所感/雑感
先週(4/8~4/12)は第一四半期及び2019年3月期通期の決算発表を控え、日米市場共に動き辛い展開が続いたが、8日の米株式市場でS&P500種株価指数の情報技術(IT)セクターが過去最高値を更新し、昨年10-12月期(第4四半期)に売り込まれていたソフトウェア・半導体企業が投資家の信頼を取り戻していることが鮮明になった。

その一方で翌9日にはトランプ米大統領が110億ドル分の欧州連合(EU)製品に関税を課すと表明、米中貿易摩擦に加えて米欧貿易摩擦への懸念も広がり、国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しの引き下げなどが投資家心理を冷やしたりもした。
ただIMFも世界の成長率は今年後半に回復後、来年から3.6%で横ばいになると見込んでいる。併せて米国の今年の成長率見通しを2.3%と、前回1月に示した予想から0.2ポイント下方修正した。1月に終了した政府機関一部閉鎖の影響や予想を下回る公共支出を反映した内容だが、来年の米成長率見通しを0.1ポイント上方修正し1.9%としている。
英国BREXITの問題も、結局は10月31日へと再び先送りされ、不透明感は尚引き摺られたままだ。こうしたことから、マクロ景気からトップダウンで市場分析をするタイプの投資家にとっては大変動き辛い、心の休まらない一週間だったのだろう。
ただその一方で、注目のビジネス・トレンドや技術ロードマップは着実に歩みを進めていることがいろいろな形で報道された。状況は明るいと思っている。
注目の右肩上がりのビジネストレンドとトピックス
最初の注目点は、インテル(INTC)とクワルコム(QCOM)が相次いでデータセンタの為の新製品を発表したことだ。
インテルは「データセントリック」を旗印に掲げながら、第2世代XEONプロセッサーを発表し、更に揮発性メモリと不揮発性メモリの両方の性格をもつ新規格のメモリをも発表した。当然分かり難い話だと思うが、このメモリは半導体業界に大きな一石を投じるかも知れない。
またクワルコムも新しいCPUをデータセンタ用と、ゲーミング・スマホ用(ゲーミング・パソコンという定義は知っていたが、ゲーミング・スマホというのは今回初めて聞いた)のCPUを発表した。
要は、インテルアーキテクチャーとARMアーキテクチャーのガチンコ勝負が始まったということでもあり、ここからも目が離せない。何故なら、データセンタの設備投資のボトルネックがこれで解消されるかも知れず、半導体需要の年後半からの立ち上がりというのは、より現実味を増してきたと言える。
国内では総務省が10日、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯4社に次世代通信規格「5G」に必要な電波の割り当てと発表した。これはやや動きが遅いと思うが前に進んでいることだけは確かだ。2020年春から順次5Gを本格的に始める。
トヨタグループの動きが慌ただしい。今週は株式会社ジェイテクトが電動パワーステアリング(EPS)の電子関連部品や自動運転対応技術の開発などを一層進めるため、東刈谷事業場にソフトウェア開発拠点を拡張することを発表した。併せて経済産業省と国土交通省は8日、地域と企業の協働による意欲的な挑戦を促す新プロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」を開始すると発表した。
ドイツではフォルクスワーゲンが今月9日までに、自動運転レベル4(高度運転自動化)の技術を搭載した車両の実証実験を、ドイツ北部のハンブルグで開始したことを明らかにした。
同社がドイツの主要都市の公道でレベル4の実証実験を実施するのは初めて。実証実験にはVW製の電気自動車「e-Golf」が5台使用され、レーザースキャナーや超音波センサー、レーダーなどをそれぞれの車両に搭載しているという。実証実験では自動運転ソフトウェアの評価や検証などを行い、今後の自動運転技術の開発に活かしていく。ハンブルグでは自動運転など向けのテスト区間が開発されているほか、V2I(路車間通信)機能を備えた信号機の設置も進められており、行政機関もVWの自動運転プロジェクトを継続的に支援していく見込みだ。
マクロはゴタゴタしていると言えるが、今週一週間だけの主なニュースを拾っても、注目のビジネス・トレンドや技術ロードマップは着実に歩みを進めていることが分かる。
