所感・雑感
米国の四半期決算発表はほぼ終了したが、まだ日本は続いている。先週は市場数値で幾つか記憶に残るものが示現し、今現在は市場が咀嚼に困っている段階であることが明らかになった。「DX」などの新しい流れが勝ち、そのまま「ニューノーマルの時代」に向かうのか、それとも結局は元の木阿弥で新型コロナ以前の状態に戻るのか。機関投資家などの多くはパンデミックの大きな混乱を終えて、各社の決算を見ながらポジション調整の仕方に逡巡しているのが今だろう。経営者の実業最前線の目に映る景色も、業態によって様々なようだ。こんな時こそ、日頃の運用ポリシー・投資信条の本質が試される。
日米各株式市場の先週の終値と週間騰落率

TOPIXの伸長ぶりが際立った一週間
TOPIXの週間騰落率が一番優秀な結果を残している表を見たのは久し振りだ。玉石混淆で石のふるい落としが進む中で、最もリターン・リバーサルが起こったのがTOPIXだったのだろう。つまり売られ過ぎの買い戻しだ。確かに例えばメガバンクの一角のPBRが0.3倍台というのは、どう考えても冷静な投資判断の結果とは思えない。利ザヤ縮小に不良債権引当金の増加による欠損が、メガバンクを核としたフィナンシャルグループで純資産の6割以上を毀損させる事態の発生確率はどの程度あるのだろうか?監督官庁も日銀もおり、金融機関サイドから見ると与信判断に困る融資を押し付けられているのだから、国家という援軍がついているのと同じである。
確かに政府の旗振りもあり、銀行は企業の臨時費用などの貸し出しに真剣だ。実際知り合いの経営者が某メガバンクにゼロ金利の融資をサウンディングしてみたら「是非ぜひ当行へお願いします」と米つきバッタのように頭を下げられたと笑っていた。市場参加者の多くは現在の超々低金利の環境下では利鞘ビジネスが伸びる訳が無いこと、無理に貸し出しをしたら、将来の焦げ付きの元になると思っている。ただそこまでメガバンクも日本政府も愚かではない。ましてやメガバンク3行はG-SIBs(Global Systemically Important Banks)だ。前述の種明かしをすると、信用保証協会が保証を付けるので、実質銀行は無リスクで貸し出すことが出来る。勿論、焦げ付いた場合には事務処理が繁忙にはなるが日常業務と言えばそれまでだ。こうした銘柄が戻れば、当然吊れ高するのもある。ただ今つれ高した銘柄は、再度振り落とされるのだが・・・・。
止まらない日経平均採用銘柄予想PERの上昇
もうひとつ嫌なサインとして見ているのは、毎日毎日7月31日を底値に予想PERが株価の上下変動とは関係無く、先週も上昇し続けていることだ。週末のそれは何と22.08倍にまで高まっている。PBRの方がフロアにはなるが、そちらも1.10倍までは上がっているので、NT倍率の水準訂正も併せて考えると、極論を言えば、10%は市場が下がってもおかしくない。予想PERで見積もるならば、より下値を覚悟しないとならない。これを「心配ない」と言い張るためには「四半期決算発表後に修正している通期見通しは、悲観的に見過ぎており、来年度の収益回復を既に市場は織り込んでいる」とでも言わなければならない。残念ながら、私にはそれらは恐ろしくただの詭弁に聞こえてしまう。

ただ誤解しないで欲しいのは、「石」が振り落とされればPERも下がって来る。当然日経平均の水準も下がるが、この場合は個別銘柄で投資対象が無いと言っているわけではない。
上下悲喜こもごものNASDAQが示しているこの先の動向
冒頭の表で示した通り、今週のワーストパフォーマーは何とNASDAQだ。まず下の図を見て頂こう。NASDAQ総合指数算出に影響の大きい上位銘柄の対前々週末の時価総額変動を分かるようにしてある。右から3列目の前週比とある項で、黒字ならば上昇に貢献した銘柄、赤字ならば足を引っ張った銘柄ということになる。アップルの頑張り(+641億ドル)を、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックで(△541億ドル)も食い潰している。

