FG Report Premiun 1月20日号

INDEX

所感/雑感

米中は貿易協議の「第1段階」合意に署名し、中東情勢は影を潜め、CES2020の話題やTSMCの決算などが市場の楽観論を助長した先週、最も上昇率が高い株価指数はNASDAQとなった。それに比べると東証TOPIXはその1/7程度の上昇率だ。マザーズ指数などは寧ろ下落している。世界市場の温度感と、日本市場の温度感は随分と違うように思われる。ただそれに違和感は無いのが正直な感想だ。

日米各株式市場の先週の終値と週間騰落率

CES2020の熱狂と、TSMC(台湾積体電路製造)の好決算が半導体関係をブーストした

前週ラスベガスで行われたCES2020については前回触れさせて頂いた。どうだろう、ご自身でそのニュースや記事を検索などされただろうか?幾つかのテーマの中で柱になっていたのは5Gであったことはお伝えしたが、16日に行われたTSMCの決算発表でも、5G関連の伸びが業績を後押ししたことが伝えられた。5Gの端末に使われるCPUはQUALCOMの「Snapdragon」が100%シェアだということはCES2020の中でも説明されていた。

そのQUALCOMの半導体生産を受託しているのが正にそのTSMCだ。だからTSMCが5G関連の伸びが後押ししたと言っても何ら不思議ではなく、寧ろその裏がとれたということになる。TSMCが受託生産している5Gにも使われている半導体はFPGA、これはザイリンクスのものだ。

一方で、TSMCの重要な顧客の中には現在AMDがいる。リサ・スーCEOが「CPU Ryzen は7nmで作っており、完全に競合の先を行っている」と大見得を切れるのは、TSMCの生産能力が高いからだ。インテルの方は、またトラブルが出たらしいことが報じられていた。

日本企業で恩恵を受けるのはどこか?

世の中の大きな流れを掴んだとして、その流れを実際の自分の投資に活かそうとすると、はっきり言って日本株でそれを実現するのはかなり難儀な話になる。東証一部上場企業は先進国の中では断トツに多い2,131社もあるが、こうした世の中の最先端を走り、世界経済をリード出来る力があるトップ企業は極めて少ない。かなりこじつけた関連銘柄と市場が勝手に位置付けているか、或いはかなり派生的な部分で関わっているかなどである。

時々「日本株でEB債の参照銘柄に使える何か良いのは無いか?」という相談を受けるが、実にこれが難しい。この辺りの流れにドンピシャリの銘柄がそう多く無いからだ。特定の分野で特定の技術に強みを発揮する企業を見つけるしかない。

ただその一方で、案外マネー誌などを見ると「5G関連の本命銘柄はこれだ!」みたいな記事があったりする。正直な感想を言えば「どれだけこじつけているのかな?」と思ってしまう。

勿論、5G向け用途に限らず電子部品の分野では日本は頭抜けている。ただその他の分野では、多くのビジネスショウに顔を出し、出展している企業にインタビューしてみると、多くが下請けやディストリビューターであったり、かなりニッチなところを攻めている応用アプリケーションだったりするから毎度がっかりしている。

日本景気は悪いのか?

左傾化したメディアの報道のせいなのか、或いは本当に事実なのかは軽々に断言することは出来ないが、メディアが報道する限り、日本の景気は相当悪いらしい。それは本当なのだろうか?日銀の支店長会議などの話が報道されたが、「消費税が上がったから・・・」とか「韓国からの旅行者が減ったから・・・」とか、否定的な映像がNHKでさえも沢山利用されていた。更に昨年の災害による農産物への被害も謳われていた。だがその映像を見た時に違和感があったのは「20%ぐらい減収になります」という農家の人のコメント。私の正直な印象は「おいおい、20%減収の企業ぐらい、毎年なんぼでも出て来るぞ。それに対応するのが経営者じゃないのか?」となってしまう。

米国からの輸入牛肉の完全が下がることなどについても、国産牛の農家が悲鳴を上げているというが、それは従来と同じ方法しか考えていないからでは無いのだろうか?同じことが減反政策続くコメ農家にたいしても言える。先祖代々守ってきた農地を手放したくないということなのか(元々の所有者は農家でない。昭和22年にGHQ指揮の下、日本政府によって行われた農地の所有制度改革により現在の農家の所有物となった例が多い)、減反政策で休耕したまま荒れ地にしたまま補助金を貰っているが、寧ろ新規に農業法人を作り、トラクターなどが動き回り易い区分けをし直した大規模農業を取り入れ、ブランド牛やブランド米の輸出を促進したら良いのではないだろうか? 雇用だってさらに伸びるであろうし、農家の高齢化問題を解消することも出来る。ただそこが選挙の票田であれば、政治家は決して無理をしない。

