所感/雑感
先週(3/25~3/29)は前週末の米国市場の急落を嫌気して週初に日経平均株価が650円の下落となったこと、また期末の配当落ち(171円程度)が日本の株価を押し下げたと言える。前週末と日米逆の状態である。

年度末の権利付き売買最終日があり、権利落ち日があり、そして年度末当日があったからと言えばそうなのかも知れないが、このところ、株式市場は見ていても非常につまらない動向が続く。
日々の変動には何らかの解説やコメントがされるが、「米国債3か月金利と10年債金利が逆転したのが気になる」とか、「トルコ情勢が気になる」と言って株価が軟調になったと解説するのは脇腹で笑ってしまうような話だ。
ただ確かに「今回の米国金利の長短逆転をどう思いますか?」という質問は、私のかつての同僚を含めて多くの人から聞かれた。私の答えは「殆ど気にしてないよ」だ。マクロにばかり気を取られて悲観的な話をしていたら、きっと株式投資でまともな利益は出せないと常々考えている。
何故なら、この超低金利継続期において、やっと一旦はFRBが利上げを初めて短期金利FFレートを2.0%~2.5%の水準まで引き上げた。そしてやっぱりもう年内の利上げはしないとか、利下げも視野入れてみたいなことを言いつつも、まだ実際の利下げは行われていない。
需給だけで決まる長期金利、ましてや金利が下がれば債券価格が上昇することで利益が出る債券市場としては、なんだかんだと言いながら「不景気万歳」で債券を買い上がる。だから長期金利は元々低いにもかかわらず更に下がる。その一方で、3か月の金利は、通常債券金利などとは言わない。そもそも一年未満の期間はBondではなく、BillかNoteだから。
一年未満の金利は短期な金利なので、市場需給云々よりもFFレートにより強く引っ張られる。だから「3か月金利と10年債金利が長短逆転した」などと大騒ぎするのは、実はちゃんちゃらおかしい話なのだ。だが多くの人がそれを真に受けて「大変だ」と思ってしまうようだ。不景気な話をして、長期金利が下がることが「債券市場関係者」にとってはハッピーな話なのだということを覚えておいた方が良いと思う。
日経平均株価は権利付き最終日となった26日に配当/優待狙いの買いが入り、前日に大きく下げていた影響もあって450円も上昇した。単なる市場の綾と言うか、リバウンド。先週の市場動向で評価すべきは配当落ち171円程度を織り込んで安く始まりながらも、大引けでは約50円安までその日の内に押し戻したことだろう。実質的には前日比+120円程度と考えて良い。
2019年3月末は相変わらず極めて低水準な株価バリュエーションで幕を引いた。例えば、リーマンショックが起こる直前の2008年8月、実はこの時は既に前年に起こったパリバショックなどの余韻もあり、サブプライム・ローンなどの話なども伝わっており、市場は相当にリスク・コウシャスであったにも関わらず、日経平均の予想PERは概ね15.3~15.5倍の間で推移している。
チャイナショックから回復して巡航速度に戻った2017年夏の予想PERも14倍台半ばである。
翻って2018年3月末のそれは12.32倍。もし上述の中間である15倍(通常はこの辺が日本株の平均値)程度にまでバリュエーションが回復したとしたら、その修正だけで25,800円台が見えて来る日本株市場だ。如何に、現在の株式市場関係者が悲観論好きの債券市場が発する弱気節に飼い馴らされてしまったかの証左のように思う。トルコ情勢の不安で日本株投資に慎重姿勢がでる?非常に不思議な論法だと思う。
注目の右肩上がりのビジネストレンドとトピックス
前述のような不甲斐無い日本市場の影響もあり、総じて日本株のパフォーマンスが悪い。ただMF10Cの動向については、全く心配していない。当然、ビジネス・トレンドについてのネガティブな情報も無ければ、技術トレンドが止まったという話も無い。
WSJはサムスン電子が26日に公表した1-3月期の業績見通しを踏まえて、「半導体市場回復への過信は禁物」という記事を発表した。記事の中には同社の他、マイクロン・テクノロジーとSKハイニックスと併せたサムスン電子の株価チャートを並べているが、この3社はDRAMのトップ3社である。注目しているエヌビディアのGPUやザイリンクスのFPGAとは、全く用途が違う。更に言えばロームのSiCパワー半導体など、かすりもしない関係無さである。
同紙はこうも続ける。引用すると
「需要サイドではリスクが増大している。世界各地の景気が鈍化し、米国や中国といった消費をけん引していた国の見通しが曇っている。消費者が先行き不透明感から引き続き携帯電話の買い替えを見合わせれば、半導体需要の低迷が続く可能性もある。」(WSJ誌 2019年3月27日、「ハード・オン・ザ・ストリート」から引用)
という。注目すべき論点は「引き続き携帯電話の買い替えを見合わせれば」という部分。
まだそこに立ってものを見ているのですね、といのが実感。
その携帯電話、いやスマホの盟主アップルは、コンテンツビジネスと、クレジットカードビジネスに活路を見出そうとし始めた。つまり本人たちが既にある程度の見切りをスマホビジネスにはつけているということだ。これだけでは食べていけないと。
にも拘らず、そこに立ったまま時代の流れを追い、株式投資の方針を考えているのだとしたら、それはかなり時代遅れな見通しを立てることになるであろう。
そうした時代が終わった、そうした時代とは関係なく始まったのが今注目している大きな時代の流れ、ビジネス・トレンドなのだから、このロジックで古い発想の人達の腰が引けているのならば、ここは笑顔で突撃出来る場面であるとも言える。
株主となってその企業と一緒に夢を見たいと思う会社10選

