MF10Cの10銘柄を調べていても、確信をより強く持ってしまうのは、注目しているビジネス・トレンド、技術ロードマップの方向性に間違いないという思いです。
そうなるとやはり「産業のコメ」とも言われる半導体への期待が高まります。
何が?と聞かれれば、最先端技術を投入した、より微細化された、より省電力で、より高速演算処理が出来て、より小さく出来るものという半導体製造技術がやっぱり渇望されている筈だという事です。
ただ半導体と一言でいっても、そこには色々な種類があります。このことは別の記事でご紹介したことがありますが、ものは試し、一度Googleで検索「半導体の種類」と調べてみてください。如何に証券市場が浅い知識の下に「半導体」という単語を使っているか実感出来ると思います。逆に言えば、だからこそ正しく見ていけば、チャンスは色々とあるという事です。
私の感じている限り、証券市場では「半導体関連」と言いながら、メモリー系とロジック系の区別すらありません。だからこそ、エヌビディアやザイリンクスなどに投資チャンスがあるのですが、半導体製造装置についてもすること、やること、どの段階など、色々な種類があって、技術ロードマップのどこが前に出ようとしているのか、或いは滞っているのかによって、投資チャンスは全然違ってきます。
アプライドマテリアルズ(AMAT)は世界最大の半導体製造装置メーカーです。日本を代表する東京エレクトロン(8035)は世界第3位か第4位です。オランダのASML(ASML)が第2位、米国のラムリサーチ(LRCX)と東京エレクトロンが第3位争いをしているという感じです。トヨタとGMとメルセデスベンツと、どれが世界一なの?かと比べるのとはだいぶ違います。
数年前、アプライドマテリアルズと東京エレクトロンが合併しようと動き、一旦は正式発表されたのですが、イスラエルと数か国以外を除いて、殆ど独禁法に抵触するとして認められず、幻の合併となりました。ただ両社が予め弁護士を使って検討した段階では、半導体製造装置メーカーという括りでは一緒でも、やっていることが違うから大丈夫だろうという判断だったという逸話があります。
さて、それではアプライドマテリアルズのWebページを開いてみましょう。

決してトップページから宇宙人やバイオハザードの写真が出てきているわけではありません。クリーンルーム内で行われる作業が半導体製造なので、そのエンジニア達の典型的な状態を示しているといえます。
余談ですが、半導体製造工場の見学ぐらい面白くない、或いは意味がないものはありません。何故なら余程のこと(若しくはコネ)が無い限り、この服装でクリールルーム内に入れることは無いにも関わらず、仮にそのチャンスに恵まれたとしても、多くの場合は装置内でされている作業なので、白い大きな箱を外から見て「きれいなクリーンルームだなぁ」と当たり前な感慨をもつだけです。
私は一度だけ、インテル社の300ミリウェハのテストファブにこの恰好をして入れて貰ったことがあります。ただ当然ながら装置の中は見えませんから、「ここが最先端のクリーンルームの中なんだぁ」とアドレナリンが放出させて興奮しただけだったのですが。半導体製造の現場とはそういうところです。
半導体業界のロードマップに現在立ち塞がっている大きな問題は「ムーアの法則は死んだのかどうか」という話です。エヌビディアのジャンセンCEOのプレゼンでは「ムーアの法則はもう終わった」という前提でGPUコンピューティングの必要性が説かれていました。
「ムーアの法則」とは「半導体の集積率は18か月で2倍になる」というもので、その為に微細加工技術を進化させたり、シリコンウェハの口径を大きくさせたり(200ミリから300ミリ)、回路の作り込みを2Dから3Dにしてみたりしてここまで進んできました。
一方で、AIやIoT、或いはクルマの自動運転と言った潮流がこれから更に本格的に押し寄せるデータセンタでは、より高速演算処理が出来、遅延のないサーバー同士のコミュニケーションが出来、低消費電力で、更に大量なデータを瞬時に読み書き出来るストレージを抱えることが求められています。その実現のためには、仮に「ムーアの法則」が終わってしまっていたとしても、同等の効果が得られる技術革新が半導体の世界に求められています。
残念ながら、その超最先端の技術開発がどうなっているのかは部外者である証券市場関係者が知る術はありません。何かがきちんと達成されて公表されるまで無理です。
一例を挙げれば、シリコンウェハの大口径化という話があります。業界では2001年まで10年毎にシリコンウェハの大口径化が進んできました。その結果、現在は直径が300ミリのウェハが使われていますが、その上のサイズとして450ミリに移行するという話は、2010年頃から何度も噂されながらも今現在ロードマップに明確な時期は出ていません。
従来、半導体の微細化という流れのリーダーだったのはインテルでしたが、現在はファンダリービジネス(半導体製造に特化した工場ビジネス)の最大手TSMCの後塵を拝してしまっています。
つまり、今業界はある意味で「大混乱」の中にあります。ただそれでも前述のようなニーズが厳然と存在することは確かです。これを解決出来るのは半導体メーカー自身と、半導体製造装置メーカーでしかありません。
アプライドマテリアルズのトップページの文言を見てください。「アプライドマテリアルズは、世界中のほぼ全ての半導体チップや先進ディスプレイの製造に寄与します。原子レベルの材料制御を産業規模で実現する専門知識により、お客様が可能性を現実に変えるのを支援します。アプライドマテリアルズはイノベーションを通じて未来をひらく技術を可能にします。」と謳われています。変な話、ここに出来なければ他では出来ない筈です。
だからこそ、世界第一位の半導体製造装置メーカーをMF10Cのひとつに選びました。同社が嬉しそうに公表しているインテルからの表彰の盾。これがある意味では信頼の証です。業界の動向を横目でチェックしながら果実が実るのを待ちたいと思います。何が求められているかは明確なのですから。