これら時価総額上位銘柄、 実は上から4銘柄(AAPL+MSFT+AMZN+GOOGL)で43.88%のシェアとなり、更にこれにFBを加えると48.42%に及び、ほぼNASDAQの動きの半分はこの5銘柄に掛かっていると言っても過言では無い。ただ以前にもお伝えしたように、この中に半導体関連銘柄はひとつも含まれていない。アップルは現時点で若干量の半導体は作っているが、感覚的にはまだ趣味程度の量だ。
下のチャートはこの上位5銘柄とNASDAQの動きを示したもの。ナスダックの上昇に年初来貢献しているのかいないのかがひと目でわかる。ただ今回見て欲しいのは、各ラインの最後の約2週間分程度のところだ。

どう見てもアップル(AAPL)だけが気を吐いている。7月末に決算を発表してから棒立ちしている。時価総額の14.19%を占める銘柄が爆謄したらその指数は当然急騰する。だが残るMSFT+AMZN+FB軍団(合計27.33%)が逆に下落しているので相殺されてしまっている。GOOGLは大手企業の広告が減りGOOGLクラウドだけが稼いでいる構図なので売られているが、同じ広告宣伝費がビジネスモデルのFBは、中小企業からも広告料が積まれているので、市場は同じビジネスモデルの両社を完全にポジティブとネガティブに分けて考えはじめたようだ。マイクロソフトは決算発表後はじり安を続けている。単純にクラウドの対前四半期比の伸びが悪かったからというのが当初の売り理由の筈だがもう少し市場が嫌がるようなものを抱えているのかも知れない。
アプライドマテリアルズとシスコシステムズのCEOコメントが教えるDXの現状
現地先週13日、世界最大手の半導体製造装置メーカーであるアプライドマテリアルズ(AMAT)と、その前日にはネットワーク機器最大手のシスコシステムズ(CSCO)が四半期決算を発表した。アプライドマテリアルズについては、実績もガイダンスも市場予想を上回り、株価はポジティブに反応(+3.92%の上昇)したが、シスコシステムズの方は決算発表前の$48.1から翌日は$42.72。(△11.2%)の急落となった。
シスコシステムズの決算内容も終わった期の実績は売上もEPSも市場コンセンサスを上回る良好な成績だ。売上は$122億ドル(市場コンセンサスは$121億ドル)、NON-GAAP EPSは$0.80(市場コンセンサス$0.74)。だが、ガイダンスで売上予想が9%ダウンの$12.2B、NON-GAAPのEPSは$0.69-0.71と発表してしまった。市場コンセンサスは前者が7%ダウンで後者が$0.76と共に未達となり、市場に売りを浴びせられた。
下記写真はシスコシステムズの主力製品シリーズのCisco Catalyst 9000 ファミリーのひとつ:キャッチフレーズは「Cisco Catalyst 9000 製品ファミリは、最新のインテントベース ネットワークを支えるエンドツーエンドの基盤となります。使いやすさと強力な可能性を兼ね備え、拡大するビジネス ニーズに対応します。ネットワーク新時代は、ワイヤレスに対応した設計にする必要があります。そして、期待に応えるために必要な有線インフラストラクチャに加え、Wi-Fi 6 標準規格を超えるものでなければなりません。」とある。

ではこの両社の決算とその後の株価の反応の仕方が何を意味しているかを考えてみよう。アプライドマテリアルズは半導体を作るための製造装置を開発・製造している。あの半導体業界の巨人インテルでさえも「もう製造工程をアウトソーシングするしかないのか?」と腹を括り始めるほどに、現在の半導体製造は高い技術力が必要だ。製造技術で競合他社に後れを取るようなことがあれば、世界最大の半導体の巨人インテルと雖も、AMDの後塵を拝し続け、遂にはビジネスモデルの変換さえ迫られる。因みに、過去にこの手の経営判断を誤ったことが、日の丸半導体軍団を壊滅状態へと導いたのは記憶にまだ新しい。1990年代半ばぐらいまでは、NEC、東芝、日立、富士通、三菱電機などほぼすべての大手総合電機メーカーがこぞってDRAM半導体を作り、世界の先頭を走っていた時代があった。
余談はさておき、勝ち続けるためには不断の設備投資と新技術の開発(成功するのが前提)が必要なのが半導体業界であり、今、この業界は大きな技術のブレークスルーが期待されている。実はこの部分をよく知って欲しいのだが、あまりに専門的過ぎると眠気を誘うだけなので、ここでの詳細言及はさける。ただ大きな技術革新が起ころうとしているが故に景気変動に応じて多少の緩急は付けるとしても、今は可能な限り全力投球のタイムフレームだ。それを享受出来るのが半導体製造装置メーカーだ。下記アプライドマテリアルズの決算説明資料のスライドのひとつがヒントになると思う。

