FG Premium Report 5月11日号(コロナと共存する社会)

INDEX

週間回顧

分析通り、3月下旬を底値に市場は反発している。決して良くはない企業決算や最悪の雇用統計が出ようとも、市場は前を向いている。慎重論で投資行動を控えるならば勿論傷はつかない。だが投資で収益を挙げることも出来なければ、傷ついたポートフォリオを修復することも出来ない。やはり逃げずに続けることこそ、投資で成功する唯一の方法だと痛感する。

日米各株式市場の先週の終値と週間騰落率

普段なら市場もひっくり返るような米国雇用統計もぶっ飛ばす

週末金曜日に発表された米国雇用統計をロイター流の見出しで語れば「米雇用4月は2050万人減、大恐慌以来最大 失業率は戦後最悪14.7%」と1929年の大恐慌以来の悪化だという。確かに非農業部門雇用者数が前月から2,050万人も減少し、失業率が前月の3倍余りとなる14.7%まで上昇すれば「すわ、大恐慌の再来だ」と騒ぐ輩が出てきてもおかしくはない。恐らく今後コメントするエコノミストなどの中には、これをネタに慎重論を唱える者も多いだろう。

しかし、これを受けた米国市場は、株式市場も債券市場もそうした慎重論・悲観論とは異なった動きを示した。NYダウは+1.91%の上昇となり、S&P500も+1.69%、ナスダック総合も+1.58%の上昇と軒並み好調に推移した。日中足を見ればさらに面白い。雇用統計を聞いても殆ど下がった印象が無いからだ。当然、VIX指数(恐怖指数)は順調に低下、ついに30%を切って27.98%まで下落して終えた。

債券市場の方も、ゼロ金利政策開始以降、一度極短期の金利がマイナス圏に突入したこともあったが、今週は僅かではあるが長い方の金利は前週末に比べると上昇したぐらいだ。

日本市場も再び日経平均株価が20,000円台を回復した

日本市場も前週末比で日経平均株価が+559.74円(+2.85%)となる20,179.09円まで上昇し、TOPIXも+27.02pts(+1.89%)の上昇となった。背景にあるのは経済活動の再開期待だ。緊急事態宣言は5月末まで延長されたが、早い地域ではそれよりも短縮して終わる可能性がある。当然経済活動の回復期待は日本の事のみならず、欧米の事などが含まれているのだが、私は指数全体の戻りについては少々悲観的だ。落ち込むと言う意味ではない。戻りの勢いは強くなくなり、銘柄間の跛行色がより強くなるだろうと考えるからだ。

その理由はただひとつ。ご承知の通り、毎日Fund Garageのサイトには新型コロナウイルスの感染者状況を国別に、人口対比の数値も入れて、前日比を示す表を掲載している。私のエクセル上では既に二月分以上の日次データが蓄積されているし、手入力をしながら私の勘ピューターがディープラーニングをしながら、推論を立てている。

その結果何が言えるかと言えば、日本にはポスト・コロナと呼べる状況が来るかもしれない。ただ条件があり、引き続き海外からの渡航者は制限することだ。何故なら、海外の状況は決して上昇飛行から水平飛行に入って、降下態勢を取り始めたとは思えないからだ。寧ろ、エリアは拡大している。

『世界の新型コロナウイルス感染動向・国別データの分析』の見方

是非皆様には毎日「世界の新型コロナウイルス感染動向・国別データの分析(●月●日朝)」と共に、Fund Garageの公式Facebookのコメントにも目を通して頂けたらなと思っている。

そして現状のステージ迄きて、どこか一番大事かと言えば「ACTIVEな感染者数」の増減だ。メディアが大騒ぎしたがる感染者数や死亡者数の累計は、この段階に来たらば全く意味はない。感染者はやがて亡くなるか、回復して退院するかする。つまり感染者数累計から死亡者数と回復者数を差し引いた「ACTIVEな感染者(現状感染している状態)」がゼロになった時が、新型コロナウイルスとの戦いに人類が勝った時になるからだ。

だが国別に時々「ACTIVEな感染者数」が前日にマイナスになることがあっても、現時点で私が集計している43ヶ国でさえ、その前日比の合計は今尚(9日朝現在)+42,243人に及び、既に感染自体は187ヶ国に拡がっている。ならば回復者の数はどうかと言えば、まだ僅か一日に+28,815人でしかない。感染者がどんどん増えても、回復者がそれを上回る勢いで増加すれば、どこかの段階でACTIVEな感染者はゼロになる。現時点ではまだ増える一方だ。

