大統領選挙か、欧州感染再拡大か、技術革新か、それが問題だ
先週は第二回目の米大統領選討論会が行われ、欧州ではいよいよチェコとアイルランドが全土でロックダウンを再開するなど、市場参加者の気を削ぐ出来事が相次いだ。一方、その傍らでは7-9月期決算の発表が本格化し、それはそれで市場を悲喜こもごも騒がしている。そして更にその一方で、色々な技術革新の流れが本格化していることも明らかになってきた。投資家としては何に一番重きを置いて投資判断をすべきだろうか?
こういう時こそ注意をしないとならないの、自分がしているのは「相場ゲーム」なのか、或いは「投資行動」なのかの明確な区別だ。どちらも株を買ったり、投資信託を買ったり、(この水準ではあまり無いと思うが)債券を買ったり、するべき行動自体は一緒でも、ベースとなる考え方の違いで判断内容もアクションも大きく変わる。
こういう時、本来収益性が非常に高いのがオプション取引なのだが、満期時損益線を描いて説明した資料か、或いはブラック・ショールズ・モデルと呼ばれる有名なオプションの価格決定式(偏微分方程式)などを示して著者や講師の賢さをアピールするだけの利用価値も何も無いものぐらいしか出回っていないので、なかなか投資家には敷居が高い存在となっているようで残念だ。オプション取引については真剣にFund Garageで何らかの対応をさせて頂こうと思っている。(助手が欲しい・・・)
もし本当に「投資行動」がしたいと思われるのならば、迷うことなく「技術革新」に軸足を置いて売買行動に移して欲しい。強気と弱気と日替わりメニューで風見鶏のように相場見通しを表現するメディアや、予想レンジの真ん中が現値で上下の幅がいつも同じ(つまり何の予想にもなっていない)コメンテーターの話に振り回されていたら、ただ悩みと迷いが深まるだけだ。また手数料稼ぎが目的の金融マンにもお気をつけ頂きたい。市場の動きが激しい分だけ、買いと売り、日替わりメニューを提案し易いからだ。
日米各株式市場の先週の終値と週間騰落率

iPhone12とインテル(7-9月期)決算が示した大きな技術の重要性
先週お伝えしたように、アップルが発表したiPhone12に搭載されたCPU(中央演算処理装置)半導体(A14 Bionic)は、TSMCが作る最先端技術の5nmの微細化が進んだものとして製品化された。その一方で、4-6月期決算の時にほぼ自己技術による10nm以下への微細化技術についてはほぼギブアップ宣言に近い発言をしたインテルは、今回の7-9月期決算でも今尚ハムレットのように悩んでいる。内製に拘り続けるか、或いはTSMCのようなファンダリーに外部委託するかの結論は年明けに先送りだ。
その一方で、NANDメモリー部門は韓国のHKハイニックスに譲渡することを決断している。しのこの色々ボブスワンCEOは状況を語っていたが、その殆どが私には言い訳にしか聞こえなかった。以前、CPUの分野で市場シェア90%以上の不動の地位を築いて、不当廉売と指摘されそうな低価格戦略でAMDを市場から叩き出した往時の面影は微塵もない。今は完全にそのAMDにガンガン逆襲されて陣地縮小の敗退を余儀なくされている。もしかすると、このボブスワンCEOの決断の遅さが同社の勢いを削いでいるのでは無いかと思っている。設備投資のタイミング判断ひとつで日の丸半導体があっという間に韓国と台湾勢に廃退したのと同じ構図にも見えて来る。
アップルは来年からパソコンMACシリーズに搭載するCPUもインテル製を止めて、自社開発で製造はTSMCの半導体に切り替えることを既に発表している。現在、このTSMCが手掛ける大手半導体メーカーの成功例は、アップル、エヌビディア、AMD、ザイリンクスなどだ。
元を質せば、どこでインテルは判断を間違え、TSMCの製造技術に決定的に負けたかと言えば、露光装置の選択だ。インテルはNIKONを選び、TMSCはASML(蘭)を選んだ。ASMLだけが現在EUV露光装置と呼ばれる極端紫外線 (Extreme ultraviolet)、所謂レーザー光線つかう露光装置を作っており、ニコンやキャノン(露光装置メーカーは合計この3社しかない)は、従来通りのArFエキシマレーザ光を用いた露光装置から前に出ていない。