その一方でネットワーク機器はどうであろうか?確かに今現在も多くの技術革新が続いている。5Gの陰に隠れてしまい、あまり話題になることはどうしても少ないが、WI-FI(無線LAN)についても、今WI-FI6という新世代に変わり、テレワークやリモートワークの時代には必要不可欠だ。おまけにサイバーセキュリティ対策は喫緊の課題で、これも日進月歩である。
COVID-19のパンデミックが始まってからの2四半期に関して言えば、テレワークやリモートワーク、或いは学校がオンライン学習に対応するために、まずは機器を取り揃えることを最優先で行ってきた。だが、ある程度我慢すればWI-FI6がなくても、5Gがなくても、既存設備で対応可能なことも確かであり、シスコのチャック・ロビンスCEOは「シスコの売上高の大部分は政府機関や中小企業からもたらされている。これら顧客の多くはコロナ感染拡大を受けたロックダウン(都市封鎖)に伴う景気減速で支出を削減している。」と現状の顧客サイドの状況を説明している。確かにそうであろう。全く想定外の収益ダウンと、それでも従業員の健康を守りながら少しでも収益を確保する為に予想外のコスト支出を余儀なくされているのだから。まず野戦病院が必要な時は何を置いても野戦病院を作るのが最優先だが、応急手当てを受け入れられるようになったら、他に必要な設備を確保したり、そもそも兵站の減少に備える必要性がある。
つまり、常に最先端技術の獲得が必要なビジネスの為に装置を提供している企業と、必要不可欠な装備ではあるが、最先端技術であることが必ずしも必須条件ではない製品を供給している企業の違いである。さすがにシスコシステムズを「石」呼ばわりする気は全く無いが、ピカピカの玉でもないので、プライオリティは後ろに下がるのかも知れない。
このユーザー側の視点は他のハイテク機器にも同様なことが言える。マイクロソフトがWindows7のサポートを終了させたからパソコンを買い替えた人は多いだろう。決して「Windows7の機能/能力では私のリクワイヤメントは満たせない」とパソコンの買い替えを決めた人は少ない筈。これは半導体にも同様に言える。DRAMメモリーがどうしても16MBとか、32MBとかは搭載されていないと仕事にならないとか、HDDではなくSSDで無ければ絶対に駄目という人は、一般個人レベルになればなるほど少なくなるし、ある程度処理速度が遅くなることを覚悟しているならば、メモリーの量も、高速メモリーも、ましてや入門レベルのSSDでも要らないだろう。データセンターの最先端がどの辺まで進んでいようともだ。
この辺の事は、メモリー半導体専業のマイクロンテクノロジー(MU)のCFOが先週Keybancが開催したテクノロジー・カンファレンスで余計なことを言ったが為に、ウェスタン・デジタルまで連れ安してしまった構図に極めてよく似ている。ただ私は誤解があると思っている。確かにリテールは上述の通りだ。だが、データセンタやエンタープライズというセグメントはインフラとしての採用技術レベルが最先端か否かが命取りになる。ましてやこれから益々大容量、超高速、超低遅延、低消費電力といった高いリクワイヤメントに振り回されるわけだ。AWSもAzureも、立ち止まれば、必ずどちらかが負ける。専門的過ぎるので敢えて用語だけ並べるが、どちらも同じメモリー半導体だが、DRAMとNAND Flashは全く別物だ。
この先のまとめ
これだけは先ず言っておきたいのは、市場の専門家と称してコメントしている人達がすべて本当の専門家では無いということ。それはNYのウォール街のアナリスト達でも同じだ。事実として、そうした立場の人として有名な人で、実際は運用経験など全く無いのに「ファンドマネージャー」を語っている人を少なくとも1人ならず知っている。ハイテク担当のアナリストなのに、技術については全く知識が欠落している人もいる(Q&Aセッションでバレバレ)。当たらないことが有名で「逆インディケーター」として揶揄されていた人も複数名いる。だからこそ、投資家には自分である程度は見極められるようになって頂きたいと常々思っている。どうやら今はそうした紛い物以外も含めて、多くの市場関係者が迷っているように思われる。