本当に美味しいお米、美味しい牛肉ならば、中国などに多いに売れる筈だ。大間の黒マグロが良い例だ。もしそうでないなら、農業保護政策の下に、国民に美味しくないものを高い値段で買わせていることになるのだから。

NT倍率は上昇傾向にあり、TOPIXが出遅れている。

日経平均株価÷TOPIXで示されるNT倍率が再び上昇傾向にある。値嵩株が買われている証拠だが、先物主導で釣り上げられている感じがしないでもない。現状水準は過去1年間では最高水準だ。

米国のイールドカーブはベアフラット化という動きをしている

本来金利は長期になればなるほど高くなるので、右肩上がりになるのが通常だ。だが当面景気が良くなる話は無いなと思えば金利も上がらない。よってこうした時の金利は、1年も2年も5年もそう変わらなくなってくることがある。

下のチャート、赤線で示したのが週末17日の米国債のイールドカーブだ。毎日手入力で各期間の金利を入力して体が覚えるようにしているのだが、所謂「ベアフラットニング」の兆候が見て取れるように思われる。

ただその一方で中国コンテナ運賃指数は2015年以来の水準に急上昇してきたこと、世界の輸出動向を占う銅価格もここ2カ月で7%余り跳ね上がったこと、そしてユーロ圏の購買担当者指数(PMI)は、とりわけ輸出に依存する地域で、製造業が依然として弱いことを示したが、新規輸出受注はここ数週間にじわりと回復していることなどがあり、市場参加者の行き過ぎた懸念で終わるのかも知れない。

注目の右肩上がりのビジネス・トレンドとトピックス

前述したようにNASDAQ指数が非常に好調だ。その背景にあるのは、言わずと知れた半導体関連銘柄の好調がある。まずはいつものようにフィラデルフィア半導体指数を見てみよう。

2019年初めから続いている上昇基調は継続しており、目下のところ最高値を更新している。CES2020の内容やTSMCの決算を見れば、このチャートの動きは当然と言えば当然なのだが、「市場はかなりな部分までを織り込んでいる」との慎重論はいつものように囁かれているのは事実だ。しかし本当にそうだろうか?何を何処まで織り込んだと言うのだろう?

下記にフィラデルフィア半導体指数に採用されている30社を全て列挙した。この中の何社までをご存知だろうか?当然私は全てよく知っているが、如何だろう?

お馴染みの銘柄もあるだろうが、知らない銘柄もある筈だ。全部知っておいて絶対に損は無い。半導体メーカーのみならず、半導体製造装置メーカーも入っているし、何よりこの先も市場のリード役になる銘柄が殆どだと思われる。

AI、5G、IoT、クルマのCASEと言われる流れの中で、多くの多種多様な半導体が使われるが、当然その為には半導体製造装置が重要な役割を担う。そして今、半導体製造技術は大きな過渡期を迎えている。

過去何度もそう言われながらも延命されてきた「ムーアの法則」(18か月で半導体の集積度は2倍になる)だが、ここに来てぶつかっている壁はかなり厚そうだ。それを乗り越える方法として、従来は2次元の考え方だったものを3次元に捉える方向に変わって行きつつある。またAMDが採用しているように、ひとつの半導体パッケージの中に複数のシリコンチップ(ダイ)を載せるというような動きも盛んである。勿論、従来通りの微細化の流れも継続している。それは誰がメリットを受けることになるのだろうか?そうひとつは半導体製造装置メーカーである。

日本には世界第3位の東京エレクトロン、第6位のアドバンテスト、第7位のSCREEN、第9位の国際エレクトリックそして第10位の日立ハイテクなどベスト10位までに5社も入っている。国際エレクトリックは米国アプライドマテリアルズに買収されるのでこの先は4社になるが、それでも秀でた技術を持っているのは確かだ。

しかし、かつてインテルがRDRAM(ランバスDRAM)と呼ばれる新しい規格のメモリーを標準化しようとした時に、そのテスターを作れる装置メーカーであるアドバンテストとヒューレットパッカードがしのぎを削って、両社が大相場を演じたのと同様、都度、技術の中で一番クリティカルになる部分の装置メーカーは潤うことになる。