*上記表について:日本株、米国株からそれぞれ上限を5銘柄として絞り込み、ひと銘柄当たりの投資余力を10百万円として、株数を計算。売買手数料は証券会社によって違うので考慮していない。ビジネストレンドや各企業の状況により適宜入れ替える。ロスカット、益出しルール等の設定はしない。
個別の企業に関わるニュース・コメント
① 住友電工
前期18年3月期の一株当たりの純資産(BPS)が1974円に対し、週末の株価は1469円。今期の予想一株当たり利益が約156円あり、この1/3でも内部留保に回ればBPSは2000円を超える。
バリュー投資家の目線でMF10C選定をしたわけでは決してなく、ビジネス・トレンドを押さえる上で選定したもの。寧ろ感覚はグロースに近い。市場が変化に気付くまで待つしかないとも言えるが、配当利回りが3.27%と高かったことも、配当取りを終えた資金が売りに回った可能性は高い。特に心配なし。
https://test.fundgarage.com/4384/
② デンソー
配当落ちも手伝い、株価は昨年来の安値を28日に更新し、週末ややや戻して終わった。

配当分を加味してもMF10C選定依頼△7.39%の下落。通常ならば、下のロームも同じながら、買い増しをしたい状況だが、そういうルールでは無いので単純にホールド。
https://test.fundgarage.com/4386/
③ ローム
なかなか底練りの状態から抜け出せないでいるが、この水準から売り込まれることも無いと思われる。何故なら、現役の証券マンたちと近時話したが、SiCパワー半導体など以ての外で、単なるパワー半導体ということすら知識がない。
当然、その素材の問題で次世代のパワー半導体として非常に強いという事など分かりようが無い。決算発表や説明会で誰かがそれに気が付いた時、株価はこの水準から離陸するものと思われる。

