FG Premium Report 10月12日号(トランプ大統領生還で流れは好転した)

INDEX

最も懸念した事態をベストシナリオで回避することが出来た

今だから言えるが、実は正直なところかなり心配した。もし罹患したというのが例えは悪いが菅首相だったら、ここまで心配しなかった。何故なら、トランプ大統領は74歳で、米国人だからだ。毎朝ジョンズホプキンス大学のデータ、厚労省のデータ、そして東京都のデータを整理して睨めっこしているので分かるのだが、まず80歳代にはなっていないものの、74歳という大統領の年齢はかなりギリギリの線だ。菅首相も71歳だから全く問題ないとは言えないが、リスクは高齢になるほど放物線状に高くなるのは誰も知っているところ。そしてCOVID-19でどこが一番厳しい被害を受けているかと言えば、何故か米国だからだ。人口比を加味して比較した場合でも、累計感染者数、累計死亡者数が共に常にワースト10に入り、それも殆ど僅差で皆ドングリの背比べ状態だ。更にACTIVEな感染者の数で言えば、この数日は僅差でワーストのスペインには及ばないものの、基本的に常にワーストかワースト2なのが米国なのだ。日本とは比較にならない程、状況は悪い。

米国の医療水準が日本より遅れているなどとは努々思えないので、この日本との数値の大きな開きは、誰かが「ファクターX」とは何かを明らかにするまで分からない。またこのCOVID-19の一番恐ろしいところは、ICUで集中管理されていたとしても、突然急激に悪化すること。前日まで元気に笑顔で歩いていた人が、突然「今晩が山場かも知れません」と医療宣告される。青天の霹靂とは正にこの事かと言うほどに急変する恐ろしい一面を持っているのを知っている。リベラル系のメディアは引き続きバイデン候補有利と報じ続けているが・・・。

最初、下のツイートを6日早朝に確認した時は我が目を疑った。入院されてから僅か3日しか経っていないにもかかわらず「今晩6時半には退院する」とツイートしているからだ。その後の状況はここで敢えて言うまでもない。これは正に「最も懸念した事態がベストシナリオで解決した」と言っても過言ではないだろう。

さて、いつものように各市場の騰落率を下記にお示しする。ただ正直言って、今週の一週間程度の騰落率など、私は殆どもう意味はないと思っている。それは、これで来年以降も市場にベストの風を吹かせてくれる米国大統領が誕生する筈だからだ。トランプ大統領なのか、民主党バイデン候補なのかは分からない。ただ再び争点は大きく変わり、如何にこの経済状況から回復させられる大統領かということが争点となる筈だ。

日米各株式市場の先週の終値と週間騰落率

 

大事なことは、世界経済が回復すること。リスク要因は欧州に移ったかも知れない

トランプ大統領の入院と退院の話の陰に隠れてしまったが、国際通貨基金(IMF)は来週発表予定の世界経済見通し(WEO)で今年の成長率を「小幅上方修正」するようだ。ただ、リセッション(景気後退)からの回復には時間がかかり、起伏のある道のりになるとの警戒感を示している。それは当然だ。仮に今現時点で本心では明るい見通しを持っていたとしても、この段階でたとえ「小幅」とは言え、上方修正するには勇気がいる筈だ。日替わりメニューの様に強気を言ったり、弱気を言ったり、臆面もなく両方を語れるどこぞのコメンテーター達のようにIMFはいい加減にはなれない。逆に言えば、そういう立場にありながらも上方修正するというのは傾聴に値するからだ。

ただ非常に気掛かりなのは、この数日間の欧州の感染者数の再拡大だ。最初はスペインで狼煙が上がったが、フランスに移り、そしてドーバー海峡を渡って英国に飛び火した。連日、各国共に1万人を超える人が新規感染者として登録されている。更に加速するか、エリアが拡大するようだと再ロックダウンの話などから弱気筋が声高に危機感を煽り始めるだろう。なにせ人口は日本の半分以下の国々が、毎日日本の20倍~30倍に相当する新規感染者を登録しているのだから、その状況は容易に想像がつく。逆に言えば、日本は従前から申し上げているように「危機感を煽り過ぎ、異常なまでに騒ぎ過ぎ」だと思っている。定性的にではなく、定量的に数値できちんとした議論をすべきなのだが、どうも日本人は「みんな〇〇〇」と少数標本を全体論化する「井戸端会議メンタル」が強過ぎる。

