銘柄探しの旅 日本株 ④

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銘柄探しの旅をする中で、何処に旅するのかを動機付ける大きなきっかけになるのは、経験や過去からの知識の積み重ねだけではない。藪から棒に訪れる企業が頭に浮かぶ場合もあるが、ふとしたきっかけで「調べてみよう」と思うことはよくあることだ。

その王道ともいうべきが「ビジネスショウ」の類である。「東京モーターショー」みたいな伝統ある有名なものから、半導体業界の為の「SEMICON Japan」などのように、それ自体の存在があまり知られていないものまで数多あるが、投資で成功することを志すのなら是非いとわずに足を運んでみて貰いたいものだ。

その中で今回多くのヒントをくれたのが1月に東京ビッグサイトで行われた「オートモーティブワールド2019」である。

「ビジネスショウの歩き方」は今後別途ご紹介するが、そのビジネスショウでインスパイヤされた銘柄が「ローム」「村田製作所」「日本電産」「アナログデバイセズ」「ウェスタンデジタル」「ザイリンクス」「STマイクロエレクトロニクス」「インフィニオンテクノロジーズ」である。

最初の3社が日本企業、次の3銘柄が米国企業、最後の2社は欧州企業である。実は私自身はどれも何度も現地訪問したことのある企業だが、あらためてこの「オートモーティブワールド」でお目に掛かって驚いたというのも本音である。

どれもショー会場の銀座4丁目(一番目につくところという意味)から、少なくともそれに並ぶ中央通りに面したところに出展していたからだ。

ローム(6963)も村田製作所(6981)のどちらも京都の実力ある電子部品メーカーとしては有名だとは思うが、どちらかと言えばハイテク系、すなわちスマホやパソコン、或いは通信ネットワークといった印象が強いのではないだろうか。

その村田製作所が目立つところに展示していたのがこれ。


Webに飛んで内容を確認すれば直ぐに「なんだこれ?」というのは分かるのだが、まずは証拠写真(実は備忘録がわり)をパチリ。ブースではミニ・プレゼンテーションも行っていて、まずひと通りの知識は仕入れることが出来た。

ロームの方がこれ。


実はこれには伏線があって、昨年12月に行われた「SEMICON Japan 2018」で、そんなに派手なブースではなく、こんなパネルだけを出展していた。


同じ意味のものなのだが、写真の右下に注目して欲しい。ロームのブースで出展されているものに「TOYOTA」の文字が見えるだろうか。

これすなわち、トヨタ車に使われているという意味である。自動車部品に係る電子部品にとって、これがあるのと無いのとでは雲泥の違いというのがこのサインである。すなわち採用済みということなのだから。

折に触れ何度もお伝えしていると思うが、自動車部品に求められる品質と、民生用と呼ばれる一般のハイテク電機の部品の求められるものとでは、実に天と地ほどの開きがあると言っても過言ではない。

自動車部品は寒暖差の激しく、常に振動や衝撃に晒され、そして細かな微粒子や粉塵の中で15年程度に亘り問題なく利用出来なくてはならないからだ。3年毎に故障するという意味で「ソニー・タイマー」などと以前揶揄する言い方がされたこともあるが、それでは駄目なのだ。

という事で、まずは村田製作所(6981)のウェブを訪ねてみよう。

両社とも業種分類をすると電子部品の会社。電子部品というのは、数多の電気製品に使われているが、その姿を実際に目にすることは私のように分解することが好きだったり、パソコンを自作したりするようなオタクでないと、直接的にものを目にすることは滅多にない。

正に縁の下の力持ちなのだが、実は日本製の電子部品は世界的に見て極めて高い技術力によって、その高品質が認められており、欧米勢はもとより、アジアの強豪の中にあっても常に一歩リードしている製品を作り続けている。そして何故か京都に本社を構えていることが多い。

まずは村田製作所。前述のような事情から、いきなりWebページのトップを見に行っても一般の人にはちょっと遠い存在に思えてしまうかもしれない。なので、最初に見て欲しいページを敢えて指定すると(http://corporate-brand.murata.com/business.html)ここらあたり。たぶん、「何をしている会社なのか?どんな製品を作っているのか?」という事はお分かり頂けると思う。

ページをスクロールして貰うとこんなコメントが出てくる。「スマートフォンなどの通信機器向けでは超小型品や小型大容量のコンデンサが、カーエレクトロニクス分野では自動車の電装化の進展で高信頼性のコンデンサが、さらに需要を拡大しており、ムラタの強みが発揮されています。」という事である。