ASMLの4-7月期決算発表から仕向け地別の分類を見ると、台湾が47%と最も多く、韓国の26%、中国の21%、米5%、EMEA(欧州中東など)1%、日本は0%となっている。売上高は前年同期+33%も増加している。この台湾分の殆どがTSMCの筈だ。中国が21%あるが、これにEUV露光装置は含まれていない。結果、今の半導体業界勝利の方程式は「TSMCと組んで最先端技術で半導体を作る事」になっているとも言える。
5nmのCPUを手に入れて意気揚々とするアップルと、面子に拘り、かつての栄光にすがるしかなくなったインテルと、運命を分けたのは技術革新への対応、経営判断だ。
大統領選の結果にベットするのはまだ危険
抜群のタイミングで直接の知り合いで、米国ワシントンDCの米国政府に近い人に、大統領選挙に関して状況判断を聞くこと出来た。その人が指摘したのは、今米国大統領に求められている本質は、報道されているような、或いは大統領選討論会でディベートの議題となった新型コロナウイルス・COVID-19対策でも、北朝鮮問題でも、人種差別問題でも無い。実は対中政策だという。前回の選挙の時に大きく票が動いたのはオバマ民主党政権の対中政策が弱腰だったからだ。その背景もあって、トランプ大統領は傍から見ると、必要以上に対中政策が居丈高にも見えるが、大きな引力のひとつはそこにあったという。
事実、日本では殆ど報道されていないが、Fund GarageのFacebookで過去に何度かお伝えしたように、米軍幹部の感触では、米中戦争、或いは米ソ戦争はいつ起きてもおかしくない程に緊迫した情勢だという。その前提を踏まえて、安倍政権時代から続く日本の外交姿勢や改憲議論を考えると、その状況を良く踏まえた動きだと分かる。だがそれを報じる日本メディアは殆ど左傾化しているので、国民が知ることはなく、政府の真意も歪んで伝わっているとも言える。
その点、トランプ大統領は中国に対して危機感を持ち、行動でそれを表明したこと自体は称賛に値すると評価されているらしい。その意味では、オバマ政権時代から続く民主党の発想は弱腰で、このままだと大変なことになるとも思っているらしい。ただ民主党内部でもバイデン候補も弱腰だということは分かっているので、オバマ政権時代のようなことにならないだろうとは考えているらしい。また応援演説に駆けつけたオバマ元大統領は演説が上手で、直ぐにリベラル系メディアが飛びつくとのことでハラハラしているという。
確かに外国人である私が読んでも、リベラル系のCNNが報じる内容と、比較的中立と呼ばれるWall street Journal誌では、討論会の分析ひとつとってもかなりニュアンスが違う。それをその区別も明確にしないまま、或いは意図的かも知れないが、日本メディアもスルーで報じてしまう。残念ながら、NHKでさえも、公正中立な立場からの事実報道では無い。米国大統領選挙については、やはり結果が出るまではワンウェイでベットするのは危険だと思われる。日本市場は限られた情報、或いは偏った情報しか手に入れていない人々に主に動かされている市場だからだ、
私は米国人では無いので当然政治的な嗜好は無い。あるのは景気に関わる事、すなわち株価に関わることだ。Huawei(ファーウェイ)の件では、面食らいもしたが、結果的には当初からお伝えしてきたように、そのダメージは既に米国企業の決算からは殆ど消えつつあり、寧ろクアルコムの様に、5G基地局建設などに優位性を持ち始めた米国企業もある。ザイリンクスも毎回決算発表時にHuaweiの話に振り回されるが、今回はCEOが「Huaweiの数字は入っていません」と強調していたのが面白い。つまり、貿易摩擦としての米中問題はトランプ流で粗方上手くいったのかも知れない。
ただ間違いないのは、軍事的な緊張感は中国側の事情もあって、相当高まっていることに留意が必要だ。弱腰と称される新大統領誕生となると、新たな準備が必要になるかも知れない。プーチン大統領が「これからは中国とドイツが重要だ」とコメントしたと報じられているのも、妙に気になるところだ。
欧州の感染再拡大については、毎朝のWebサイトの記事を見て、コメントを確認して欲しい
