所感/雑感
先週(6/3~6/7)の日米各株式市場の騰落率は下記の表の通り。今週の米国株式市場は、週初月曜日こそ前週末金曜日よりも僅かに安く始まったが、その後は一貫して値上がりし、トランプ大統領をして「最良の一週間」とTwitterで呟やかせたらしい。実際NYダウで4.71%、S&P500で4.41%、Nasdaqで3.88%の上昇となっている。米国市場はその前の週の下げを取り返して更に上昇したことになる。

一方、日本市場はそうは上手くいっていない。念のため下記に前週末文の表も添付するが、前週の下げを取り返せず、米国市場の上昇には遥かに後れを取っているのが分かる。確かに米国市場は週末の雇用統計を聞いて、FRBに利下げを決めさせる材料が出たと判断したこともあって株価が上昇したが、この分の影響はまだ日本市場は反映していない。

市場がまだ織り込んでいない朗報と言えば、週末になって米国はメキシコと合意に達し、10日から発動予定の関税政策は発動されないことになった。これは予想外の早期決着であり、週明けの米国市場は少なくとも朗報として評価するであろう。
また米中貿易摩擦問題であるが、習近平国家主席はロシアのプーチン大統領と同席している場所で、「トランプ大統領は友人」と語ったようだ。あの二人が友達同士として実際に胸襟を開き合うことは無いだろうが、交渉が途絶えること避けたい中国からの秋波だという理解で良いだろうと思う。G20の時に、日本でトランプ大統領と習近平国家主席が話し合いを持つといわれているが、その成果を多少は期待しておきたい。ただ過度な期待は禁物だ。慎重に見ていた方が良い。
ところで、日本市場のバリュエーション指標であるが、週明けにはついにPBR1.03倍にまで低下した。PERは11.56倍。「円高ガー」と悲観論・慎重論を言う御仁が数多いるのは承知しているが、株価は無限に下がり続ける訳ではない。寧ろこの極端に低くなったバリュエーションには留意すべきだと思う。
また米国10年債利回りが、遂に2.10%を割り込み、週末は2.080%で終わった。この水準はリーマン・ショック直後の水準である。実際にFRBが利下げを開始したわけでは無いので、半年未満の金利とは逆イールドになるが、これを騒ぎ立てる輩は金利構造というものを知らない御仁と無視して構わないだろう。逆に2年債以上のタームの金利は、きちんと順ザヤで並んでいる。因みに2年債1.85%、5年債1.85%、10年債2.08%、30年債2.57%といった具合だ。2年債と5年債の金利が同水準だが、これは5年債が買われ過ぎているという、需給の話だけだろうと思われる。
寧ろ債券投資家はこの先どこかで反転する金利に対して、ポジション修正をしておく必要があると思われる。勿論、ここから実際に利下げが始まれば、もう少し長期金利も下がると思われるので、債券ポートフォリオのデュレーションを長めにしておくというのもありかもしれないが、それによって得られる利益よりも、イールドカーブが正常化して金利が上がり始めての損失の方が大きい可能性が高いので、一旦はこの段階で長期債を利食ってデュレーションを短くする方向に動くべきだろうと思われる。もしかすると、既にそうした動きがあるので、5年債への買い需要が高く、割高に買われているのかもしれない。
注目の右肩上がりのビジネストレンドとトピックス
トヨタの関係者と話す機会があり、最近の「プリウス・ミサイル」のメーカー側の対応などを聞いてみた。事故がある都度、メーカーはその原因究明の為にかなり徹底した調査をしているらしい。そして最近では、自動ブレーキが作動したかどうかの記録もちゃんと残るようになっているらしい。今のクルマでは、先行車との相対速度から危険とクルマが判断すれば自動ブレーキが掛かるので、その作動がひとつの争点になる場合もあるからだ。
その会話の中でやはり強く思ったのが、間違いなく5Gの動きは加速することはあっても、後退することは無いだろうという事だ。5Gの基地局設置に全国20万本の信号機が提供されることになったのもその一環であろう。
というのは、ミリ波レーダーのような装置の機能レベルやカメラを利用した画像認識技術のレベルが上がっても、クルマのように大きなものを認識するのは得意でも、やはり人や自転車を認識すると言うのは、現状ではまだまだ難易度が高いらしい。それは現状が所謂「エンドコンピューティング」若しくは「エンドAI」のレベルで対応せざるを得ないからだ。クラウドのAIとの連携は現状では行われていないのは既報の通り。また繋がっていない以上、新車購入時以降は、CPUはML(Machine Learning)もDL(Deep Learning)も出来ない。カーナビの地図ソフトが、適当なタイミングでアップデートされるのとはレベルが違う話なのだから。
本来、永遠に学び続けるのがAIの利点だ。iPhoneX以降が搭載している顔認証も、使っているうちに段々精度がより上がって来るのと同じだ。何かの事象があって、もしドライバーが急ブレーキをかけたのならば、それは危機的な状況だったということをAIは学ぶ。そのAIが5G経由でクラウドのAIに繋がっていれば、多くのクルマのデータがクラウドAIに集まり、それがエンドAIにまで加工されて再度発信される。それでより車の対応精度が上がるという事だ。
画像認識用のCCDは当然ながら人間の目よりも明度が高い。照明無しでは見えない景色でも、CCDなら見ることが出来る。クルマのバックモニターを夜間に利用すると、肉眼で見る景色よりも遥かに明るい画像がモニターに映し出されるのはそのためだ。
クルマが自動運転(レベル4やレベル5)になるにはまだまだ時間が掛かるかも知れない。ただ5Gが普及すれば、クルマの安全性能は格段に向上することだけは確かだ。あとは消費者がクルマを買い替えて、安全補助運転装置の付いたものに置き換わるのを待つ。
高齢者ドライバーの事故が増えたことで、直ぐに規制強化と騒ぐマスコミが多いが、5Gの普及を官民挙げて進めてみたらどうだろうかと思ってしまう。そしてクルマと5Gの連携加速。もしこの分野で欧米諸国よりも先行することがもし出来れば、日本のNECや富士通などの出番が作れるかもしれない。クルマ産業自体は欧米と伍して戦えているのだから。そして「安全と信頼」を標語に世界に売り込めば良い。島国だけで完結する話ではないだろう。
株主となってその企業と一緒に夢を見たいと思う会社10選