そして経済回復の名目の下、また外出自粛に堪え切れなくなった人達が過去のような日常生活に戻れば何が起きるだろうか?きっと感染者の再増加だ。はっきりと断言しておくが、現段階において、ワクチンは開発されていない。来年の利用開始を目指すと志しの高いコメントは聞こえるが、目指すことと、確約されたこととでは全く意味がことなる。

またアビガンが徐々に「特効薬」かのような言われ方をしているようにも思うが、全くの誤解である。何故なら、所詮アビガンは現段階では治験薬だ。多くのメディアや勝手なコメントを垂れ流しにしている人達は、そもそも「治験」という意味を充分に理解しているのだろうか?治験薬が故、背に腹は代えられないギリギリのところで、多くの条件付きで利用が認められているに過ぎない。現に医療現場の医師達は利用に際してはかなり細心の注意を払っていると言える。ギリアドサイエンスが作ったレムデシベルの臨床に立ち会ったことは無いが、下手をすればアビガン以上に慎重な薬となるだろう。医師たちは副作用などが起きても決して医療訴訟などを起こされないことが担保されなければ決して簡単に利用はしたくない筈であり、またそんな医療訴訟など決してすべきではない。また医療現場の現実を見たら、通常の神経なら感謝以外に感じるものは無いと思うが。

話が横道に逸れたが、回復者の数の増加が減るかどうかは、現状では基本的に患者本人の回復力による。免疫力と敢えて言わなかったのは、自己免疫が強くなり過ぎることが、逆に肺炎や毛細血管に強烈なダメージを与えることが分かってきているからだ。「特効薬が無いので、本人の体力、免疫力が頼りです」という説明を聞く時があるが、現場では免疫力を押え込む治療も行われていることなど知る由もなさそうだ。つまり回復者の増加テンポの向上はそう簡単なことでは起こらないの現実だ。

一方で感染封じ込めの優等生であった韓国で新たなクラスターが誕生したと報道されている。低俗な付随情報に興味はないが、まだその状態だという事を理解しておくべきだ。だから「ACTIVEな感染者数」が減少傾向になるかどうかが一番の問題だ。

この先の動向のまとめ

半ば世論やメディアの論調、或いは都道県の知事レベルからの陳情や嘆願によって押し切られるように緊急事態宣言は延長されながらもなし崩しに解除されていく公算が日本でも高い。事実、このところ交通量は増えているようだし、我が街では常にお年寄りたちの闊歩する姿が目に付く。寧ろ、若い世代の方が慎重に外出を控えているように思う。(実はGW中の統計でも同様な結果が出たらしい)

更に、欧米でも徐々にロックダウンを解除すると言われているが、欧米各国の現状数値を見ていると、私はかなり不安を覚える。本当に解除して経済活動を復活させても良い段階を数値が示唆しているのかどうかである。ただ幸いにも、日本のように公共交通機関が、肩と肩が触れ合わなければ「空いている」と評価される朝夕の通勤電車を利用せざるを得ない国は少ない。またそうしたところはまだ解除されない方向性のようだ。また米国では自家用車の利用が増えている。マイカーならば他人と接触する必要性はないし、歩行中でも自然と未だソーシャル・ディスタンスを意識する人は多いという。

まとめると「ポスト・コロナ」を目指すのではなく、「コロナと共存する社会」を目指すという事にならざるを得ないということだろう。手洗い、うがい、マスク、ソーシャル・ディスタンス、そして可能ならばリモートワークの多用と言ったところだ。

従って、今後私たちは新たな生活様式の中で暮らすことなる。その為に必要なもの、不要なものははっきりとしてくるだろう。国際分散投資の中で株式のウェイト自体を変える必要は無いが、セクターは変えて行く必要があると思われる。

注目の右肩上がりのビジネス・トレンドとトピックス

新しい生活様式を考える上で重要なことは、日本と諸外国の新型コロナウイルス感染状況の違いを正確に理解することだ。この段階に及んで、まだPCR検査が足りてないだの、増やすべきだ、という議論は、視聴率を意識するメディアか、投票数を増やしたい政治家に好きなように任せておけばいい。医療現場の最前線で増やさないとならないというニーズは聞こえて来ない。PCR検査の正確性などをよく考えれば、今の日本はこのやり方を変える必要は無い。変な知識人の中途半端な知識が一番現場を疲弊させる。