そのひとつの証左が、現在微細加工で最もクリティカルな部分であるEUV露光装置のケースだ。これを供給可能なのは蘭ASML一社なので、同社の規模は急拡大し現状2位につけている。何せ1台が1億ユーロもする代物だ。

実はこの先、ミッションクリティカルな部分はエッチングを半導体洗浄プロセスになるという技術ロードマップがあるのだが、だとすれば、日本が2社で世界市場の約7割を握る分野だけに日本株も多いに期待出来る。最も高いシェアなのがSCREENで45%、次いで東京エレクトロンの24%と続く。こうした企業はウォッチしていく必要がある。

株主となってその企業と一緒に夢を見たいと思う会社10選

先週末に配当金データを入力したこともあり、こんな単純に買っているだけの銘柄群でも、日経平均株価の同期間の上昇率が15.0%、NYダウが13.4%とある中で20.49%という結果を残している。

実はそろそろ銘柄の一部入れ替えを検討している。若しくはゴールドマンサックスを真似て「コンビクション・リスト」のような形にしてみようかとも思っている。その方が見せられる銘柄も増やせるからだ。もし、ご意見・ご希望があれば私まで直接メールを送って頂きたい。宛先:k.oshima@test.fundgarage.com

*上記表について:日本株、米国株からそれぞれ上限を5銘柄として絞り込み、ひと銘柄当たりの投資余力を10百万円として、株数を計算。売買手数料は証券会社によって違うので考慮していない。ビジネス・トレンドや各企業の状況により適宜入れ替える。ロスカット、益出しルール等の設定はしない。

個別の企業に関わるニュース・コメント

①  住友電工

2019年度第3四半期の決算発表は2月5日の15:00から行われる。

下にあるのは住友電工の窒化ガリウム基盤の仕様書だが、同社はこの他にもGaAs基板(ヒ化ガリウム基盤など、半導体の一種ではあるがパワー半導体やレーダー用に用いられる特殊な基盤を作っており、自動車のCASEなどの流れの中で、にわかに市場の注目を集め始めても居るようである。

[blogcard url=”https://test.fundgarage.com/premium/mfc10-1/”]

②  デンソー

2019年度第3四半期の決算発表は1月31日に行われる。

1月7日、次世代のコックピットシステム開発に向けた協業を米国クアルコムと行うことを発表した。

発表によると

「カメラやセンサーを用いた高度運転支援機能やエンターテイメント機能などが車両に搭載されることにより、車両がドライバーに伝える情報量は格段に増えています。必要な情報を確実にドライバーに伝えるためには、メーター、車載マルチメディア、ヘッドアップディスプレイなど複数のHuman Machine Interface製品を連携させ、車両周辺やドライバーの状況に応じて適切な表示や音を出すことが求められます。

デンソーは、クアルコムテクノロジーズの通信技術やスマートフォン向けに開発された半導体、ソフトウエアなどの情報技術と、自社のHMI製品に関する車載要件、機能安全、品質、セキュリティ技術の知見を掛け合わせることで、次世代のコックピットシステムの開発を加速します。具体的には、統合コックピットシステム「Harmony Core™」をベースに、次世代のコックピットシステムのアーキテクチャーを開発し、コネクティッドカーを想定した外部クラウドサービスやドライバーステータスモニターなど新たなHMI製品との連携、ドライバーと乗客の個人認証、ディスプレイの操作性向上などを可能にして、ユーザーの利便性向上を目指します。」

とある。これは面白いことになったと思う。

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③  ローム

2019年度第3四半期の決算発表は2月5日の15:00から行われる。


東京ビッグサイトで行われた「カーエレクトロニクス技術展」に行かれた人もいらっしゃると思うが、ロームが如何に車載を主力に据えているかを垣間見せるものであった。

また15日にはSTマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は、シリコンカーバイド(SiC:炭化ケイ素、以下、SiC)ウエハをロームグループのSiCrystal GmbH (以下SiCrystal)から数年間にわたり、供給する契約に合意したことを発表した。

SiCパワーデバイスが急速に成長し需要が高まる中、本合意は、欧州においてSiCウエハ生産量シェア1位のSiCrystalから、多種多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーのSTに向けた1億2千万ドルを超える先進的な150mm SiCウエハの供給を対象としています。