*上記表について:日本株、米国株からそれぞれ上限を5銘柄として絞り込み、ひと銘柄当たりの投資余力を10百万円として、株数を計算。売買手数料は証券会社によって違うので考慮していない。ビジネス・トレンドや各企業の状況により適宜入れ替える。ロスカット、益出しルール等の設定はしない。

村田製作所とWestern Digitalの2社を除いて、今週は株価が反転した。特にアプライドマテリアルズ、ロームの戻りが確りしているように見える。
MF10Cの10銘柄以外に、このところずっと気にして見ている銘柄にアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)がある。プレミアム会員の皆様にはPremium会員限定記事「インテルCPU供給の遅れに潜む問題と今後の影響 Part3」で既にご紹介させて頂いているのだが、このところ非常に良いニュースフローが続いている。やはりインテルの問題がフォローの風を生み、新製品投入も手伝って想定通りの展開となっている。実はこの1週間で約18%も値上がりしているホットストックになっている。
個別の企業に関わるニュース・コメント
① 住友電工(F)
同社の技術が光ファイバーの分野でも先行していることを示すプレスリリースがあったのでご紹介したい。
スマートフォンなどの急速な普及やデータセンターの発達により増大し続ける通信トラフィックに対応するため、現行の光ファイバ通信技術による伝送容量限界を超える技術として、1本の光ファイバの中に複数の光の通り道を設けて信号を伝送する空間分割多重(SDM)と呼ばれる技術の研究が盛んに行われており、その中でMCFはSDM伝送システムを実現する次世代光ファイバとして期待されている。
これまでMCFは実験室環境などで光学特性や伝送特性の評価がなされてきが、この度、住友電工はラクイラ大学と共同で、世界初となる実環境におけるMCFのテストベッドをラクイラ市に敷設し、良好な光学特性を確認した。テストベッド用に、当社は3種類のMCFを提供し、当社とNexans S.A.の合弁会社であるベルギー・Opticable社においてケーブル化が行われた。テストベッドは、6.3 kmのMCFケーブルから成り、うち5.6 kmはラクイラ市内の共同溝内に敷設され、残りの0.7kmはラクイラ大学の実験室内に配置されて、敷設されたMCFへのアクセスを可能にしている。
あまり騒がれているようには思えないが、5Gで増大するトラフィックに対応するためにも、こうした技術が必要になる。かつてブロードバンド化の流れの中で、光ファイバに市場が目を向けた時は、WDM(Wavelength Division Multiplexing: 波長分割多重方式)という技術が注目され採用された。今、時代は次のステージに入ろうとしている。