株主となってその企業と一緒に夢を見たいと思う会社10選

*上記表について:日本株、米国株からそれぞれ上限を5銘柄として絞り込み、ひと銘柄当たりの投資余力を10百万円として、株数を計算。売買手数料は証券会社によって違うので考慮していない。ビジネストレンドや各企業の状況により適宜入れ替える。ロスカット、益出しルール等の設定はしない。
個別の企業に関わるニュース・コメント
① 住友電工
自動車部品関連への投資は、安定している代わりに地味なのが問題。特に昨今の様にマクロで株価を考える論調が多くなると、「風が吹けば桶屋が儲かる」という連想ゲームをする人が減るからだ。例えば、今週は5Gに関わる報道が色々とあったが、住友電工は蚊帳の外に置かれているのは確か。
ただ同社が交通インフラ(V2I:路車間通信など)を支える交通管制システムや、5G・IoTを活用したコネクテッド分野に力を入れているのは確実な話であり、動かない株価を見ていて不思議になるぐらい。
https://test.fundgarage.com/4384/
② デンソー

中国・上海で開催される「上海モーターショー2019」(4月18〜25日)に出展し、「安心」と「環境」に関する技術などを展示すると発表した。
「安心」を実現するための技術として展示するのは、画像認識アルゴリズムや視線検知技術を使った「ドライバーステータスモニター」や、運転手の視点移動を抑えることでより安全性が向上する技術「ヘッドアップディスプレイ」などだ。
ドライバーステータスモニターは、カメラで運転手の顔を撮影し、その画像を解析することで運転手がどのような状態にあるかを検出する技術。自動運転のレベル3では、緊急時はドライバーへ運転復帰の指示を出すことになるが、寝ていたり、酔っ払っていたりしたらそれが出来ない。数年前からモーターショウでのデモが続いていたが、いよいよ実用段階になったのかも知れない。
一方、日立オートモティブシステムズは自動運転や電動化に関する技術などを目玉として展示する予定で、「Moving Forward! 人・クルマ・社会がつながる未来へ」をテーマに据えるという。具体的な出展内容としては「自動運転システム All in One Car」「電動パワートレインシステムコーナー」「自動運転システムコーナー」「高効率エンジン燃焼制御システムコーナー」などを挙げる。
上海に行って実物を見てきたい衝動に駆られる。
https://test.fundgarage.com/4386/
③ ローム
この時期はビジネスショウが多く、来週17日から19日は幕張メッセで「TECHNO-FRONTIER 2019」が開催される。
日本能率協会が主宰するイベントでメカトロニクス・エレクトロニクス分野の要素技術と製品設計を支援する専門展示会。恐らく流石にある程度知識が無いと見に行っても難しいだけかもしれないが、当然ロームは出展する。SiCパワーソリューション、アナログテクノロジ、モータソリューション、センサソリューションに力を入れる。ロームのIRは熱心で、こうした案内を含めてほぼ毎日に一通は何かメルマガが送られてくる。19日には「ロームWebセミナー《LED初級編》」があり、既に事前予約は完了している。
https://test.fundgarage.com/4415/
④ 村田製作所
村田製作所は先週「第8回IoT/M2M展【春】」に出展した。
出展アイテムなどの詳細は、同社Webページからダウンロード出来る。例えば高速、低遅延通信の5GとともにIoT向けでは、より少ない消費電力で、より遠くにデータを送れるLPWAが注目され、各家庭の水道、ガスのようなライフラインの自動検針や、工場設備の監視や予防安全などさまざまなシーンでニーズが高まっているが、こうした商品を展示している。
確かにロームと同じく、一般消費者には分かり難い分野ではあるが、逆に言えば、いま日本が誇れる技術は電子部品とクルマ絡みしかないとも言える。参考URLは下記にて。
https://www.murata.com/ja-jp/campaign/events/japan/iotm2m?intcid5=com_xxx_xxx_hm_ms5_xxx
https://test.fundgarage.com/4418/
⑤ ソフトバンクグループ