尤もらしい「○○○○の専門家」みたいな人達が主張していた「2週間後には東京がニューヨーク化する」ようなことは起きていない。少なくともこの騒ぎが最初に起きた1月下旬から考えて約3カ月半、クルーズ船も受け入れたし、海外からの帰国も受け入れたし、鎖国は遅かったし、と政府が糾弾されるネタは枚挙に暇がなくとも、欧米、最近では旧東欧圏や南米、中東、アフリカからなどから見て、奇跡のような状態が続いている。

ただ心配なのは、この国の人でも「自制心をもって自律出来る人」が必ずしもすべての国民では無いという事だ。ごく少数でも乱れれば「蟻の一穴」と成り兼ねないことは充分に注意を要すると思う。

新しい生活様式のポイント(1)

ひとつ目のポイントは、日本国内と海外の状況は全く違うという事だ。少なくとも、日本の知財も含めて最大の貿易相手国である米国は、いちどパンデミック状態になってから、数値上は殆ど全くと言っていいほど、状況は改善していない。これは大変恐ろしいことだ。

是非前述した「世界の新型コロナウイルス感染動向・国別データの分析(●月●日朝)」の「国別新型コロナウイルスのACTIVE感染者数(降順)」を確認して欲しい。

一枚だけ『ACTIVEな感染者』の数でソーティングした図を転載する。これだけでも、感染者数の累計で見るものとは随分と印象が違う筈だ。

2020年5月10日朝作成分

第一位の米国は一国で100万人を超えるACTIVEな感染者があり、まだまだ日々2万人のペースで増加している。第2位の英国では人口も圧倒的に少なくなるが、そうは言っても18万人しかいない。ドイツは17万人の感染者数累計には達したが、同時に回復者が14万人にもなったため、亡くなった方も差引きして、実質現状で残された感染者は約2万人。それが日々減少していっている。驚くことに震源地の中国では、既に300人を割り込んでいる。

つまりビジネスの相手先によって、恐らく従来とは違ったきめ細かな対応と正確な状況把握をしないと、大変なことになるという事だ。

新しい生活様式のポイント(2)

ふたつ目のポイントは、日本国内でも、少ないといっても尚、1万人前後のACTIVEな感染者がまだいるという事だ。ここに集計されている数値は病院などに入院しているか隔離されている筈の人で、直接この人たちに触れることは無いだろうが、巷に隠れ感染者が全く居ない保証はどこにもない。老弱男女を問わず、だらしなく出歩いている人は沢山いるからだ。

だとすれば、仮に5月末に「緊急事態宣言」が解除ということになったとしても、これ幸いとばかりに以前と全く同じ生活様式に戻ったら、恐らく元も子もないであろう(世論の流れ的には、悪いシナリオの方に向かいそうだが)。つまり、首都圏の通勤満員電車は再現しない、カラオケボックスやナイトクラビングに行ったりしない、と言った、所謂「3密」の回避が大原則だ。また外出先でのトイレ利用時など、従来のようないい加減なものではなく、充分な手洗いなどの徹底などは言うまでも無い。

だとしたら、そのリスクに怯えてビクビク暮らすようならば、現状よりは状況が多少緩くなくなった中で、ある程度、現在と同じような生活を当面続ける必要が出て来るだろう。オンライン飲み会などは、予想以上に若い世代を中心に受け入れられているようだ。また感染経路を保健所に遡って説明出来ないようなところへは足を踏み入れないことだ。少なくとも、国内でACTIVEな感染者がゼロに近くなり、海外でも同様になってこない限り、安心はできない。

つまり第2波、第3波ということではなく、ダラダラと抜けきらないで一定水準の緊張感ある状態が続くと予想されるという事だ。仮に第2波、第3波が来たとしたら、その時は4月5月の状況が再現されるだけだ。

こうした考え方に基づいた株価醸成がナスダックでおこっている

実はこれは臆病者の私の私見だけということではない。正に、この四半期決算発表で多くのハイテク企業のCEOが語ったことであり、同時に既に年初来+1.66%にまで戻したNASDAQ指数が言わんとしていることだ。因みにNYダウは年初来△14.74%、S&P500は△9.32%、日経平均株価は△14.70%、TOPIXは△15.28%であり、マザーズも△8.32%、JASDAQも△16.78%だ。

