所感/雑感
平成最後の一週間となった先週(4/22~4/26)は、10連休のGW前ということもあり、日本市場は様子見気分が強かった一方、CY2019Q1の決算が本格化しはじめた米国市場、及び2019年3月期決算発表が始まった日本共に、週後半に向かって決算内容を受けて一波乱あった一週間となった。
指数で見るとNASDAQ市場の騰落率が突出し、NYダウはマイナス圏だが、これは僅か30銘柄で構成されている指数が決算期の中で特異な動きをしたとみることが出来る。事実、S&P500で見れば+1.20%の上昇となっている。
さて先週の市場の大きな波乱要因となったのは、日本ではアンリツ(6754)、米国ではMF10Cに入れているザイリンクス(XLNX)と言える。後者については個別銘柄のところで詳説するが、共通項は5G。
アンリツが発表した決算内容で、終わった期は市場予想を大きく上回る結果となったものの、来期予想が減益見通しとなった為、市場は早くも5G関連が終わったのかという、私に言わせれば「馬鹿か?」と言いたくなるような狼狽ぶりを示したことだ。まだまともにサービスが始まっても居ない通信サービス5Gについて、何を何処まで市場は期待していたと言うか、どの程度小さなドラマと捉えているのかということが示された好例だと思われる。この手の押し目は絶好の仕込み場になる。
その後に発表されたザイリンクスの決算も実績良好、今期も増益でありながら、5G関連が多いという事で急落。併せてインテル(INTC)も5Gモデムチップ撤退などの影響もあって、市場コンセンサスを満たせなかったことで下落、こうしたことから市場は既にあたかも5Gは終わったかの様相を呈した一週間となった。
アンリツが5G関係で何をしているかと言えば、規格に沿って信号やデータが正常に通信できているかを検査する通信計測機器を作っているだけであって、そもそもこれを5G関連の本命銘柄などと囃し立てた業界も「お馬鹿」としか言いようもない。半導体製造装置の後工程でテスター大手のアドバンテストも同様に評価されているようだが、どちらも検査やテストの機器メーカー。5G関連を日本株で探そうとすると殆ど候補が無いから仕方ないことなのだが、その発想の貧困さには驚きを隠せない。だからアメリカ株だと思った一週間でもあった。
また先週は上記のような状況故、多くの日米企業の決算内容を確認し、決算資料を読み、My四季報のデータを更新し、そして決算説明会のプレゼンテーションやWebcastingで米国企業のカンファレンスコールなどを聞いた。まだその記憶が生々しい段階でショートインプレッションを言えば、
- 日本のアナリストがそうなのか、市場全体がそうなのか、日本株は決算内容に対するリアクションが合理的というより、感情的だということ。これは何も今に始まったことではないが。
- 日本電産の決算説明会、永守節そのものにも、出席しているアナリストにも、それらを元に編集された新聞記事などにも、総じて大きく失望した。あれなら上方漫才を聞いている方が余程面白いし、決算に一喜一憂せざるを得ない投資家をおちょくっているのかと思ってしまった。永守節自体は昔から独善的であるのは事実だが、今回のは投資している投資家が聞いたら、少なくとも私がかつての様に出席していたらきっと途中退席したか、物申したか、何れかだったと思う。オラクルのラリーエルソンCEOでもああはしない。
上記コメントは、プレミアムメンバー様限りということでお聞き頂きたい。
注目の右肩上がりのビジネストレンドとトピックス
今週の市場動向の中で明らかになったのは、
- 市場の見立ての5G関連という目線が極めて近視眼的であるという事、つまりはその理解が浅いという事
- 自動運転やIoTという流れは着実に進んでいるが、どちらも進捗速度はそんなにまだ早くないといこと。総じてこうした新しい流れについて、市場の期待しているスピード感と、実ビジネスの時間軸の間には乖離があり
- 踊り場特有の収益ブレーキが掛かる場合がありそうだという事
ビジネス・トレンドを追い駆ける時は、このタイムラグとの向き合い方が投資収益獲得可否の大きなカギを握ったりする。
米国シカゴではシェアカーに使われているベンツやBMWが100台以上、ハッキングされて盗まれたという。自動車にもサイバーセキュリティ対策が今後ますます必要になるという事例ではあるが、これはFGが注目している自動車CASEという流れのC、すなわち「コネクティッド」のCとは次元の違う話だということはお伝えしておかなければならない。
現在、コネクティッドと呼んでいるのは、まだカーナビやエマージェンシー・サービスが通信に繋がっているだけの話であり、クルマの生命線である車内ネットワークは車外と繋がっていない。逆に言うと、カーナビデータの更新やエマージェンシー・サービスやコンシェルジュサービスが現在のコネクティッドの主流であり、2002年に登場したトヨタのアルファードなどにもオプションで購入出来たサービスの延長線上に他ならない。
当時から社内のハンズフリー電話でセンターのオペレーターを呼び出し、目的地の設定や周辺のお薦めスポット、或いは緊急時の救急車の自動手配(GPSによる車両位置の自動発信)などは機能されていた。
今回のそれは、現状レベルのネットワークをハッキングして、カーナビなどのGPS情報の部分を何かされて盗難にあったのであろう。つまり、居所を分からなくしただけ。
このことが示唆していることは、車内ネットワークの走行に関するECUに繋がるネットワークはいずれ通信機能を持たざるを得ないが、もしその時、充分なハッキング対策が出来ていなければ、とんでも無い大惨事が起きる可能性が大きいということである。
株主となってその企業と一緒に夢を見たいと思う会社10選