積層セラミックコンデンサの適当な写真をお見せしたいのだが、非常に小さな部品でもあるので、私のパソコンにつけたインテル製CPUのCorei7の写真で、利用状況の一例としてご紹介する。


これはCPUの裏側で、周りの金色のドットが所謂LGA(Land Grid Array)と呼ばれる接点部分で、その真ん中に四角い小さなゴマのように見える粒々が積層セラミックコンデンサである。0.6ミリ×0.3ミリ程度のものから、より小さいものまでいろいろあるが、これが無いと殆どの電子機器は役に立たない。

さて、恐らく製品の微に入り細に入りを掘り込んでも仕方ないので、ここでは肝心な投資家情報を見に行く。丁度「My Favorite 10 Companies」の絞り込みをしていた頃に2019年3月期第3四半期決算の発表もあり、その決算関連の資料が非常に参考になる。投資家情報からIRライブラリに飛んでいただき、決算説明会・会社説明会というところが情報の宝庫である。(https://www.murata.com/ja-jp/ir/library/meetings

実は同社は自分たち自身で「分かり難い会社だろうな」と理解されているので、決算説明会以外に、会社説明会というのもアナリストや機関投資家向けに行っている。

そこで2018年11月29日に行われた会社説明会のプレゼンテーション資料を開けてみると、最初から注目のビジネストレンドの話になり、はじめのうちは車載関係の話で埋まる。まずはFGの考え方と、村田製作所の考え方が同じであることが確認出来るのがこれ。


正にパラダイムシフトが起こっており、新たな技術や新たなアプリケーションが何で、どう戦っていこうかの方向感が明示されている。

MLCCとはMulti-Layer Ceramic Capacitorの略で、Capacitor(キャパシター)とはコンデンサのことである。ご覧いただける通り、需要予測は株式関係者が大好きな右肩上がりのチャートになっている。そして何が車載用途だと求めらるのかが明らかにされている。


もう一枚、見て頂こう。それがこの車載における取り組み事例というもの。ビジネスショウでみつけたMEMSセンサも先進安全というところにきっちりと記載されている。


ただ正直なところ「My Favorite 10 Companies」に加えるかどうかを最後まで悩ませたのも村田製作所である。何故なら、1月31日の決算発表と同時に決算説明会を行っているのだが、ライブ配信はされなかったし、何より決算説明会のQ&Aを説明会終了後速やかにWeb掲示しますと表示しておきながら、いつまで経っても掲載されなかったからだ。

当然、IRに問い合わせるべくコンタクト先を探したが、これがとても見つけづらい。更にやっとみつけてIRに「何時掲載されるのですか?」とお問い合わせフォームから問い合わせたにもかかわらず、返事が来るのに1週間以上も待たされた。返事が来たのは「本日、掲載しました」という掲載日当日、つまり約10日間以上も待たされたからだ。

正直、個人投資家の株主を軽視しているように思えてならなかった。今現在は掲載されているのでご紹介するが、株価は決算発表の翌日から上昇していた。

それこそ同社とは現役のファンドマネジャーの頃から20年来の付き合いになる大好きな会社のひとつであったし、情報だけを得る為なら幾らでも手立てはあるのだが、敢えて個人投資家の立場にこだわってみると、フェアーディスクロージャーの精神はどうなったのかなと思わざるを得なかったからだ。

ただ決算説明会をライブ配信や動画配信をしていない日本企業はいくらでもあるし、Q&Aセッションまでを開示している企業は更に少なくなる。だからこそ、村田製作所にはそこまでして欲しかったという思いが強いのかも知れない。


その問題のQ&A、ご覧頂けるように、車載関連も5G通信関連の先々についても、正に機関投資家や証券アナリスト達が注目しているから質問が飛んでいるのであり、それに対して期待が持てるという内容の答えを返している。

同種のビジネスをしている企業には太陽誘電(6976)やTDK(6762)がある。

太陽誘電は2月8日の決算発表後にストップ高を演じたような会社だが、それでも何故村田製作所をリストに入れたかと言えば、やはりMy四季報を使って2011年3月期の決算内容から2020年3月期までの収益予想など分析した時、その財務の安定性を評価せざるを得なかったからだ。

太陽誘電は11年3月期、12年3月期に赤字を計上しており、17年3月期もかなり厳しい状況であったことが伺える。以下に両社の過去の決算状況をお示しする。

村田製作所(6981)

太陽誘電(6976)

 

関連銘柄探しの旅 ⑤につづく(近日公開予定)