NASDAQ指数が示している事(ITネットワーク需要の急増など)については再三お伝えしてきた通りだ。ただ先週発表になった東京エレクトロンの決算説明会の中で使われたスライドで、私が考えていることが誇大妄想狂では無いことが証明されるものがあったので、念のためご紹介しておく。

さて、データ社会への移行が加速するという考え方の裏付けをみたところで、それ以外の別の視点を考えてみたい。

  1.  公共交通機関が衰退し、自家用車の需要が復活する
  2.  学校の教育体制に大きな変革が起きる
  3.  Air BBのような民泊が衰退し、専業のホテル産業や旅館産業が嗜好される
  4.  正社員で運営されることの多い外食産業が嗜好される
  5.  VR(Virtual Reality)の需要が公使亘って拡大する
  6.  都心部のオフィス需要、タワーマンション需要が急減し、郊外の住宅が見直される
  7.  郊外のシェアオフィス需要の高まり
  8.  就職先人気ランキングの変化

などなどだ。要するに、他人との接触を最小限にする中で、より快適な就労、学習、エンターテイメントを追究し、失われたQOL(Quality of Life)の回復を目指すということだ。

現在就労していて、職務内容的にどうしても出社せざるを得ないという職業は、将来的には極めて少なくなるだろう。例えば銀行の支店の窓口。テラーカウンターに並ぶのはモニター画面とカメラとマイク、それに現金等の収受機械になるかも知れない。勿論、モニターの中に映る銀行員はその裏には居ない。顧客は画面に向かって用件を話、どうしても収受する必要があるものだけ下の機械で受け取る。スーパーやコンビニのレジが無人化する勢いも加速するかも知れない。商品管理、品出しはアマゾンのロボットのようなものが変わりに行う。街中の多くの掛かりつけ医の外来は、基本がクリニックと自宅になるだろう。レントゲンやCT検査、或いは血液検査などが必要な場合だけ来院する。歯医者がリモートのロボットアームに変わる日も、遠からず訪れるかも知れない。

近未来、と言ってもかなりな速度で急激にそう変わる可能性は高い。なぜなら、就労者がその仕事を忌避するからだ。少なくとも、これから社会に出ていく人達は、敢えて好んでそうした職業を選びそうもない。ましてや彼らは本当のデジタル・ネイティブだ。彼らはバーチャルな場で知り合った人たちとでさえ、普通に親しい人間関係を構築することが出来、そして時々、オフ会で繋がったりする。そんな時代の世代が、在宅や、最寄りの居心地のいいシェアオフィスを好まずに、敢えてリスクまで犯して満員電車に乗って都心部へ通勤する職業を好むとは思えない。

前述のように、過渡期的には郊外のシェアオフィスの需要も高まるだろうが、究極はリモートワークやオンライン学習を前提とした間取りの住宅が発達するだろう。当然IT機器がそれを担うところもある。現在ZOOMなどの背景映像を無料配布するサービスが人気だ。それは自宅のボロ隠しが必要だということと表裏一体と言える。ならば最初からその前提の間取りが求められるようになるだろう。都心のタワーマンションに比べれば、通勤の必要がなければ、郊外の住宅の方が同じ価格帯でより広い間取りの物件が手に入る。当然、自然にも恵まれる。よほど特殊なニーズが無い限り、通勤の必要性がなければ、六本木のど真ん中に住まないとならない理由は、少なくとも家族連れには無くなる筈だ。

既に海外からの渡航者の減少で、民泊経営者や副業でAir BBを行っていた人が資金繰りに窮し始めていると聞く。今後もその状態は続くだろう。だとすると、首都圏中心部の不動産需要は緩和されていく可能性が高い。

今週注目する米国企業の決算発表

  • 5月11日  オン・セミコンダクター(ON)
  • 5月13日  アリババ・グループ・ホールディングス(BABA)
  • 5月13日  シスコシステムズ (CSCO)
  • 5月14日  アプライドマテリアルズ(AMAT)

My favorite Companies List(株主となって所有したい企業のリスト)

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今週は東京エレクトロンの決算発表を受けてアップデートしました。