*上記表について:日本株、米国株からそれぞれ上限を5銘柄として絞り込み、ひと銘柄当たりの投資余力を10百万円として、株数を計算。売買手数料は証券会社によって違うので考慮していない。ビジネストレンドや各企業の状況により適宜入れ替える。ロスカット、益出しルール等の設定はしない。
まずはMF10Cのパフォーマンスチャートを下記にご紹介する。全体に今週はラインがうな垂れている。一番ひどいのはグレーのラインで示されたCompany_Cことザイリンクスである。一日で117.1%水準から97.1%まで急落した。Company_Aことエヌビディアも、一旦23日に121%台を回復したが、半導体関連銘柄の下押しに付き合って週末は113.2%である。何とも胃が痛い一週間であった。以下、個別に見ていくことにする。

個別の企業に関わるニュース・コメント
① 住友電工(F)
決算発表はGW後の5月10日15時。あまりに横ベタで動かない株価を見ていると、決算発表で何が出て来るのか非常に気になるところである。直接住友電工に関わる情報は何も出てきていない。
ただ4月26日にデンソーとアイシン精機が決算発表をしており、そこからある程度のことは類推出来る。まずひとつ言えることは、3社とも完全にバリュー銘柄扱いで安く放置されているということ。この考えの背景にあるのは日経新聞21日朝刊一面(https://www.nikkei.com/article/DGKKZO43942810Z10C19A4MM8000/)のような、短絡的な分析がコンセンサスに影響しているからだろうと思われる。
参考までにアイシン精機の決算説明会資料を見て欲しい。これはアイシン精機の専門分野であるパワートレインの市場予想であるが、クルマには一台に一個載っているのは当然の話。左側のチャートの説明にあるように、中国市場を中心に2年遅れと期ズレはあるが、間違いなく市場は成長している。

次にこれがCASEのEである電装化に関わる部分で、電動化分がどの程度に伸長するかを示している。2018年や2019年をスタートとすると、分母が小さいので変化率で示せば大きく見えるが、まだ立ち上がり期であることが良くわかる。

一方で、日本電産の決算説明会資料で見せられたのがこれ。たぶんこれを見た人はEVや次世代ブレーキ用モーターなどは、自動車業界から元民生用電機の業界に取られていくイメージを抱かれても仕方あるまい。ただFY2020についても、FY2025についても永守節は自信満々に聞こえても、あくまで「目標」であることに留意してほしい。

ということで、5月10日の決算発表が楽しみである。
https://test.fundgarage.com/4384/
② デンソー(G)
26日に2019年3月期通期の本決算を発表した。まず着地がこの最後の3か月でどのように変わったかだが、まず第3四半期決算発表時に示した通期見通しがこれ。すべて各期の決算短信から抜粋している。これらはIR情報の決算短信のリンクから取得することが可能なのは言うまでも無い。

直近に公表されている業績予想からの修正の有無が有となっているので、10月31日に発表した通期見通しを確認すると以下の様なものだ。

僅かに10月31日発表の通期見通しから下方に微修正している。実はこの期も修正の有無が有となっているので第1四半期発表時(7月31日)時点を見て見ると、10月31日時点で通期見通しを微増に微修正していることが分かる。
そして最終的に26日に発表された本決算の着地結果は下記のようになる。上段がそれ、下段は昨年分である。

お分かりの通り、全項目にわたって未達で終わっている。ただ昨年よりは売上収益は伸びているのも関わらず、各利益項目は昨年よりも低い水準だ。
これについては、決算説明会資料に次のようなスライドがある。これが定性的な説明。