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④   村田製作所

2019年度第3四半期の決算発表は2月3日の15:00から行われる。

村田製作所も昨年同様、第12回「カーエレクトロニクス技術展」に出展した。主な展示物は、AD・ADAS、Connected、そしてxEVである。詳細は専門的になり過ぎるが、興味のある人は同社のWebページを訪ねれば、あらかたの詳細は分かる。

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⑤   ソフトバンク・グループ

2019年度第3四半期の決算発表は2月12日から行われる。午後4時からは決算説明会の模様をインターネットでライブ中継する。

インドネシアが計画しているジャカルタからカリマンタン島への首都移転計画に最大400億ドルを投資することを提言したようだ。金額の定時に関してソフトバンク・グループ側は否定している。意図は、人工知能(AI)を使った新たなスマートシティーと最新技術、クリーンシティーの支援にあるようだ。

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⑥  Nvidia

1月16日にJPモルガンヘルスケアカンファレンスがサンフランシスコで開催された。日本からもオリンパスや武田薬品などが参加したようなイベントだが、エヌビディアもプレゼンテーションを行っている。確かにAIがあって、画像処理があって、HPCのアクセラレーターがある同社なら、医療分野もこれからはお手の物だ。この分野の市場規模は自動運転の自動車が$10Tだとすると、$7Tにもなるようだ。因みにIoTは$14Tに対して、Cloud Computingは$230Bでしかない。とすると、医療分野の$7Tの規模感がわかるというもの。

上記はそのプレゼンテーションの中の一枚。人工知能と高速コンピューティングの登場により昔では出来なかったより小さく、より安価なセンサーが作れるようになったという。最早モバイルMRIは今や現実用のようだ。病院内に専用の部屋は無くとも、麻酔をかけることなく、生後3か月の赤ちゃんを検査できるという。当然、ゲノム創薬にも力を発揮する。エヌビディアの知らなかった一面を見たように思う。

Buyレーティングのアナリストが二人へりOverweightとHoldに移ったようだ。

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⑦   Western Digital

2020年度第2四半期の決算発表は1月30日のNY市場引け後から行われる。

年明けにサムスン電子の主力工場が停電したことを受けて需要が益々好転するという話もあったが、確かにセルサイドアナリストも格上げをしている。ゼタバイト時代におけるストレージのニーズは高まることはあっても低下することはない。それはHDDに対しても、SSDに対しても両方である。

あらためて同社の概要がわかる動画が下記のURLから見られるのでご参考まで。
https://youtu.be/dfB4pKUnoWY

アナリストの格付けはHoldからBuyに2人移っている。

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⑧  Xlinx

2020年度第3四半期の決算発表は1月28日に行われる。Webcastingは下記のURLから聞くことが出来る。昨年、市場の悲観論の払拭に一役買ったのは昨年のこの四半期決算発表だった。
http://investor.xilinx.com/events/event-details/q3-fiscal-year-2020-financial-results-conference-call

16日に行われたTSMCの決算発表で、5G関連の伸びが業績を後押ししたと伝えられたことは前述したが、Xlinxの半導体生産もTSMCが請け負っている。そうしたことから、ここで良い内容が発表されることを期待しておきたい。Xilinxは5G 無線および mMIMO の運用を支えるエンジンを提供している。ザイリンクスが提供する適応型 5G 通信プラットフォームは、mMIMO Radios や大型基地局/小型基地局の運用に対応する RF ADC/DAC および高速 5G NR を統合し、最高の効率性能を実現できる高集積シリコンを備えた業界唯一のソリューション。

今週はアナリストレーティングに変化なし。

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⑨  Applied Materials

2020年度第1四半期の決算発表は2月12日に行われる。

Ichor Holdings, Ltd. (ICHR)という半導体製造のプロセスツールの主要部品である流体配送サブシステム及びガスと化学物質配送サブシステムを提供する会社の決算が非常に良好で同社は株価は急騰したのだが、同社の売上の56%がLam Research社であり、32%がApplied Materialsからである。やはりこの分野の投資が加速し始めていることは、こうしたことからも見出すことが出来る。

今週はBuyに格付けし直したアナリストが2人増えた。

 

[blogcard url=”https://test.fundgarage.com/premium/mfc10-9/”]

⑩  Check Point Software Technologies Ltd

2019年度第4四半期及び通期の決算発表は2月3日に行われる。Webcastingは下記のURLから入ることが出来る。
https://edge.media-server.com/mmc/p/np2arnom

今週アナリストレーティングの変化は無い。

[blogcard url=”https://test.fundgarage.com/premium/mfc10-10/”]