界を掘り下げるという。2024年までには、全てのデジタルデータの30%がDNAストレージに出来るかどうかをトライアルを行うという。
DNAデータ・ストレージとは、勿論、あの生物学のDNAのことで、現在2進法の0か1で処理されているバイナリ・コンピューティングという世界を、DNAのデータの保持方法、A、C、T、Gの4つのキーを使った螺旋階段上のものに置き換えるというものだ。DNAストレージという考え方自体は昨日今日のものではないのだが、現時点で存在しているものは、とてつもなく高価なものになる。
ただこれ「DNAデータストレージ」と検索するだけで、出て来るは、出て来るは、もうだいぶいろいろな研究が進んでいるように思われる。因みに下の図はマイクロンテクノロジー社(MU)のWebサイトにあったもの。彼らもまた独自に研究しているようだ。この図を見れば、だいたいそのイメージが掴めるのではないだろうか。

データの爆発が、半導体に使うシリコンを2040年までに枯渇させるという仮説もある
マイクロンテクノロジーのWebサイトに寄れば、「5年前の時点では、デジタル技術によってそれまでに生み出されたデータ量を合計すると4.4ゼタバイト(ZB)でした。これは、44垓バイトにも相当する非常に大量の情報です。今日、情報量はその数字をさらに上回っています。現在、私たちは約16ゼタバイトを毎年作り出しており、2025年までにはこの数字が10倍に膨れ上がることが予想されています。
私たちはそれらのデータを、砂に含まれるシリコンを主な原料としたマイクロチップを用いて収集、処理し、格納します。シリコンは、地殻のなかで2番目に豊富な元素であるものの、多くの種類のコンピュータチップ製造に必要な類の、純粋な形態のシリコン自体は希少で、総シリコン供給量における割合は、10%未満となっています。
私たちはそれを速いスピードで使い切ろうとしているのです。このデータの氾濫によって、コンピュータに用いられるシリコンは2040年までに世界の供給を枯渇させるかもしれないと、ある研究が指摘しており、新しい技術とデジタルの進歩に対する大きな課題となっています。」とまで言う。
そんな事態を避ける方法のひとつとして、このDNAの考え方を利用しようというのがDNAデータ・ストレージだ。マイクロソフトが先陣を切って研究している分野のようだが、これにウェスタンデジタル社などが加わった。DNAはわずか1グラムで215ペタバイトのデータを何千年も保持することが可能で、DNAが長期データ保存における次の大きな1歩になり得るとマイクロソフトは考えている。もしもこのテクノロジが実を結べば、世界で増え続けるデータの保存に必要なスペースが大幅に削減されるはずだ。
お伽噺が現実化してきたのがテクノロジーの世界の歴史だ
ただ今はまだ御伽噺のようにしか聞こえない話だが、振り返って考えて貰いたい。大きな5インチのフロッピーディスクにデータを貯めていた時代は1980年代後半に普通に存在した。それが3.5インチとなり革命的に広まったと言われた。今、だれがフロッピーディスクなど使うだろう。そもそも、今の若い人達の多くは存在すら知らないかも知れない。
その後ハードディスクが登場するが、確か私が最初に1990年台に触れたハードディスクの容量は3.5インチドライブで20MBとか、そんな小さな容量のものだった。
それが2.5インチが登場し、1インチが登場しと、小型化の機種も増える一方で、容量も今では18TB(テラバイト)が量産され始めている。
IBMが開発した、1インチのマイクロドライブの登場が、初代iPodの搭乗を促したが、その後、NAND型フラッシュメモリーと呼ばれる不揮発性のメモリー半導体の登場で、iPodはより小型化大容量を手にするようになる。
またパソコン用では、ハードディスクよりも読込/書込み速度が格段に速いSSDが今や主役だ。1万円前後で今や1TBのSSDが手に入る。この間、およそ30年間。2040年までの20年間に大きな変化があることに、何の違和感もない。ただそうしたものが登場するまで、爆発するデータ量をストレージする必要性というのは決して消えない。
今週注目の米国企業の決算発表
今週で漸く一旦は一段落しそうな感じだ。
- 11月24日 アナログ・デバイセズ(ADI)
- 11月24日 VMウェア(VMW)
My favorite Companies List(株主となって所有したい企業のリスト)
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