欧州の感染再拡大については、今のところ増勢であるという以上に説明しようが無い。先週22日に号外記事を載せたが、毎日更新している「世界の新型コロナウイルス感染動向・国別データの分析」を参考にして欲しい。毎朝7時台までには最新の数値を集計している。一言でいうと、そう安穏としていられる感じでは無い。私は新規感染者数の増加の絶対値よりも、そこに総人口を絡めた数値を重視しているが、ベルギー、スペイン、オランダの状況は日毎に悪化している。フランスも同様に加速度がついている感じもする。
因みに、バイデン候補が大統領選討論会で「22万人もの死者を出した大統領は責任を取るべきだ」と言っていたが、人口比で換算するとスペインは既に24万人亡くなっていることに相当するし、ベルギーだと30万人を超える。中南米の数字はこれよりも酷くなるが、経済規模から考えるとやはり欧州の状況は気にかけておいた方が良い。
村田製作所、ロームなど上方修正が相次ぐ。基本的な要因は市場回復が想定以上に早いこと。
電子部品メーカーが相次いで上方修正を発表したが、その主たる要因は米国企業のそれとも整合性がつく。それは悲観し過ぎた程に回復が遅れずに進んでいることだ。また「ニューノーマル」の中で、新たな想定以上の需要が業績を押し上げている。村田製作所の上方修正の背景説明を引用すると「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響からの部品需要の回復が当初想定より早まったことで、前回発表予想を上回る見込みです。用途別では、当初想定と比較して、顧客による旺盛な部品取り込みを背景としたスマートフォン向けの需要の増加、リモートワークやオンライン教育を背景としたPC関連需要の拡大、各国政府の景気刺激策による自動車向け需要の増加が見込まれます。また、製品別では、モジュールやコンデンサを中心に全ての区分において、当第2四半期連結累計期間の売上高が当初の想定を上回る見込みです。」ということだ。このインプリケーションは大きい。最も注目しているのは自動車向け需要の増加である。
新型コロナウイルス・COVID-19の影響下でも、ハイテク関連は寧ろ好調を維持してきたが、自動車関係はスローダウンしていた。それが為に、期待していたクルマのCASEの伸びに影響が大きく及んでいたが、自動車産業が復調してくるとCASEの流れも加速する。
独ダイムラーが23日発表した2020年7~9月期の決算も、純利益が前年同期比19%増の20億4900万ユーロ(約2500億円)と、4~6月期の20億ユーロの最終赤字とは打って変わって2四半期ぶりに黒字に転換だ。中国での販売が好調だったという。また7~9月は中国で高級車「メルセデス・ベンツ」の販売台数が23%増え、「GLS」や「GLA」などの利幅の大きい多目的スポーツ車(SUV)が好調で増益に貢献、欧州の乗用車販売台数もほぼ前年同期並みの水準まで戻ったという。つまり乗用車が売れているという事だ。この手のクルマには最新装備が搭載され易い。この流れが欧州の感染再拡大で急ブレーキにならないことを願うばかりだ。
米国の主力注目企業の決算発表が目白押しにつき要注意
今週は米国企業の中でも注目されている企業の決算発表が目白押しとなる。後段に厳選に厳選した市場を動かすきっかけになるかも知れない企業の決算発表日をリストアップして置いた。当然、日本企業の上半期決算発表も始まる。株価の原点は企業収益にあり、取り分け今回は重要な決算発表となるだろう。それはすなわち、既に欧米の新型コロナウイルス・COVID-19の感染が拡大してパンデミックとなってから、既に8カ月以上は経過している中での決算だからだ。数値以上に目配せが必要なのが、CEOが何を語るかだ。
本市場の引け後に決算が発表された場合、即座に引け後マーケットで株価が動くが、それ自体は本来あまり気にする必要はない。何故なら、本当に影響するのはその後のカンファレンスコールの内容だからだ。気の抜けない一週間となりそうだ。
注目の右肩上がりのビジネス・トレンドとトピックス
「インテル、入ってない(笑)」、今はそういう時代に変わった
某オタク系のパソコン自作マニア向けメディアで、予算10万円以内(Windows10込み)でパソコンを組むというよくある企画があったが、こういう企画で普通はインテル製CPUがチョイスされるのが王道なのに、インテルは何処にも出てこない。そうAMD製なのだ。記事の企画段階から「AMDのRyzenを使って、パソコンを組む」というならばAMD製CPUも昔からあったのだが、今回の主役はストレージ。CPUは脇役だ。ならば普通はインテルのCorei5辺りが好まれそうなのだが、AMD製CPUが当然の様に鎮座している。それも極自然に何事も無かったかのように。「インテル、入ってない」パソコンのパーツリストをみると「時代も変わったもんだ」と実感してしまう。