米国大統領の罹患、入院、そして退院の事実は今後ジワジワと効き目を現す筈

ユーミンの歌で言えば「~するとふくらし粉も効き目をあらわす~」ではないが、少し余裕をもって見ていれば、米国大統領の罹患から退院までの流れは大きなポジティブ効果として徐々に効き目を現すだろう。

まず冒頭でお伝えしたように、本来ならばかなり危機的な話だった筈だ。「血中酸素濃度(SpO2)が低下して酸素吸入を受けた」と聞いた時、そして「強力なステロイドを投与した」という聞いた時、私が今までに集めてきた情報に基づけば、かなり重症になりかかった、もしくは重症になったことは間違いない。肺がまともに機能していれば血中酸素濃度(SpO2)が下がることは先ずないからだ。そしてその肺炎の炎症を抑えるのに有効なのがステロイドだが、これも薬名で確認すると継続して使えるような弱いレベルのものでは無かった。かなり強いステロイドだ。

恐らく正式発表はされていないが、ありとあらゆる医療手段が尽くされたのだと思われる。主治医は当然一人だが、各分野のエキスパートがあれだけの人数常時貼り付けば、多少一般人にはチャレンジングな方法でも試せただろうと思われる。要は副作用は副作用として、その専門医がついていたわけだ。ただそれはすべて医療情報として記録されたので、今後一般にも転用出来るものは出来るようになる。平たく言えば、最重要な要人の体を使って治験をしたようなものだ。

政治的には、ツイートにもあったように、大統領自身も多くのことを学んだであろうと思われる。「倒産の淵から会社を立て直した経営者」が居れば高く評価されるのと同様、自ら「死の淵から生還した大統領」になったのだから。100の能書きよりも、ひとつの事実の方が圧倒的に説得力がある。

英国で同じように死の淵から生還したジョンソン首相がこの前例となるだろう。だから敢えて言えば、私はバイデン候補には気の毒だが、この先、余程うまい戦略を練らない限り、選挙に勝つ目は無くなったと思っている。生粋の共和党氏支持者と民主党支持者以上に、無言でいる浮動票の方が怖い。唯一、もとの均衡状態を取り戻す方法は、バイデン候補も罹患して、入院して、回復してみせることだ。さもなければ「78歳」というトランプ大統領よりも4つも上であることが、今後大きな弱点になる。何せCOVID-19は高齢者ほど重症化し易いのだから、ワクチンも特効薬も無い段階が長引けば長引くほど「そんな高齢者に米軍の最高司令官を任せても大丈夫か」という議論を醸成し易い。恐らく、主治医から「完治」のお墨付きが出てから一気にテーマを変えて来るのではないかと思っている。

最も戦々恐々としているもう一人は中国・習近平国家主席の筈だ

トランプ大統領はCOVID-19に感染する前から「チャイニーズ・ウイルス」と国名を名指しで呼ぶほど、このCOVID-19を中国と関連付けている。自分に置き換えてみれば当然だが、そのせいで自分が生死の境を彷徨う羽目になったと考えたら、どう考えても怒りは倍増する。現に英国のジョンソン首相も職務復帰後に英国の5GからHuaweiを排除する決断をした。それと同等以上のことが、この先待っていると思われる。

更に、水も漏らさぬ情報統制がされている筈の中国国内からも既に習近平国家主席の権力の座について、諸説聞こえるようになってきた。蟻の一穴ではないが、水漏れが始まっている兆しはある。その背景にあるのが、COVID-19による年初からの経済ダメージであり、長江沿岸の自然災害だろう。どちらも中国経済に大きな損害を与えた。米国であろうが、日本であろうが、中国であろうが、経済危機は最も権力者の基盤を揺るがす。その国民の目を逸らすために東シナ海への覇権拡大を喧伝しているようでもあるが、米国から締め付けはより厳しくなることは容易に想像出来る。

そのひとつが半導体だ。報道によれば、中国の半導体受託生産最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)は4日、一部のサプライヤーが米商務省から米国の設備などをSMICに輸出する際に事前許可が必要になったと発表した。SMICは半導体の生産などに悪影響が出る恐れに言及した。SMICは2000年に設立した半導体受託生産の中国最大手であり、最も深刻な影響を受けるのがHuaweiとの見方がある。つまり米国はかなり本気だという事だ。世界のハイテク産業への影響などを注視しつつも、とことん締め上げるつもりだろうと思われる。