そして次が定量的に営業利益の増減要因を対前年比で説明した資料となる。前期と当期、それぞれ一過性の要因を除いたApple to appleで比較している。つまり本質的には△307億円の減少だということで、あらためて決算のポイント1を見て、なるほどねということになる。

そして来期であるが、売上収益は2.6%増ながら、利益項目は概ね約20%の増益となる。

これを受けて、26日の株価であるが、終値は4853円。一株当たりの純資産は4640.36円なので、PBRは1.05倍、EPSは393.61円なのでPERは12.33倍である。ヒストリカルなPBRやPERの位置からすると、株価は7000円台を目指してもおかしくはない。
また私が伝統的にMy四季報で使う計算式「(株価-BPS)÷EPS」では現状0.54倍。これも仮にヒストリカルな平均値に戻ったら、やはり6000円台は越えて来る筈である。
https://test.fundgarage.com/4386/
③ ローム(H)
ロームの決算発表は5月8日、GW明け後である。株価はこのところ堅調である。
また23日には中核事業である半導体素子事業の市場シェア拡大などを目論んで、パナソニックからダイオード及び、トランジスタ事業の一部を譲り受けることを決定した。この分野は自動車、産業機器市場をはじめとする幅広い分野で継続的な市場の拡大を見込める分野であり、そこへの布石と取ることが出来る。
https://test.fundgarage.com/4415/
④ 村田製作所(I)
4月26日に2019年3月期の本決算を発表した。正に決算説明会資料のトップで示されているように、終わった期については、申し分ない決算を現在の環境下で着地させてくれたと思われる。何と言っても、売上高、当期利益ともに過去最高を更新したのだから。

しかしながら問題は今期2020年3月期(2019年度)の予想である。今期決算予想に触れるコメントの中で「操業度の低下や減価償却費の増加により、営業利益2200億円と同比17.5%の減益を計画」とあるのを見て、「電子部品のトラップにはまってしまった」と正直ベース思っている。成長している時の電子部品の村田製作所のような会社は、生産能力の増強をしながら常に走り続けている。
操業度が120%超などと言うこともよく起こるからだ。ただ、2019年度の上期の様に市場が電子機器の生産調整や電子部品の在庫調整に及ぶと、途端に減価償却費などが先に重くのしかかってきてしまう。これはよくあることで注意をしないといけないのだが、市場がこの踊り場の状態をどう評価してくれるかは、GW明け後にふたを開けてみないと分からない。

どう見ても中長期的には何ら不安の無い話である。今期も更に増産合理化投資や工場棟の建設に3000億円も投入するのだから。
下の製品別売上高概況などを見ても、コアであるMLCC(積層セラミックコンデンサ)やMEMSセンサはカーエレクトロニクス向けなど、狙い通り好調であることが分かる。

但し、現状の一株当たりの純資産の2507.11円、今期予想の一株当たりの当期純利益265.72円から計算されるヒストリカルな適正株価は、正に現値界隈。幾ら村田製作所が大風呂敷を広げる癖が無いと雖も、アップサイドに絵が描けないのは事実。損切りしてまで投げる必要は無いが、投資効率から言ったら入れ替えることが無難かとも思い始めている。
https://test.fundgarage.com/4418/
⑤ ソフトバンクグループ(J)
決算発表は5月9日である。
24日付の日経新聞の報道によると、何かと噂の多い中国通信機器最大手のファーウェイが最新スマートフォン向けに独自に設計した半導体が、米アップルの「iPhone」用と並ぶ世界最先端の性能を持つことが分かったとある。これはクアルコムなど大変かもな、と思いつつも、同社の半導体設計はARMアーキテクチャーであるという。ARMはソフトバンクグループの傘下である。どっちに転んでも、ソフトバンクグループには収益につながる話である。
日経新聞の記事は下記から参照
(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44144610U9A420C1MM8000/)
https://test.fundgarage.com/4420/
⑥ Nvidia(A)
テスラが自社の「Tesla Autonomy Day」で、新たな自動運転車向けのコンピューターのスペックを公開し話題になりましたが、早速その内容について、比較対象に挙げられたエヌビディアがきちんと反論しています。
是非、面白いのでご覧ください(https://blogs.nvidia.co.jp/2019/04/25/tesla-self-driving/)
アナリストの評価は3か月前と変わっていないが、何故かHOLDでレーティングを始めたアナリストが月毎に増えている。

https://test.fundgarage.com/4422/
⑦ Western Digital(B)
決算発表は4月29日。最近の市場動向からやや落ち着かないけれど、データが爆発的に増えるという事実だけは全く不変なので、心静かに決算発表を待ちたいと思う。
直近に向かってBUYレーティングのアナリストが増えているのはHOLDからの鞍替え。良い傾向とみる。