因みに選ばれたパーツリストは下記の通り。赤線を引いた上二本がAMD製の半導体。CPUをAMD製にすると、当然ながらマザーボードに搭載されるチップセットと呼ばれる交通整理をする半導体も自動的にAMD製になる。だから、Ryzen 3 PRO 4350GというGPU内蔵のCPUをチョイスして、B550というAMD製のチップセットを使っている。ASUSは台湾のマザーボードメーカーで、SONYのVAIOもASUS製を利用していた。 (恐らく今でもその筈だが)
(こぼれ話:私がパソコンを自作することを聞いて驚いた投資家の方から「マザーボードはどこのを使うのですか?」と質問されたことがある。その時、自信を持って「ASUS製ですよ」とお答えしたら、投資家の方は「私はやはり信頼のおける日本製が良いです。」と言いながらSONYのVAIOを抱えていた。実はそのVAIO、マザーボードはASUS製だ。変に意地悪な奴に思われてもいけないので「VAIOのマザーボードはASUS製ですよ」とは言わなかった。)
実はその下のメモリとSSDのメーカーも注目している会社だ。マイクロンテクノロジー(MU)はiPhone12で採用されたの需要を獲得した。ウェスタンデジタル(WDC)は当然MFCLのひとつだ。
インテルが7-9月期の決算を発表、優位性を取り戻せずに失望を買い、株は売られる
ちょうど現地時間22日の引け後(日本では23日朝)にインテル(INTC)が7-9月期の決算を発表した。1株利益はNon-GAAPベースで1.11ドル。売上高は前年同期比4%減の183億ドル。アナリスト予想平均は、1株利益が1.10ドル、売上高が182億ドルと売上はミスったが、一株当たり利益は僅かに予想を上回った。だが市場の反応は厳しく、引け後に10%も下落した。
ポイントとなったのは、主要な収益源であるデータセンター・チップ事業が前年同期比10%減収となったこと。景気低迷で大企業や政府機関への販売が打撃を受けた。またクラウドコンピューティング事業者向け販売が今四半期に鈍化する見通しも示したことも嫌気された。「データセンター需要が大きく変化し、2四半期連続で30%伸びていた企業・政府分野で前年比47%の落ち込みだった」とCFOは語った。
「こんな惨めなインテルは見たことが無い(4-6月四半期決算)」でもお伝えした通り、微細化技術で遅れると何が一番困るかと言えば、同じパフォーマンスを得るのに必要な電力量が増加することだ。処理能力が劣る割に大飯ぐらいのCPUをデータセンタ業者は使わない。彼らの一番の悩みはTCO(Total Cost of Ownership)であり、その中心は電力料金だ。システム自体が消費する電力と、システムが発熱するのを冷却するための冷房代の両面がある。ディーリングルームのように、パソコンとモニターだらけの空間に入ったことがあれば、そこがやたら冷蔵庫の様に寒いか、逆にエアコンが効かずに蒸し風呂のようなところか、どちらかを経験されただろう。だからこそ、最近MicrosoftのAzureは深海(涼しい)に設置するデータセンタの研究の途中経過を発表したぐらいだ。
売上が今回そこまで低下しなかったのは、奇しくもボブスワンCEOが冒頭で語った「COVIDによる逆風がビジネスの大部分に影響を及ぼしているにもかかわらず、第3四半期の収益と収益性は堅調でした。強力な消費者向けノートブックの需要と継続的なクラウドの成長に牽引されて、183億ドルの収益を生み出し、1.11ドルのEPSを実現しました。」という理由だ。災い転じて福となすとなったのはインテルぐらいなものかもしれない。逆に言えば、COVID-19が無ければ、もっと酷い目に会っていた可能性さえある。エンドユーザーがインテルCPU搭載のノートブックを買っているのは、やはり築き上げてきたブランド力の部分が大きいだろう。