その背景にあるのは、今On Goingで進む技術革新だ。私が以前「こんなに面白い投資環境は20年振りかも知れない」とお伝えしたのを覚えているだろうか?或いは「今一度ファンドマネージャーに戻って最前線で運用してみたい」とお伝えしたのを覚えておいでだろうか?それは取りも直さず大きな技術革新があちらこちらにあり、大きな変化が起きようとしていたからだ。そこにCOVID-19のパンデミックが襲った。最初は単なる障害物かと思ったが、多くのシーンで寧ろアクセラレーターとなっている。
だがそうした技術革新の時は、往々にして「誤解」や「誤認」が生じる。金融市場に居るアナリストもファンドマネージャーも、専門知識は豊富であったとしても、決してエンジニアそのものではない。当然、最先端をリアルに垣間見ているわけでは無い。どちらかと言えば想像力が豊かな地道な努力家なだけな場合が多い。だから分からなくなる時がある。A社は良いと言ったが、B社は悪化していると言った。そしてC社はどちらでもなく未知数な感じだと言ったとする。さて、それをどう解釈すれば良いのか?普通は答えを出すために、更なる調査を行うしかないから余計に時間が掛かる。裏取りをしないとならないのは犯罪捜査も同様だ。
正に四半期決算発表がほぼ終わりになり、通り一遍に調べたり、CEOのコメントを聞いただけだと辻褄が合わないことが沢山ある。まだ謎解きには時間が掛かりそうな気がする。おまけに米中関係は亀裂が深まるばかりであり、米国大統領選挙も近づいてきた。COVID-19のパンデミックの行くへも定まらない。暫くはもたつく可能性が高い気がしてならない。
注目の右肩上がりのビジネス・トレンドとトピックス
最近自動運転に関して少しずつ動きが戻ってきた。実際はずっと動いているのだが、COVID-19のパンデミックのお陰で、多くのビジネスショウやイベントが中止になった。だからメディアが書いている記事の引用が、今でも1月頃のイベントからの引用がまかり通っているからおかしくもなる。本当は何か変化や前進があると外部の我々にはそうした機会でビジブルになってくる。その一方で、自動運転とは何か、どのレベルのことを言うのか、そして何がキー・テクノロジーになるのかなど、大人しく潜行している間にズレも生じていると思われるので、ここでもう一度整理しておきたいと思う。
自動運転レベルの6段階
自動運転というと1~5までの5段階と思われている人が多いが、実はレベル ゼロがあり、都合6段階が正解。このうち、レベル1とレベル2は運転支援と呼ばれ、レベル3以上が自動運転と呼ばれるステージになる。レベル5は正に完全自動運転ということになる。
- レベル0 ドライバーがすべてを操作
- レベル1 システムがステアリング操作、加減速のどちらかをサポート
- レベル2 システムがステアリング操作、加減速のどちらもサポート
- レベル3 特定の場所でシステムが全てを操作、緊急時はドライバーが操作
- レベル4 特定の場所でシステムが全てを操作
- レベル5 場所の限定なくシステムが全てを操作
もう少し各レベルを詳細に見ていくと・・・・。
レベル1 システムがステアリング操作、加減速のどちらかをサポート
1) 車線の車両が逸脱すると警報音を鳴らしたりステアリングに介入して元の車線内に復帰させるシステムか、もしくは2)先行車との距離を一定に保つために自動でスピード調整をするアダプティブ・クルーズ・コントロールとかレーダー・クルーズ・コントロールなどと呼ばれるもののどちらかを備えた運転支援レベルのクルマを指す。
因みに車速制御はアクセルコントロールの他に、ABS(アンチ・ロック・ブレーキシステム)のアクチュエーターに介入したり、シフトダウンを行って減速したりまで行う。
レベル2 システムがステアリング操作、加減速のどちらもサポート
上記レベル1の機能 1)と2)の両方を備えた運転支援レベルのクルマを指す。
実はここまでの技術は2000年には既に実用化されており、既に20年以上経った枯れた技術のひとつとなりつつある。事実、私が愛用するクルマにも10年以上前から搭載されており、非常に楽をさせて貰っている。ただまだ登場初期だったので、オプション装備として結構なお値段だった。