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⑧ Xlinx(C)
24日の通常取引終了後に発表した2019年1~3月期決算は大幅な増収増益だった。ただ、データセンタ事業の不振などに懸念が強まった。株価は年初来で6割あまり上昇し、24日に上場来高値を付けていたため、利益確定の売りも出た。
決算内容として、売上高が前年同期比30%増の8億2836万ドル、市場予想(8億2600万ドル前後)を上回り、次世代通信規格「5G」関連の需要増を映し、主力の通信機器向けが74%増えた。また自動車関連も堅調だった。ただデータセンタ向けが7%減り、市場予想を大幅に下回ったことが市場の不興を買い急落した。
併せて公表した19年4~6月期の売上高見通しは8億3500万~8億6500万ドル。中心値は市場予想を上回っている。
次のURLから入って貰うと今なら下記の画面が見え、下段のリンクから決算発表後のカンファレンスコール(英語)を聞くことが出来る。
http://investor.xilinx.com/events-presentations

印象的だったのは、5Gで稼げたことに対するアナリスト達の反応。それは利益率が僅かに下がっているからなのかも知れないが、私に言わせれば「お金に色はない」し、そもそも売上も利益も市場予測をビートしている。中には5Gがもう終わる一過性のもので、データセンタの需要を取り込んでいないと駄目だ的な発言があったこと。
時々思う事だが、最近はアナリストの質も随分と落ちているような気がする。技術が分かる人が減っているのだろう。
ビクター・ペン最高経営責任者(CEO)は発表後の電話による決算説明会で強気の姿勢を崩さなかった。5Gについて「ごく初期の段階にすぎないので、私たちはピークには程遠い、ということも明確にしておきたい。5Gは非常に『野心的』であるためかなりの期間継続する。つまり、5Gは4Gよりもずっと大きな要因となる」と何度も繰り返していた。また「5Gは間違いなく成長の原動力であると考えている。そしてかなりの初期段階にあり、まだ終わっていないと指摘しておきたい」とも付け加えた。
アナリストレーティングは、BUYからHOLDに鞍替えした人が二人はいるが、BUYと見ているひともそれなりにいるということ。

リスク要因として考えられるのは、FPGAの大手であったAltera社を買収したインテルの今後の出方だと思っている。
https://test.fundgarage.com/4426/
⑨ Applied Materials(D)
決算発表は5月16日。
市場の見方は下の図が示す様に強気が多い。

ただ今回東京エレクトロン(8035)の決算が発表になったので確認してみたが、4-9月期についてはかなり慎重に見ている。下記の東京エレクトロンの決算説明会資料を見て欲しい。明らかに足元の期がボトムと想定している。

結果、東京エレクトロンも急落するとまでは言わないが、26日の決算発表前の終値17645円は市場が目線を先々にだけ持っていってくれて、足元は織り込み済みと判断しない限り、15000円台への下落は有り得そうだ。ただその場面は間違いなく買い場なのだが。
https://test.fundgarage.com/4428/
⑩ Check Point Software Technologies Ltd(E)
冒頭、シカゴでシェアカーのベンツやBMW100台がハッキングにより盗まれたという話題をお伝えしたが、このレベルの話ならば、所謂窃盗であり、それが直接に人命にかかわる話では無い。確かに犯罪に使われる可能性を記事では指摘していたが、それは副次的な問題である。
しかし、本格的に自動運転が普及するようになると、レベル3でも、自動車のメインの制御ユニットが繋がっているネットワークに、通信機(多分5G)が接続され、クローズドだった車載ネットワークがオープンネットワークになってしまう。つまり何時でもハッキングされる状態ということだ。
更に、クルマが常時V2X通信と呼ばれる、車車間通信や路車間通信を行って情報を得るようになるので、ここをハッキングされて愉快犯などに面白おかしくデータを混入されたら、死亡事故が誘発されることは間違いない。つまり路車間通信から本当は5M手前まで接近しているクルマがあるにも関わらず、近接しているクルマはないと情報を受け取ったとしたら、間違いなく事故になる。そうしたことを避けるためにもセキュリティ対策は無くてはならないものだ。
直近のアナリストの評価は次のような感じとなっている。

https://test.fundgarage.com/4430/