だから米国大統領選挙の大きな潮目は変わったと考える。

大統領選挙の潮目は大きく変わったと見ている。つまり民主党バイデン候補が圧倒的に有利というシナリオは過去のものとなったという事だ。日本では人権問題や、今までのCOVID-19に対する対応批判を取上げて反トランプの論陣を張り続けているメディアの方が多いことは百も承知だ。だが、何度もお伝えしているように、米国大統領選挙の結果が正確に予想された前例は記憶の限り本当に少ない。寧ろ外れている方が圧倒的に多い。多分、政治に普段は関心が無く、選挙の投票率も低い日本文化の中では分かり難いのだろう。

また日本学術会議の任命に関する日本の各メディアの取扱いを見ると、私には昨今の日本のメディアはNHKを含めて、何故か非常に思想色が強過ぎると思う。報道自体に媒体の思想が反映され過ぎだということだ。投資をする上では、何が真実かを良く見極める必要がある。

ただ私が過去、全米の企業調査の為に現地に赴いて出会い、話を聞き、或いはこの目で見聞してきた米国人の政治への関心度は信じられないほど高いし、また「アメリカ」に対する想いも強い。そして自分達が世界で一番豊かな国で暮らしていると信じている。それは事実であり、それを揺るがされるような行動はしない。

ただ米国は単一民族国家の日本、戦後に与えられた民主主義の日本、とは状況はとても違う。その米国もまた変わりつつあるのも確かだ。政治信条も多種多様ならば、宗教観も何もかもがより多種多様になってきている。だから最後の最後まで振り子は振れ続けるだろう。恐怖指数と呼ばれるVIX指数がまだ30近い高値なのはその為だ。その変動を受けては日本も毎回揺れるだろう。更に悪いことに、日本の株価のバリュエーション指標は結構どれもこれも高い。ついに日経平均の予想PERは23倍を超え、PBRも1.12倍になってしまった。市場の目線がもし2021年3月期の話に向かう時があったら、日本株はひとたまりもない。だからまだ暫くは荒っぽい値動きが続くと思われる。ただ動揺する必要はない。

 

注目の右肩上がりのビジネス・トレンドとトピックス

エヌビディアのJENSEN HUANG CEOが見せるテクノジーの明るい未来

私がしのこの解説するよりも、下記の画像をクリックして、ジャンセンCEOが自分の家の台所から配信した動画を見て欲しい。ちゃんと字幕スーパー入りなので、とても楽しく見て貰えるものと思う。また私も今後皆様に何かをお伝えする時に、ひとつの共通のイメージコンセンサスがこれによって作れるのではないかと思っている。

エヌビディアはGPUの会社だ。Graphic Processing Unit、すなわち画像処理を専門とする半導体のメーカーだ。私がFund Garage のコンテンツとして、MFCL(My Favorite Companies List)の前身となるMF10C(My Favorite 10 Companies:私の好きな10社)を2019年2月に始めた時にも迷うことなく、そのひとつに選定したのだが、その時の株価は150ドル台。僅か1年半後の今現在は550ドルを超えるまで急成長したが、その背景にあるのはAIだ。

実はエヌビディアの株価はその前に少々弄ばれた。仮想通貨ブームが起きた時、仮想通貨のマイニング・マシンとして使うのにGPUがバカ売れしたからだ。しかし、仮想通貨ブームが終わった段階で株価は急落、ソフトバンクグループが売り抜けるためにオプション取引を利用したからでは無いかとか風説紛いの噂も流布された。だがそんなGPUの使い方は亜流の使い方で、本流(2000年の頃のGTCから標榜されてきた、GPUコンピューティングに端を発する流れ)は別だと分かっていたので迷わずエヌビディアをMF10Cのひとつに採用した。

だが間違っていようが、亜流だろうが、市場に誤解を齎した最大の理由は、GPU特有の高い演算能力だ。演算処理能力が高いからこそ、仮想通貨のマイニングにも使われたのだ。だが、今GPUは元々の画像処理という世界を更に拡張して多くの分野に覇権を拡げ始めている。その会社のCEOが見ている未来予想図とはどんなものかを感じ取る為にも、是非、下記から入って、動画を見て欲しい。全部で5本、小一時間もあれば、部分リピートも含めて、充分に足りる。コーヒーでも飲みながら、是非ともご覧頂きたい。

 

 

私の情報源、ネタバレでご紹介

「どんな銘柄を買ったら良いのか分からない」、或いは「どうやって銘柄分析をしたら良いのか分からない」という永遠不滅のテーマなのだなといつも思っているが、少なくともプレミアム会員の皆様には証券マンの銘柄推奨にホイホイ乗るような真似はして頂きたくない。やはり自分の目で見て、その企業を好きなってから投資は行って欲しいといつも考えている。その一助になりたいというのが、そもそもFund Garage の基本コンセプトになっているのはご承知の通り。

