所感/雑感
先週(4/1~4/5)は日米株式市場共に好調な一週間を終えた。ただ東証マザーズ指数は一週間で△4.11%の下落となるなど、厳しい状況となった。

名実ともに新年度入りとなった日本市場については、週初に5月からの新元号「令和」が発表され、新しい時代への期待が映し出されたという側面があるのかも知れない。ただ新元号が発表されるまでは前日比で470円程度の上昇となった日経平均株価が、結局は300円高まで押し返されたのは、単なるお祭り騒ぎの反動なのか、期越え後の利益確定の売りなのかは定かではない。

(出所:ブルームバーグ)
上記はサムスン電子の過去1年間の株価チャートである。先週お伝えしたWSJの記事とは裏腹に同社の業績見通しの下方修正を踏まえても、株価は上昇した。実際、その他の市場でもこれが悪材料視されてハイテク株が下落することは無かった。メディアの論調と株価とは現状歩調があっていないのが面白い。市場の方が先に悲観的になっただけ、先に楽観的になっているという事なのかも知れないが。
米労働省が週末の5日に発表した3月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が19万6000人増と、前月の17カ月ぶりの弱い伸びから加速し、また1〜3月の月平均の18万人をやや上回った。失業率は3.8%と非常に低い水準を維持。平均時給は前年同月比3.2%上昇と、伸びは2月からやや鈍ったが、10年ぶりの高水準近辺にとどまった。
今回の雇用統計はFRBが利下げするという見方を後押しはしないが、一方で、FOMC後に長短金利が逆転したと大騒ぎした悲観論をも当然後押しはしない。米国10年債金利は2.5%台を回復しており、3か月金利2.42%を上回っている。当然2年債金利は2.34%なので、本来見るべきポイントでの長短金利も逆転していない。
気になる話題でいつまで経っても決着がつかないのがBREXITの問題だ。ただ英国銀行の調査部でさえ、或る意味、見通しのクリアな説明を放棄する状態にある。ならば英国外のメディアや金融機関のリサーチに何の信頼がおけようかという感じではある。ただ既に多くの企業が打てる手を打っている状態であることも確かなようで、BREXITがどういう結果になろうとも、投資家が大慌てで騒ぐ必要はもうなさそうである。
注目の右肩上がりのビジネストレンドとトピックス
先週3日より行われた「第3回 AI・人工知能EXPO」に二日間連続で参加した。二日目はAWS(Amazon Web Services)の講演とIBMの量子コンピューターの講演を聞いた。またビジネスショウの会場もひと通り隈なく歩き回った。
結論はMF10Cの評価損益率が如実に示している通り、メインプレイヤーは明確に米国株であり、残念ながら日本企業にこのアイデアで投資出来る企業は無い。勿論「他人の褌で相撲を取る」輩へ投資をしてでも日本企業に固執したいというのならば話は別ともなろうが、あらためて驚いてしまうほど、日本企業に「凄いね」と思われるものは何も無かった。
AI・人工知能はハードウェアも、ソフトウェアも、どちらも最先端技術とアイデアが要求される。にも関わらず、AWSやIBMのプレゼンでは当然聞かれるようなキーワードが、日本企業の出展ブースが立ち並ぶエリアでは殆ど聞こえることが無かった。
勿論、日本企業のブースに量子コンピューターを期待したわけでも、エヌビディアやAMDを出し抜くGPUの登場を期待したわけではない。ただ一番残念に思ったのは、何かを研究している姿を感じられないという事である。見えて来るのは、アマゾンが開発し、エヌビディアが駆動するAIという便利未来ツールを、如何に商材として使って売り込むか、とう目先のビジネスモデルしかないことだ。
これでは残念ながら、次のステップでも日本企業が優位に立ち回れる筈がない。AI・人工知能というのは、間違いなく次世代大変革のビッグトレンドだ。にも拘らず、その最先端に将来も含めて立ちそうな日本企業は一切見えない。日本企業に固執しない投資姿勢こそ、今後は大切になって来ると強く感じるビジネスショウであった。詳細は別途レポートをご参照頂きたい。
株主となってその企業と一緒に夢を見たいと思う会社10選