もし、ここまで製造技術のビハインドが無ければ、ボブスワンCEOが語ったビジネスの幅広い展開も、NANDビジネスの売却も、投資家にはポジティブに聞こえたかもしれない。新しい5GとAIの時代にビジネス機会を捉えて前向きに前進する話だからだ。だが、未だに10nmでの生産に留まるのを見ると、全てが言い訳に聞こえて来る。
かつてSONYも2000年代半ば頃から長く低迷が続いた。あっちこっちに手を拡げ過ぎて「SONYって何の会社なんだっけ?」とSONY-Loverの私でさえ聞きたくなるような状態をくぐり抜けて今がある。でも、もう昔のSONYらしいSONYの製品、「It’s a SONY」と言いたくなるような商品は殆どなくなった。VAIOも無ければ、自社製のフラットテレビも無い。オンラインのSONY Storeを覗けば、その民生向けの商品数の少なさに驚くだろう。金融の会社に変わったのかも知れない。だが今、昔とは違ったSONYは元気になった。だが、あのWalkmanを作り、VAIOを作り、ラジカセやトリニトロン・カラーTVで輝いていた当時のSONYとは違う輝きだ。今まさに、インテルが同じ局面に立たされているように思われてならない。
それは微細加工技術の問題もさることながら、CPUとOS、つまりインテルとMicrosoftがウィンテルと呼ばれて時代を謳歌した時とは、全く異なる技術革新が起こってしまっているからだ。そしてエヌビディア(NVDA)のGPUが台頭し、ザイリンクス(XLNX)のFPGAが必要性を高めている。スマホや小型家電はARM(SBグループ:9984)が牛耳った。通信系は基本的に勿論クアルコム(QCOM)だ。
造詣の浅い人のコメントに乗ってはダメ。今はストラテジストの時代ではない。
専門用語というか、カタカナとアルファベットの応酬で申し訳ない。ただお伝えしたい事は上記のインテルの凋落、AMDやエヌビディア、或いはザイリンクスの跳躍は、或いはマイクロンテクノロジーやウェスタンデジタルの躍進は、すべて大きな半導体の技術革新がその背景にあるということだ。そしてもうひとつ。私の見る限りにおいて、この辺を理解しながらコメント出来ている市場関係者(証券アナリストを含む)が意外と少ない。逆に言えば、そういう革新期にあることを踏まえていけば、沢山の投資機会がありチャンスだということ。
だからひとつ注意して欲しい。既成概念で良し悪しを考えたり、割安だと判断したり、値惚れをしたりしないこと。本当に詳しい知識を持っている人以外の話は、話半分程度をMAXと思って聞くことだ。
ハードディスクからSSDへ、シリアルATAからNVMeへ、時代はどんどん変わっている
今もし電気屋さんに行ってノートパソコンを買おうと思ったら、超廉価版の特殊なモデルや中古品で無い限り、ハードディスクのノートパソコンはレアものになりつつある。逆に言えば、安いノートパソコンを買おうと思ったらハードディスク・モデルを選ぶ手もまだある。だがノートパソコンを薄型で、スタイリッシュなものと出来た功労者は、実はハードディスクだった。デスクトップ・パソコンに搭載されていた当初のハードディスクで直径3.5インチの円盤を回すものから、2.5インチの小型で薄型のモデルが登場したことで、VAIOのノート505シリーズのような薄型軽量スタイリッシュなモデルが開発された。
ただそのベースとなる技術は2.5インチのそれも3.5インチのそれも基本的には同じもの。日本電産製の超精密小型モーターで駆動されるHOYA製の円盤にTDKの磁気ヘッドで磁気データを書き込むというもの。最大の問題は物理的な可動部分を沢山持つ製品という事は、その分だけ読み書きの速度が遅くなるということだ。そこに登場したのが半導体を利用したSSDだ。中身はNAND型フラッシュ・メモリーだ。ただ、モノを見て貰えば分かるが、基本的に2.5インチのハードディスク・ドライブと一般に言われているSSDの見た目は一緒だ。中身が違うだけ。これがシリアルATAのSSDと呼ばれるもので、基本規格がすべてハードディスクをベースにしている。
ただご想像の通り、電気(正確には電子)のやり取りをするだけの半導体の方が反応速度(書込みや読込み)は圧倒的に早い。この本来の書き込み、読み出しの早さをこれからは活かそうというのが「シリアルATAからNVMeへ」の流れである。今時のSSDは下記のような見た目をしている。

これを使うと何がどう違ってくるかを分かり易い表にまとめたものがあるのでそちらを下記に掲載する。