同社にとっての今週一番のハイライトは、米ライドシェア最大手のウーバーテクノロジーズが米証券取引委員会(SEC)に新規株式公開(IPO)を正式に申請したことだろう。ソフトバンクグループ(SBG)が現在の筆頭株主であり、上場時の時価総額は最大1000億ドル(約11兆円)になる見込みで、米国で今年最大の上場案件となる。
https://test.fundgarage.com/4420/
⑥ Nvidia
MF10Cの中でベストパフォーマンスとなっている同社だが、やや周辺での競争が激化し始めたように注意している。
ただML(マシンラーニング:機械学習)は大量のデータから特徴となるパターンを抽出する「学習」と、学習の成果をもとに新たなデータを判断する「推論」という処理からなり、インテルやクワルコムの製品は後者を担うCPUであり、エヌビディアのGPUは前者を担うものなので、直接分野を侵食するものでは無いが、株式投資家がそこまで違いを理解して動くとは思えず、動向には注意している。
https://test.fundgarage.com/4422/
⑦ Western Digital
これも非常に気になっている。写真はインテルが10日(米国時間)に発表した「Optane Memory H10」。この写真だけを見ても「なぜWestern Digitalに影響するの?」と思われるかも知れないのは当然の話。
ただインテルは「従来SSDのDRAMキャッシュにあたる部分にOptaneメモリを配置し、同社の「Rapid Storage Technology (Intel RST)」と組み合わせ、利用頻度の高いデータをOptaneメモリ側に展開することで、より高速なアクセスの実現を謳う」と言えば若干その危機感はお分かり頂けるだろうか。
実は、インテルの近時の発表の中で、第2世代XEONプロセッサーというサーバー向けCPUはそれほどMF10Cにとってネガティブとは思っていないのだが、このOptaneメモリについてはかなり注視している。逆に言えば、インテルをMF10Cに入れることを考える時が来るのかも知れないということでもある。

https://test.fundgarage.com/4424/
⑧ Xlinx
5Gの話が喧しくなってきたところで、同社のWebサイトをあらためて訪ねてみれば
「5G の容量、コネクティビティ、性能を実現する最適なソリューションは、ザイリンクスのテクノロジです。ザイリンクス テクノロジは、複数規格、複数帯域幅、および複数サブネットワークにも柔軟に対応でき、IoT ベースのさまざまな 5G アプリケーションを可能にします。そして、5G ネットワークに必要なソフトウェア プログラマビリティ、複数規格と複数帯域幅のハードウェア最適化、セキュリティ機能を備えたコネクティビティをすべて兼ね備えた柔軟で標準規格ベースのソリューションを提供しているのはザイリンクスだけです」
ときっちりと大見得を切ってくれている。FPGAのNo.1である以上、安心してみていられる。
https://test.fundgarage.com/4426/
⑨ Applied Materials
「データセンタの設備投資が止まっているので半導体需要がダブついている」というコメントが随分と聞かされた話だが、インテルやクワルコムが漸く新製品で狼煙を上げたことから、今年の後半からは需要が立ち上がるという見通しは現実のものとなってきそうだと思われる。
データセンタが求めていたのは、超高速演算と超低レイテンシー、そして低消費電力のサーバーであり、その動きが一旦止まりかかっていた。ここに来て再始動が見えてきたことを受けてか、株価も堅調な足取りとなってきている。
https://test.fundgarage.com/4428/
⑩ Check Point Software Technologies Ltd
株価は押し目も無く順調だ。それはサイバーセキュリティが不可欠な時代により進んでいることだけは確かだからだ。
ただ、最初の銘柄選定時からずっと気になる銘柄がある。それはPalo Alto Networks(PLNW)。先週には大々的にCEOが新製品のプレゼンテーションを行い、言うなれば、CHKPの堅実・地味な印象とは裏腹にPLNWには現状花がある。こういう時、ファンドマネージャーは大変悩む。MF10Cの銘柄数を米国株は増やしたいなとも思ってしまう。
https://test.fundgarage.com/4430/