*上記表について:日本株、米国株からそれぞれ上限を5銘柄として絞り込み、ひと銘柄当たりの投資余力を10百万円として、株数を計算。売買手数料は証券会社によって違うので考慮していない。ビジネストレンドや各企業の状況により適宜入れ替える。ロスカット、益出しルール等の設定はしない。
個別の企業に関わるニュース・コメント
① 住友電工
新入社員向けの社長挨拶を見ると、如何にも「住友系」という感じがする。決して誉め言葉ではない。曰く「住友事業精神の「萬事入精」「信用確実」「不趨浮利」という考えを会社生活の基本として過ごしてください。」というのは、今時の若者の心に響くのだろうか?この辺の変革が同社にとっては必要な大きな要素かも知れない。
https://test.fundgarage.com/4384/
② デンソー
前週にお伝えした通り、買い増しを出来ていたらと思う動きを見せてくれたデンソーだが、現在トヨタとデンソーの双方で行っている電子部品事業を開発機能と生産事業共にデンソーに集約することを発表した。
電子部品事業の分野で専門性の高いデンソーに集約することで、スピーディかつ競争力のある開発・生産体制を構築するのが狙い。これは同社の将来にとってはとても有益な話である。既に非トヨタグループの売上が半分程度になっている同社にとって、トヨタグループの電子部品部門のノウハウを全て抱えることが出来るということは、更なる追い風になると考える。
https://test.fundgarage.com/4386/
③ ローム
漸く底練りから脱し、この一週間の上昇率は11.83%とMF10C最大となった。お伝えしたように、買い増しをしていたらと「タラれば」な話を考えてしまう。ただ私の知る限り、何か新しいニュースが発表されたわけではない。売られ過ぎの自然反発なのか、或いは前期中に何らかの理由で売り切りたかった機関投資家の売り需給が終了したのか、そんな内容なのかも知れない。
https://test.fundgarage.com/4415/
④ 村田製作所
新入社員向けの社長挨拶からの抜粋。曰く「2018年10月に発表した「中期構想2021」で定めた基盤市場の1つである通信市場では、スマートフォンの成長が踊り場に差し掛かっているものの、5Gなどの通信技術の進化と家電やあらゆるモノへの通信機能の普及などにより引き続き事業機会は拡がっていく。
もうひとつの基盤市場である自動車市場においては、パラダイムシフトとも言える大きな変化の波が押し寄せている。EV化に加えて自動運転車の開発も加速しており、自動車への電装品の搭載数は急激に増加し、電子部品の需要が飛躍的に高まっている。自動車市場では、高信頼性の製品や技術的に難易度の高い高耐圧製品が求められるため、顧客からムラタへの期待が非常に大きくなっている。顧客の信頼に応えるべく、積極的な設備投資と人材登用を行っていく。」
投資家に嘘はついても、新入社員に嘘はつかないでしょう。かなり強いインプリケーションのある挨拶だと思う。
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⑤ ソフトバンクグループ
同社Webページに4月1日付で「ソフトバンクグループ株式会社は2019年3月期 決算を2019年5月9日(木)に発表し、同日決算説明会を開催します。決算説明会の模様は、当社ホームページでライブ中継をご覧いただけます。決算説明会には代表取締役会長 兼 社長の孫 正義が出席する予定です。」というお知らせが掲載されました。決算の内容は不明だが、こうしたトップマネージメントの姿勢はとても高く評価されるべきだと思う。各社見倣って欲しいものだと思う。
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⑥ Nvidia
先週「第3回 AI・人工知能EXPO」に二日間も通ったこともあり、見慣れた緑の同社ロゴが入った製品パンフレットの類がかなりな量で手許に溜まってしまった。AWSのプレゼンでも、CPUという単語は一度も出て来なかったが、GPUという単語はスライドの中も含めて嫌と言うほど見せられた感じがする。AMDもGPUを作ってはいる筈だが、展示場内のどのブースでもRadeonブランドを見ることは無かった。NVIDIAブランドの圧勝である。
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⑦ Western Digital
「AI・人工知能EXPO」で見かけたハードウェアで、GPUユニット以外と言えば、ストレージ。当然のことながら、外からストレージの中身は確認出来ないため、説明員に問い掛けをした。「どこのSSDを使っているのか?」と。
日本ではお客様が東芝製を好む場合があり、東芝製を使う事も多いという。ただそもそも東芝製とWestern DigitalのSan Diskは同じ工場で作られおり、東芝製にするのは日本のお客様が指名した場合という。それにしても、52TBのSSDブレードを15基セットして1607TBものストレージを抱えさせるAIユニットというのには驚いた。ディープラーニングが必要とするストレージ容量とは、桁外れなようだ。
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⑧ Xlinx
クラウドコンピューティングに対してエッジコンピューティングという考え方があるのと同じように、「エッジAI」という考え方もあることを今回のビジネスショウで初めて知った。
内容としては「ディープラーニングなどを用いたAIアルゴリズムをクラウド側ではなく、端末側(エッジ)で実行すること」というもの。クラウド側では当然GPUが処理をするが、エッジ側ではFPGAが重宝されるようである。何故なら用途特化で且つ現場でプログラマブルだからだ。
SONYの画像認識エッジコンピューティングとの違いを問い質すと、同じデモを見ていたようで、SONYのは顔上の3点を解析して人間かどうかを判断するのに対し、エッジAIでは、より広範に性別や年齢なども認識出来るという。FPGAの用途は広がるばかりに見える。
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⑨ Applied Materials
東京エレクトロンなども含めて、半導体製造装置株全般が動き出した感じの一週間となった。米中通商協議の最終合意に対する期待が高まり、中国販売に依存度の高い半導体銘柄が上昇する流れが起きている。フィラデルフィア半導体株指数.SOXも先週は過去最高値を更新した。

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⑩ Check Point Software Technologies Ltd
セキュリティ関連株は、何か大きな事件が起きるか、全体の流れが止まった時に縁の下の力持ちと見直されることが多く、半導体関連株が賑わっていることもあり、先週は完全に蚊帳の外といった感じだった。
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