これ以下が自動運転となる。
レベル3 特定の場所でシステムが全てを操作、緊急時はドライバーが操作
システムが高速道路など特定の場所に限り交通状況を認知して、運転に関わる全ての操作を行う。緊急時やシステムが作動困難になった場合はドライバーが対応する。
レベル4 特定の場所でシステムが全てを操作
システムが高速道路など特定の場所に限り交通状況を認知して、運転に関わる全ての操作を行う。緊急時の対応もシステムが行う。
レベル5 場所の限定なくシステムが全てを操作
システムが場所の制限なく交通状況を認知して、運転に関わるあらゆる操作を行う。緊急時の対応もシステムが行う。従って、クルマからアクセルやステアリングホイールが無くなる。
ポイントは「運転に関わる全ての操作を行う」という部分だ。走る、曲がる、止まるの全てだ。ということは、先行車に追随するだけではなく、普段はドライバーがしている安全確認をしながら車線変更を行い、加速し、追い越し、そして元の車線に復帰するか、或いは復帰しないままに暫く追い越し車線を走行するのかなどをシステムが判断して、行動する。ドライバーには死角になり易い位置に追随しているバイクなどにも、きちんと配慮する。濃霧の中、強い逆光の夕陽などの中、飛んでもない土砂降りの中、人間に変わって「安全」に全てをこなさないとならない。
日本の高速道路は車線を示す白ペンキも非常にきれいに塗装されている。あれを視認して走ることは容易い。ただ米国のフリーウェイを運転した経験がある人はご存知だろうが、一定間隔で打ってある筈の鋲のような目印が数か所連続して外れていて、それを追い続けるなど容易ではないところが沢山ある。兎に角米国のフリーウェイは整備が悪い。ドイツのアウトバーンはまだ日本の高速道路に近い。ただ大きな違いは、制限速度の標識で速度が変わると、もれなくブレーキを踏んででも速度を全員が速度を落とすことだ。制限速度無制限の区間がいきなり100キロ制限に変わると、一斉にそこで皆ブレーキングして減速する。日本ように+20キロまでは大丈夫で、ダラダラと減速する文化はない。これらすべての状況に対応しないとならないのがレベル3以降だ。
各自動運転レベルにおけるハードル
既にレベル2までは実用化されて枯れた技術とも言えるので、ここで敢えて言及するまでも無いので省略する。レベル3については、世界で初めてAUDIがA8でこの機能を搭載したが、本国ドイツでも法律の壁により利用することが出来ず実用化はされずお蔵入りとなった。日本国内では2020年4月1日の「道交法」と「道路運送車両法」の改正でやっと公道上を「レベル3」のクルマが走れるようになったことあり、ホンダの「レジェンド」が一番乗りとなりそうだと噂されているが、現時点ではまだ登場していない。
また例のテスラについても、現行車のカタログを見るとこういう記載がある。「オートパイロットは、同じ車線内でハンドル操作、加速、そしてブレーキを自動的に行います。現在の機能はドライバー自身が車を監視する必要や責任があり、完全自動運転ではありません」と。つまり完全自動運転のレベル5でないことは当然として、「運転に関わる全ての操作を行う」という条件にも合致していない。車線変更や追い越しをしないからである。従前は「法改正がハードル」と言われてきたが、実際に法改正が済んでみても、まだレベル3に達していない。
ただ同時に、下記の記載があるのも事実。つまり法整備の問題以外はテスラは対応済みということだ。是非、下記画像をクリックして、同社のオートパイロットのページに飛んでみて欲しい。どこからどこまではリアルなのかは正直私には担保出来ない。ただこうした点が、テスラの時価総額をトヨタ自動車以上に持ちあげた要因かも知れないとは思う。実際にその状態で乗ってみないと何とも言えないからだ。ただまたしてもこの文言に嬉しくなった。「ワイヤレスによるソフトウェアアップデートを通じて、お客様の車両は将来も継続的にアップグレードされていきます。」ということ。FPGAのプログラムを書き換えるのでなければ、パソコンで言えばCドライブにデータを送ることだ。いずれにしても、今見ているビジネス・トレンドに誤りはない。
自動運転化で何が一番難しいのか?