こんな記事も、日経XTECHSpecialというメディアを飾っている。

https://test.fundgarage.com/4415/
④ 村田製作所
株式分割が実行され、保有株数が500株から1500株へと変更になった。当然株価は3分の一になり、一単元が60万円以下で購入出来るようになった。これは朗報。やはりひと銘柄150万円を超えるとなると、購入出来る個人投資家の層は、ワンランク上がってしまうのは事実。個人投資家が購入し易くするという意味で、この分割はポジティブな話。
https://test.fundgarage.com/4418/
⑤ ソフトバンクグループ
原文を見つけることは出来なかったが、フィナンシャルタイムズが「第二のITバブル、ソフトバンクが震源地か」という記事を27日に掲載したと日経新聞が報道。
主な内容は、ソフトバンクグループが運営する「ビジョンファンド」が供給する大量な資金が、スタートアップ企業に供給されるため、従来と比べ長期間非上場で居られるというもの。孫正義会長は投資先企業の創業者に、過剰な資本などというものはなく、寧ろお金が多いほど企業はそれだけ早く成長し、ライバルを威嚇できると考えているようだ。
https://test.fundgarage.com/4420/
⑥ Nvidia
米メディアの「TECHCRUNCH.COM」に、同社のニューラルネットワークプラットフォームを使ったデモンストレーションとして、誰でも簡単にスケッチイメージから、本物のような景色を瞬時に作成することが出来るソフトウェアの紹介記事を発見。同社のAIがディープラーニングで風景を学び、簡単なスケッチをするだけで、それが仮想の世界のリアリティ溢れる風景画に瞬時代わる。
負荷はデータセンタに掛かるもの。クリエイターの世界が大きく変わる一方、データセンタの負荷は増える一方であることが確認出来る。
https://test.fundgarage.com/4422/
⑦ Western Digital
AKIBA PC Hotlineによると4TBのHDDの値が下がっていることが報道されている。またWDのNVMe SSD「WD Blue SN500」が新発売となり、これも手ごろな価格で買えると伝えられている。年度末決算セールの中でこうした安売りはよくある話。寧ろ普及させるためにはポジティブな話。
主戦場は自作PCではなく、データセンタなのだから。当然メーカー製のPCにも多く採用されることが想像出来る。SSDの世代交代促進に繋がることを期待する。
https://test.fundgarage.com/4424/
⑧ Xlinx
中国の大手サーバーベンダーで世界第3位のプロバイダーであるInspurが、Xlinx Alveo U200およびU250アクセラレータカードの採用を決めた。Inspurサーバーは、AIアプリケーションの最適化およびAIクラウドの展開用に特別に設計されており、高性能および高信頼性のコンピューティング要件に柔軟に対応する。
Alveoは一般的なデータセンタAIワークロードのための大きな高速化機能を提供する。(XlinxのWebより)

https://test.fundgarage.com/4426/
⑨ Applied Materials
チャートで見るように、株価は40ドル前後のところを行ったり来たりしている。世界最大の半導体製造装置メーカーの宿命として、市場が「半導体関連」という単純な一括りで需給を見ている間は、なかなか上に突き抜けることはまだ難しいとは思う。ただいつ市場の目線が年央以降に移るかは予測しがたく、ここはじっと我慢して見ているしかない。

https://test.fundgarage.com/4428/
⑩ Check Point Software Technologies Ltd
「買おうと思っても、中々押し目が無いですね」というコメントを頂戴した。

確かにチャートで見ると3月上旬にディップは作っているように見えるが、これとて122ドルから118ドルに低下しただけで、既に126.49ドルが週末の引け値である。「押し目待ちに押し目無し」とよく言われるが、その通りなのかも知れない。
一方で、競合とは言わないがサイバー・セキュリティ関連企業でMF10C選定時から気になっている銘柄がある。パロアルト・ネットワークス(PANW)である。先週金曜日、新商品を発表し、CEOやCTOのプレゼンテーションが中継された。正直、非常に未だ悩ましく思う。ただチャートで見ると上値がやや重く、バリュエーション的にも高いので、現時点ではまだチェックポイントの方を先行することとする。ただ継続的にウォッチはして行きたい銘柄リストには入れておく。
https://test.fundgarage.com/4430/