https://test.fundgarage.com/4384/
② デンソー(G)
デンソー「Global Safety Package」搭載のトヨタ自動車「アルファード/ヴェルファイア」が、2018年度JNCAP「自動車アセスメント」において、予防安全性能評価大賞を受賞した。
デンソー「Global Safety Package」は、ミリ波レーダーと画像センサーを組み合わせることで、昼夜問わず歩行者などを認識し、安全な運転をサポートするシステム。どんなものなのか、是非とも下記のURLへ飛んでいただき、その紹介動画を見て頂きたい。ポイントは、トヨタが作っているのではなく、Tier1サプライヤーのデンソーが作っていることであり、更にその中に搭載されている電子部品に大きな未来があるということだ。
(https://www.denso.com/jp/ja/news/products-and-services/2019/201906061/)

https://test.fundgarage.com/4386/
③ ローム(H)
ロームの無線通信モジュールが、スマートメーター向けの新・無線通信規格「Wi-SUN JUTA」認証を取得した。これは業界初。
IoTの時代になり、ガスや水道がスマートメーター化するなかで活躍する無線通信モジュールである。
詳細は同社のWebから見て欲しい。
https://www.rohm.co.jp/news-detail?news-title=2019-06-04_news_wi-sun_juta&defaultGroupId=false
https://test.fundgarage.com/4415/
④ 村田製作所(I)
今週のワースト・パフォーマーであり、MF10Cに認定後、既に22.7%の下落となっているが、どう考えても手放す理由が無い。前回ご紹介した日経ビジネスの特集記事などを見てを、その想いはより強くなるばかり。目先の米中貿易摩擦問題で需要低下による稼働率の低下から、減価償却費が先行して収益を足元で圧迫すると言うのが売られる理由だと思うが、ならば本来すべき投資方法は押し目買い、若しくはナンピンでしかないと考える。
https://test.fundgarage.com/4418/
⑤ ソフトバンクグループ(J)
村田製作所に次いで、今週は下から2番目のワースト・パフォーマーである。MF10C同様、会社そのものがAIや自動運転などの企業への投資を目的としている以上、同じように株価が厳しい状況あるのは理の当然。市場が近視眼的にAIや自動運転を評価していることを示す証左でもある。とは言え、MF10C認定後、まだ4.5%程度しかマイナスにはなっていない。
https://test.fundgarage.com/4420/
⑥ Nvidia(A)
今週のMF10Cの中では実はベスト・パフォーマーとなる7.4%の上昇となった。同社は6月5日にBank of America向けに、6月6日にRBC Capital Markets向けにカンファレンスを行った。私もWebcastingで聞いたが、これらに参加した投資家やアナリストがポジティブに評価しているのだろうと思われる。
Buyレーティングのアナリストが事実1人増えている。

https://test.fundgarage.com/4422/
⑦ Western Digital(B)
MF10Cの米国株の中で一番先週のパフォーマンスが悪かったのがWDC。前週末比99.2%、つまり0.8%の下落。ファーウェイの問題以降、ストリートでのメモリー価格などの下落がまだ続いているので、足許で「もう禊ぎは終わった」と強気に変われる人はそう多く無いのかもしれない。
ただアナリストの評価は先週と変わっていない。

https://test.fundgarage.com/4424/
⑧ Xlinx(C)
先週、株価は5.1%の上昇となった。特にニュースが出た訳でない。やはりファーウェイの基地局が米国及び同盟国で締め出されても、ノキアやエリクソンに置き換わるだけだという考えは誰もが同じに持っているようだ。米国での投資レポートなども同様なコメントを綴っている。
アナリスト評価に変化なし。

https://test.fundgarage.com/4426/
⑨ Applied Materials(D)
現在、MF10Cのトップ・パフォーマーで、先週の値上がり率も7.2%、そして認定後6.2%の上昇と調子が良い。微細化のためのプロセス周りに需要回復の兆しを読んでいるレポート類も散見される。
HOLDのアナリストが一人増えたので、BUYからOVERWEIGHTへ。

https://test.fundgarage.com/4428/
⑩ Check Point Software Technologies Ltd(E)
HoldからOverweightに変更したアナリストが一人います。

https://test.fundgarage.com/4430/