結局何が一番難しいのかと言えば、人間の目と耳の代わりになる機能を機械に代用させることだ。片方の目を覆うと距離感が分からずに目の前のものすら掴めなくなったりするが、通常両目で普通に見ている限り、それは無い。目が自動的に距離と形状を見極めているからだ。また目に入っていなくても、音で何かが接近してくることを把握することもよくあることだ。昔の自動車教習所では、踏切を模した場所で必ず窓を開けて、外の音を聞くことを教わった。警報機が壊れていることを想定し、自分の耳で電車が近づいてきていないかを確認する為だ。
更に難しいのが気象状況の変化だ。雨、霧、夜、逆光など人間の目はこれらの中でも上手く補正するが、それに変わる機械を作らないと自動運転など夢のまた夢だ。ただ既に実用化されており、その機能に充分満足されているドライバーも多いと思われるのがADAS(Advanced Driver-Assistance Systems,先進運転支援システム)だ。渋滞している時、自動的に先行車に追随して走ってくれる。いちいちブレーキなど踏まずとも、先行車が止まれば自動的にクルマも止まる。動き出したらアクセルちょいと押せば動き出したり、勝手について行ってくれたりする。ただ、常にドライバーはやはり前を見ていないとならないし、残念なことに悪天候には弱い。
今の車のADASにはミリ波レーダー(電波)とカメラの画像処理による情況判断が出来るようになっているが、気象状況などによって機能しなくなる場合がある。それを回避するためにレベル3を実現する方法として「ミリ波レーダー+カメラ+LiDAR」という方法が最も可能性が高く、実用化されるならばここから始まるだろう。
LiDARとはLaser Imaging Detection and Rangingの頭文字を並べたもので、レーザー光を使ったセンサの一種で、対象物までの距離はもちろん、位置や形状まで正確に検知できることが特徴で、市街地における自動運転にはLiDAR(ライダー)が必要不可欠と言われる。ただ問題の一つはコストだ。
ティア1の自動車部品メーカーの他にも参入企業は増えてはいるが、自動車部品の最大の課題は「タフ」であることだ。サハラ砂漠のど真ん中からシベリアまで対応する温度変化への柔軟性があり、ダート路を走る時の振動にも耐え、PM2.5では無いが常に粉塵に晒されても正常稼働しないとならない。当然、取付位置によっては水没する時もある。時速100キロ以上で走る時の土砂降りは、高圧洗浄のようなものでもあるからだ。
何れは間違いなく今のパワーウィンドウやアンチ・ロック・ブレーキなどのように標準化されるのは明らかだろう。ただコストの問題から考えても、標準化は当分先だ。ただ、高精細地図と呼ばれるものが出て来ると、多少変わるかも知れない。また5GによるV2X通信(路車間通信や車車間通信)による進捗もあるかも知れない。
今週以降の注目の主要米国企業の決算
先週から米国企業の4-6月期の決算発表が本格化した。山のような数の企業が決算発表を行うが、インテルやマイクロソフトのように、中でも内容を知っておいて損はないと思われる企業と日程を下記にお知らせする。
※23日と思われたアマゾンドットコムが30日に変わったように、決算発表日は現時点で把握している予定であり、変更になる場合がある。
- 8月18日 ウォルマート(WMT)
- 8月19日 アナログ・デバイセズ(ADI)
- 8月19日 エヌビディア(NVDA)
- 8月19日 シノプシス(SNPS)
- 8月20日 アリババ・グループ・ホールディング(BABA)
My favorite Companies List(株主となって所有したい企業のリスト)
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MFCLのページを別仕立てとしたことで、週に一度ではなく、随時アップデートがあればページを更新しています。トップページで更新状況は確認出来ます。
今週はウェスタン・デジタル、アプライドマテリアルズをアップデートしました。