チャートの見方だが、横棒が長いほど、データを読み込んだり書き込んだりする速度が速いことを示している。縦には上から、MVNe、シリアルATA、そしてハードディスクと並んでいる。同じウェスタデジタルのSSDでありながら、通信規格を変更しただけでシリアルATAとNVMeの数値が4-5倍に跳ね上がる。それだけ劇的に早くなるといことだ。ハードディスクのそれとの比較は最早子供の三輪車とフェラーリぐらいの違いがある。但し、形が劇的に変化しているので、パソコン内での置き位置もかなり変わって来るし、内部デザインも変わる。
木を見るだけでなく、時には大きく森を見る、それも隣の森も併せて見ることが大事
テクニカルタームも小理屈も苦手で構わないが、これだけかなり大きな技術的な変革が起きているのがハイテク業界の今だということを記憶しておいて欲しい。5G、AI(含むクラウド)、IoT(含むエッジコンピューティング)、そしてクルマの自動運転は既存の業界概念さえ変える。あちらこちらで合併話が聞こえてきているのが正にその証拠だ。そして証券業界の専門のアナリストでさえ、大きな流れを把握出来ていない人がかなり居るということも知って置いて欲しい。
その理由の一つが、担当セクターの縦割り制度がある。例えば、半導体のアナリストは、通信を見ない。クルマのアナリストはハイテクは見ていない、といった具合だ。「自動車の電装化」という言葉が使われるようになって久しいが、全固体電池(例:Panasonicや村田製作所)と完成車メーカー(例:トヨタ自動車)を一人で同時にカバーしているアナリストはまず居ない。そもそも、完成車メーカーと自動車部品を同時に見ているアナリストさえ居ない(最近は人手不足で登場したかも知れないが)。そうなると、IoT(含むエッジコンピューティング)から5Gを経由してクラウド・データセンタのAIがどのように連携して、何が要件で、何が障害で、何処に一番付加価値があって、今後はどの方向に向かっているのかというビッグピクチャーが描けない。つまり投資機会を見つけたり、投資価値を評価したり、将来性を判断したりということがビジネス・トレンドの中で見えてこないということだ。
時々、どのセクターでも、どの業種でも、つまり薬品から銀行から総合商社、そしてハイテク、自動車、サービスなど何でも語れる人が居る。景気敏感という極めて曖昧な括り方で誤魔化す輩もいるが、正直私はそういう人のネタは信じない。ただ今のような時代の流れならば、木ばかりではなく、時に森を見て、隣の森との繋がりなどは見るべきだ。海の向こうも隣の森だという事を忘れずに。
今週注目の米国企業の決算発表
今週は市場が注目している企業の決算発表が目白押しだ。厳選した上で、更に厳選して気になる企業を青フォントで示す。
- 10月27日 アカマイ・テクノロジーズ(AKAM)
- 10月27日 アドバンスド・マイクロ・テクノロジー(AMD)
- 10月27日 キャタピラー(CAT)
- 10月27日 コーニング(GLW)
- 10月27日 ジャニパーネットワークス(JNPR)
- 10月27日 マイクロソフト(MSFT)
- 10月27日 マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ(MXIM)
- 10月27日 ファイザー(PFE)
- 10月27日 レイセオン・テクノロジーズ(RTX)
- 10月28日 アムジェン(AMGN)
- 10月28日 ボーイング(BA)
- 10月28日 ギリアドサイエンス(GILD)
- 10月28日 KLAコーポレーション(KLAC)
- 10月28日 マスターカード(MA)
- 10月28日 ビザ(V)
- 10月28日 ウェスタンデジタル(WDC)
- 10月29日 アップル(AAPL)
- 10月29日 アマゾンドットコム(AMZN)
- 10月29日 フェイスブック(FB)
- 10月29日 アルファベット(GOOGL)
- 10月29日 ツイッター(TWTR)
My favorite Companies List(株主となって所有したい企業のリスト)
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