昨年までは前述のエヌビディアのGTCもサンノゼでリアルに行われており、年々歳々盛大なイベントになっていったが、今年の春からCOVID-19の影響でオンライン開催になった。私はこうしたイベントを昔から「情報を一気にバクッと集める」ために利用する。ただGTCのように米国のイベントではFund Garage のプレミアム会員数がもっともっと増えない(ご友人・知人、是非ともご紹介ください)と、リアルに現地に赴くのは荷が重いイベントだったが、幸か不幸か、オンライン開催になってくれたおかげで、これは非常に便利になった。ただやはり実機が見れないというのは不完全燃焼ではある。

その一方で、日本に居ながらにして重要な情報源として使えていたのが所謂「ビジネスショウ」である。東京ビッグサイトや幕張メッセなどで開かれる業界イベントである。だが今年はそれらも無くなってしまった為、情報入手にはそれなりな工夫が必要である。

企業のホームページを渡り歩く、所謂ネットサーフィンで面白そうな会社を上手に探せればいいのだが、多くの場合、まず株の掲示板みたいなところから元ネタを拾って、何某かの会社に辿り着くような方法を行っている。だがそれでは結局「素人評論家」の推奨銘柄を集めているようなものなので、体系だって知識を発展させることには役に立たない。もう8、9合目まで来ている流行り銘柄に出会うことは出来ても、本質的なビジネストレンドを追い駆けることにはならないからだ。

そこでひとつの方法としてお薦めするのが、「オタク系」の雑誌である。取り分け、ハイテク系や自動車関係のトレンドを押さえたいと思ったら、こうした「オタク系」の雑誌を手にしてみるのは有効な手段だとお薦めしたい。例えば画面表示してある下のアイコンは、年に4回季刊発行される(以前は月刊誌だったのだが)「Dos/V Power Report」という雑誌だ。

私自身がもう20数年以上、技術トレンドを実感する為にパソコンをずっと自作していることは、以前にもお伝えしたと思う。そうした「オタク系」ファンドマネージャーにとっても、実はこの本は2000年前後からの愛読書のひとつでもある。というか、読むのが習慣になっている雑誌のひとつだ。ちょうど最新号が発売になってまだ2週間程度なので、ご紹介しておきたいと思う。恐らく、初めて手にして中を見たら「何、これ?」と思われるだろう。専門用語やカタカナはなるたけ使わないというFund Garage の配慮(これでも相当ケアしているつもりなのです)のようなものは一切無い。寧ろ「これでもか」というぐらいに専門用語が並んだりするが、ちゃんとそれには解説や図表がついているので分かり易いだろうと思う。

ただ、まずどういうものを、どういう視点で評価するのかが、段々と分かって貰えるのではないかと思う。例えば「インテルとAMD、どちらが良いんですか?」と株式のアナリストに質問すれば、まず100%その答えは収益見通しからブレークダウンされる筈だ。そこで仮に「なぜ、AMDのCPUの方が良いのですか?」と食い下がると、恐らく「TSMCの最先端の製造技術を使っていますから」とでも答えて来るだろう。普通の人のやり取りだと、まずここまで食い下がれたら80点だ。でも更に「なぜ、最先端の製造技術だと良いのですか?」と食い下がると、恐らく、半分ぐらいのアナリストが答えに窮する筈だ。誤解しないで欲しい、証券マンではなく、専門のアナリストでさえ、恐らくそのレベルだ。だが、この手の「オタク系」の雑誌には、これでもかというぐらいに性能評価などことが書き込まれている。つまり、前問の答えだ。

そのAMDがFPGAのザイリンクス(XLNX)を買収する話で先週末の市場は賑わった。エヌビディアのGTCの動画を観たあとなら、なぜAMDがザイリンクスに食指を伸ばしているのかがもう少しリアリティをもつかもしれない。当然、マニアック過ぎると思われる人の方が多いだろうと思うが、ボトムアップで企業調査をするというのは、実はこういう事をも含んでいないと、数多いるファンドマネージャーの中でパフォーマンスでリードすることも難しいという事だ。

これからの秋の夜長、次の季刊が出るのは3か月は先なので、Amazon Pime Videoで映画を観る時間を少し減らして、トライされても良いのでは?

 

My favorite Companies List(株主となって所有したい企業のリスト)

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